第38話 冒険者
二人の容姿に見惚れていたら、男たちの中の一人がちーちゃんのコートを引っ張って連れて行こうとし始めた。
「お前何やってんだ?」
俺はそいつの腕を掴んで、ちーちゃんから引きはがした。
見ればちーちゃんはガクガクと全身を震えさせて怯えている。
「ミーファ、ちーちゃんをお願い! ミーファは大丈夫そうだね?」
「ええ、武器があれば、この程度の相手どうにでもできるのに……」
手を掴んで引きはがした奴なのだが、俺を無視して他の奴らとなにやら口論を始めた。
どうもこの七人は同じ仲間ではなく、2つのグループのようだ。
三人のグループと四人のグループが、二人を奪い合って揉めているのだ。
で、華奢で男一人の俺は完全に無視されているわけだ。
俺の鑑定魔法では、ちーちゃんは身長155cm・体重44kg。黒髪だが、やや栗毛色の肩ぐらいの長さのストレートヘアーをしている。肌は色白で、なにより目に付くのが胸だ! FとかGとかの大きさかな? 歩くだけで揺れているが、正直Cカップ以上のサイズは分からない。
鑑定魔法のレベルを上げたら、胸のサイズも調べられるのかな?
顔はこれまで見た女性の中で1番可愛いと思う……。正直緊張し過ぎて、これから先、上手く会話できるか自信がない。それほどの美少女だ。
俺はこれまで芸能人とかアイドルとかいわれている人たちの中に、可愛いと思える人はいなかった。でも、そんな俺から見ても、ちーちゃんは可愛い。
そして、ミーファ。
とんがり耳のエルフ様だ!
身長は165cm・体重48kg。俺も華奢だが、さらに線が細い感じだ。細さで言うならちーちゃん以上だ。モデル体型というヤツかな? 髪は薄いライトグリーンで、腰まである長いストレートヘアーだ。髪質は細いシルクのようで、街灯で煌めいていてとっても綺麗だ。
あと、ちーちゃんと比べたら、エルフ特性のちっぱい属性全開だ。お約束だね。
種族特性として、エルフは皆可愛い。予想はしていたが、ミーファは予想以上だった。ちーちゃんと同レベルな可愛さだ。ちーちゃん同様、これほどの美少女は前世で見たことがない。
もし妖精がいるとすれば、ミーファがイメージ的にぴったりだ。
ちーちゃんは女神かな? どっちも人外の美しさをしている。
俺? 俺は至って普通だ。身長170cm・体重56kg。髪は黒髪でサイドは軽く刈り上げて、前髪を目にかからない程度に切っている。特に他にあげる特徴もない。クラスでは1、2番の容姿はしているが、学年では4、5番目ぐらいだろうか?
全校生徒で言えば、更に順位は下がるだろう。普通よりちょっとは良い程度の容姿だ。
二人の容姿も気になるが、今はそれより目の前のヤロー共だな。
「二人とも、無視して行こうか? ちーちゃん? 大丈夫?」
大丈夫ではなさそうだが、こくんと頷いた。
二人にパーティー申請を飛ばして、俺のパーティーに加えた。
「はぁ~、しつこくパーティー申請出してきてたから助かったわ」
「そうなんだ? どこの世界にもこういう奴らはいるんだね?」
「そのようね……さぁ、これ以上絡まれる前に行きましょ!」
ミーファはちょっと苛立っているようだ。
すぐそこの冒険者ギルドに行こうとしたのだが、やはりそう簡単にはいかなかった。
「「なに無視して行こうとしてるんだよ!」」
「何でお前らの許可が要るんだ? もう一度言うぞ、この二人は俺の連れだ、目障りだ、失せろ!」
「へぇ~、ヤクモかっこいいのね! これだけの人数相手によくそんな啖呵が切れるわね?」
「そいうミーファはなんで平気なんだ?」
「立場的に幼少時より色々やらされていたのよね……。この人たちの実力が判る程度には剣術の腕には自信あるのよ」
「ああ、そうか。納得だ……」
何せミーファは元お姫様なのだ。護身のための剣術は当然幼少時より習っていたようだ。
「何ごちゃごちゃ言ってるんだ! そのエルフは是非うちのパーティーに入ってもらうぞ!」
「ふざけるな! 二人共うちに来てもらう!」
「だからどっちにも行かないって! 俺のパーティーにいるんだから、お前ら雑魚はどっか行けって! 連れが怯えてるだろ! 見て分からないのか?」
雑魚発言に切れた奴が、いきなり殴りかかってきたが、躱して足払いを掛けてやっただけで盛大にすっころんだ。
「あらら……予想以上に弱い。せめて受け身ぐらいしろよ」
転がされた奴の仲間らしき奴が剣を抜いてしまった。
「お前只じゃ済まさないからな! 覚悟しろよ!」
『♪ マスター! 剣を抜いた時点で正当防衛成立です! 殺しても罪に問われませんので、好きにやっちゃってください! 町中でも『魂石』は得ることができます! 盛大に毒殺しましょう!』
『エエッ!? なんて物騒な世界なんだよ! 抜いただけで殺しても罪にならないの?』
『♪ はい! それくらいの覚悟がないのなら、最初から剣は抜いてはいけません。もともと、町の中は喧嘩はご法度なのです。その中で絡んできて、剣まで抜きました。ナビーはちゃんと一部始終録画していますので、後はマスターのお好きなように。でも、毒殺が見たいです! 水中で薄まってあの威力……空気中ならどれほど脅威か……うふふ』
ナビーの奴、なんかこの状況を楽しんでないか? 嬉しそうな弾んだ声なのだが? 気のせいか?
相手は全員10代だ。おそらく皆、転生者だろう。若いので血気盛んで、すぐキレるんだろうな……。
『♪ マスターも同年代なのに、何おっさん臭い発言をしているのですか……』
エルフは魔法適性が皆高く、種族的に優秀なうえに見てのとおりの美少女なので、ミーファを是非仲間にっていうのは理解できる。ちーちゃんもめちゃくちゃ可愛いから、それだけでも仲間に欲しいと思えるんだろうな。
だが、相手の意向を無視するのは感心できない。一応、確認だけはしておいてやろう。
「剣を抜いた時点で、お前を殺しても良いそうだが、覚悟はあるんだろうな?」
「それは……」
「なんだ? 覚悟もないのに、勢いだけで抜いちゃったのか? なら見逃してやるから、大人しく引くんだな」
俺の種族レベルは10ある。この町に入れる最大値だ。しかも俺のユニークスキルの【カスタマイズ】で【身体強化】Lv10【腕力強化】Lv5もあるのだ。それだけならともかく【ちゅうちゅうたこかいな】のパッシブ効果で、現在偶数レベルの俺は、全ステータス2倍中なのだ。
相手は【詳細鑑定】で見たら、レベル6~8しかない。どうやれば負けるのか教えてほしい。
相手が止まっているのかと感じるほどの実力差があるのだ。
ミーファに手を伸ばそうとした奴が、アッと思った瞬間、ローキックをくらっていた。
バキッと嫌な音がしたのだが、見れば足が膝下で変な方向に曲がっている。
足を折られた相手は叫びまくって、地べたを転げまわっている。
「ミーファ! ちょっと手加減してやれよ! うわ~痛そう……」
ミーファにそう言ったのだが、どうも折るつもりはなかったようだ。ミーファは涙目で、首をフルフル俺に向けて振っている。
「わざとじゃないんだね? ひょっとして人間辞めちゃったレベルのこと忘れてた?」
コクコクと頷いて返答を返してきた。どうやら【身体強化】MAX状態のことを忘れていたらしい。
「次は気を付けようね? 首とか蹴っていたら即死してたよ?」
「ええ。以後気を付けるわ……ノーパンでハイキックは絶対しないですけど……」
確かにハイキックはないか……。
「おい! お前らこれ以上絡むなら、本気でいくぞ! 今見たとおり、俺たちは全員強い! 時間も勿体ないので、やるなら瞬殺するが、どうする?」
ミーファの霞むような速い蹴りが見えた者も少なく、ヤバいと思ったのか皆、あっさりと引き下がった。
足を折られた奴も、教会に行けば治療してくれるそうなので、ちーちゃんに回復させないで、放っておくことにした。ヒーラーだとバレたらもっと厄介になりそうだからだ。
念のため、こいつらにはマーキングしておく。
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