我が家

 タクシーは、まだ冬の余韻を残している街中を走っていた。Y県T市。県のほぼ東の端っこに位置するこの街は、主にフルーツなどの農作物が名産だ。これの温泉の他には何もとりえのなかったここは、十三年前に急にできたショッピングモールの影響で、中心部への客が一気に減ってしまった。現在は温泉街で観光目的の客をつなぎ止めてる状態だ。そんな街の端にある小さな集落で、ぼくの家族はほそぼそと暮らしていた。ぼくとカナデは、今そこに向かっている。


 ***


 タクシーが目的の場所に止まると、ぼくはきちんと二人分の料金を支払った。白と青の車体が道の向こうへと消えるのを見送った後、ぼく達はゆっくりと歩き始めた。

「圭一さんの両親に会うの、楽しみだな」

 灰色のミモレ丈のスカートを揺らしながらご機嫌そうにカナデは言った。

「そうだな」

 ぼくは口ではそうは言っているものの、心の中ではこれまで以上に不安でいっぱいだった。なにせ、祖父と面と向かって話すのは、家を出る前にぼくの進路を巡って激しい口論をして以来なのだ。おじいちゃんがカナデを見たら何というんだろうか?そして、許してくれるのだろうか。ぼくの脳内にはそういう思いが去来していた。そんな事を考えているうちに、僕たちは懐かしい我が家にたどり着いた。


(続く)

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