回想のセンチメンタルジャーニー

月野璃子

マヌケで壮絶な私の人生の一部です・前編

 お読み頂きありがとうございます🍀

 これから話していくこと……ちょっとでも笑って頂ければ、今後楽しい気持ちで思いだせるかもしれないし、誰かの物語のアイデアになったらいいなぁというちっぽけな願いが浮かびます。

 くだらない思い出の数々ですが、しばしの時間をくださいませ。


 🍬🍬


 数年前まで、私が楽しみに通っていたお店がありました。

 それはとあるゲーム専門のお店です。

 新作のゲームはもちろん、中古のゲームや多種のゲーム機を買い取り売っているお店だったのですが、数年前の私にとって大切なお店でした。


 通いだしたきっかけ。

 それはゲームではなく、お店で売られていたある商品です。

 なんだと思いますか?

 ゲームのお店にあるなんて誰も思いつかないもの。




 それは輸入品のポテトチップス。

 なんと人気ゲームと並ぶお店のイチオシ商品が、ポテトチップスだったのです‼︎

 外出先で店先を見るたびに、【何? まだあのポテチを食べてない⁉︎】という宣伝文句が気になりました。何故ゲームのお店がポテチを売っているのか? という疑問から足を止めるも、ゲームに無関心だった私は店に入る勇気を持てませんでした……が。


 職場でこのことを話すと、ひとりの同僚さんが言いました。


「月野さん、気になるなら買ってみればいいじゃん。私もどんなものか食べてみたいし、そうだよ買ってきて‼︎」


 🍬🍬


 仕事休みの日、私は店先に立ち入ろうかどうか迷い続けていました。

 どんなポテチか気になるけれど、ゲーム専門のお店にポテチだけ買いに入るのってどうなんだろう。

 ポテチが気になるけれど恥ずかしい。だけど同僚さんをガッカリさせるもの悪い。

 意を決してお店に入ると、ゲームソフトが並ぶ棚の奥にポテチが見えました。

 見慣れないパッケージの大きなポテチ。


 塩味のポテチをふた袋取り、カウンターに立つお客さんがいなくなるのを待ちました。お客さんの手にあるのはゲームソフト。ゲームのお店の中、ポテチを持っているのが照れ臭くて恥ずかしい。


 お客さんがいなくなって、恐る恐るカウンターの前に立つと店員は若い男性でした。黒縁の眼鏡をかけた、色白で細身で長身の。

 整った顔立ち……いわゆるイケメンさんです。


「いらっしゃいませ」


 イケメンさんがにっこりと笑ってくれた。顔面偏差値が低く、イケメンさんに接する機会がなかった私にとって衝撃的な瞬間。

 相手は仕事の中で笑っているだけ。それでも衝撃だったんです。

 イケメンさんが私の前で笑っている。

 こんなことが起きるなんて夢にも思わなかったから。


「ポテチ……前から気になってて、買いに来たんです。初めて来たんですけど」

「ありがとうございます。結構評判いいんですよ」

「そうなんですか? じゃあ、これ美味しいんですね。同僚さん喜ぶかな」


 会計中イケメンさんはポツリと言いました。


「ポイントカードはどうしますか?」


 どうするも何も、私はポテチしか買うものがなく、ゲームを始める予定もありません。

 戸惑いの中『いえ、私ゲームしてないんで、カードがあっても他に買うものが』と言うと『ポテチでもポイント貯まりますよ?』とイケメンさん。

「はぁ……そうですか」


 イケメンさんの笑顔を前にズルズルとカードを作ってしまった私。

 どうするよ……ポテチだけでポイント貯めるのって馬鹿みたいじゃん?

 私の困惑をよそに『来てくれたお礼に』と言って、イケメンさんがくれたもの。それば面白可笑しく作られたお店の名刺です。


「僕店長のカイト(仮名)といいます。よかったら、また遊びに来てくださいね……月野さん」


 🍬🍬


 以来、恥ずかしさに包まれながらお店に通うようになりました。理由はカイトさんに会いたかったからです。カイトさんは自分のかっこよさを鼻にかける様子はなく、私に気づくと『こんにちは』と笑ってくれました。


 当時の私は絶望感でいっぱいでした。

 姉がとある難病にかかり、繰り返された入退院。家と職場と病院を行き来する日々は疲労感に包まれ、仕事上のトラブルを抱え大きくなっていくストレス。

 絶望感と疲れの中、生きてることもどうでもよくなっていた。生きてたっていいことなんかない。

 いっぱいの夢がある。

 だけど嫌なことばっかりな日々の中、何をがんばったって私は……私にはなんの価値もないんだ。


 投げやりになりがちだった私が出会った楽しい場所。通い続ける場所が出来て、私の日々は楽しいものになっていったのです。





《後半に続きます》

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