かなで

 かなでさん−真室まむろかなでと出会ったのはぼくが十八歳の頃だった。同級生がセッティングした合コンでぼくと彼女は出会った。おっとりとしているが、家事は完璧で優しい彼女にぼくはひかれていった。ぼくは出会って半年後にかなでに告白し、付き合い始めた。その時の彼女のはにかんだ笑顔は今でも忘れられない。ぼくとかなでは幸せだった。それぞれの授業が終わるとすぐに落ち合い、地元のファッションビルや繁華街でデートした。そんなぼくはそんな日々がずっと続くと思っていた。二十歳の春までは。


 ***


 二〇一一年三月十一日。その前年に専門学校を卒業し、先輩の紹介でまだ設立して間もない東京のベンチャー企業に就職していたぼくは、短大を卒業後、地元の病院に事務として就職していたかなでとは、遠距離恋愛という状態だった。このころは毎日仕事が終わると、スカイプで会話する事が何よりの癒やしだった。この平和で幸福な毎日は、あの日、東北を襲った大災害で壊れてしまった。揺れが治った後、慌ててニュースを見たぼくは家族よりも真っ先にかなでに連絡を取った。しかし、電話はおろか、ラインもつながらなかった。ぼくは心配になった。ぼくは誰とも連絡を取れない中で、ひたすらにかなでの無事を祈った。そうした末に、かなでが遺体で見つかったという連絡が来たのは災害が起きてから一週間後のことだった。それからのことは、ぼくは覚えていない。ぼくはしばらく死人のような目でかなでのいない日々を過ごした。そんな日々に光が差したのは、先程の同僚の言葉だった。これだったらかなでもよみがえるかもしれない。ぼくはすすんで彼女にまつわるデータを渡した。ぼくは彼女をこの世界によみがえらせるなら、それが幻であろうがなんであろうがどうでもよかった。そうして誕生したのがカナデだ。ぼくはキャラの設定から筐体きょうたいの開発に携わり、その関係で持ち運びできる専用端末の試作品のモニターをすることになり、それならこの機会にと里帰りをすることになった。そうして今に至るのだ。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます