現象

「ちょっと、お義父さん!?」

 母は祖父の発言にそう声をあげた。彼のギョロリとした目は、はっきりとカナデを捉えていた。

「こんなものを恋人だなんて言いはるとはおかしいにもほどがある」

 祖父のその言葉は、部屋の空気を一瞬で凍りつかせた。

「……」

 葬式の夜のような沈黙を破るべく、母はこう切り出した。

「そういえば、カナデちゃんは料理とかできるの?」

「はい、できます」

「本当にできるのか?」

 そう言ったのは父だ。

「カナデは、いつも冷蔵庫の中を把握していてね……それでどんな料理を作ったらいいか教えてくれるんだ」

 ぼくがそうフォローすると、祖父が口を挟んだ。

「何ができますだ……結局圭一が作っているじゃないか」

「ぼくはカナデと協力して食事を作っているんだ」

 ぼくがそう反論すると、祖父は観念したのか目を閉じて黙り込んでしまった。とりあえず一安心した所で、父が言った。

「カナデちゃんとはどこで出会ったんだ」

 ぼくはお茶を飲みながら答えた。

「専門の時、友達の紹介で知り合ったんだ……なあ、カナデ?」

 ぼくのその問いかけにカナデは赤面しながら頷いた。

「はい……圭一さんとは十二年くらいお付き合いさせてもらってます」

 そう照れ臭そうに言う彼女を、父は訝しげに見つめていた。そうしてるうちに、そっちに気づいたカナデが彼ににっこり微笑みかけた。

「……」

 その愛らしい笑顔に、父は少し体を震わせた。


 ***


「……」

 両親とカナデの会話をずっと聞いていた祖父は、ついに我慢ならなくなったのか、湯飲みからお茶を一口飲むと、それを強くテーブルに叩きつけた。

「認めん……こんなのを人として扱うとは断じて認めねえ」

「おじいちゃん……とりあえず落ち着いて」

 そうなだめる菜穂を尻目に、カナデが言う。

「まあまあ、おじいさま……お茶でも飲んで落ち着いてください」

 すると、そう言い終わらないうちに電気ポット−ぼくが去年の母の日に買ってあげた最新型だ−のスイッチが入った。

「え……」

 今一体何が起こったんだ。他の家族があぜんとする中、カナデはさらに指をパチンと鳴らした。そうすると、部屋の隅で充電していたロボット掃除機がゆっくりと動き始めた。

「掃除もついでにやっておきますね」

 次々と起きる不思議な現象を背に、カナデは笑顔で言った。


(続く)




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