第34話:あとひとつ、なにか
結論から言えば、喜田:兄からもめぼしい情報は入手できなかった。それこそ週刊誌やワイドショーでも報道されているような、「子どもからもその親からも愛される人気の保育士」であることを再認識させられただけだ。これでは何のためにわざわざ遠くまで来たのか。名探偵であれば、常人とは違った着眼点で、着実に事件の真相へと近づいているはずなのに。やはり僕にこういう調べ物は向いていなかったのか。
再び新幹線に乗って、占い師、田井中厚子の地へ向かう。刊野さんからタクシー代や宿泊キャンセル代として多めにお金を預かっていたので、早めの夕食として駅弁を購入した。
移動中は、前席の背中に付いているテレビでずっと、新たな事件のニュースを観ていた。
被害者は
ミヤコさんは、被害者の共通点が「心」に深く関わる仕事をしていることだと言っていた。設楽もその条件に当てはまる。
やはりこれは、連続殺人なのだろうか。
それでもまだ、確証が持てない。あと一つ、何か。
九哀。
鬼怒川サキ。
喜田圭吾。
これまで三人の関係者から話を聞いたが……。
「……あれ?」
待て。でもこれは。死んだ順番じゃない。訪問順だ。
でも五番目の設楽太一だって当てはまる。
だったらどうして今まで気がつかなかった?
一人、イレギュラーがいたからだ。
田井中厚子。彼女だけが「この」条件には該当しない。
でも、田井中は占い師だ。
まだ可能性はある。
駅弁をかき込んで、ごくりと喉を鳴らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます