第15話

「サトウ先生、ご無沙汰しております。その節はありがとうございました。」

「あー、久しぶりだね。今日は私に聞きたいことがあるとか?」

「はい、そうなんです。なぜ、私が心療内科医のメンタルチェックを担当する医師になったのでしょうか?サトウ先生が政府に何か口利きなどをされたんでしょうか?」

「私が君を推薦したと?私には、そんな権限なんかありませんよ。」

「そうなんですか?では、なぜ心療内科医としてのキャリアがほとんど無い私が、この立場についたのでしょうか?」

「それは私にも分かりかねますね。私自身も昔、急に政府から任命されて今まで働いておりますので。」

「ちなみに、失礼を承知でお聞きしますが、サトウ先生は昔、私のように現在の日本のあり方に違和感を持って革命を起こそうと思った事はありますか?実は私、政治家から『あなたは政府の監視下にある』と直接言われたんです。そこで、この立場に就く人間は全員、私と同じように不穏分子になりそうな心療内科医をこういった立場に置いて監視下に置いているのかと思いまして。」

「そんな事を言われたんですか?私は、そういった事を考えた事はありませんよ。恐らく、私以外で同じように心療内科医を専門に診ている医者たちも、そういった事を言われた人はいないと思いますよ。」

「では、政府からそういった不穏分子扱いを受けているのに、なぜ私は処分されずに済んだのでしょうか?」

「それは恐らく、政府がこれ以上、心療内科医であなたと同じような事を思いつく人が増えてくると困ると思ったからではないでしょうか?だから、あなたの行動を徹底的に分析したいと思ったのではないですか?」

「つまり、本来ならば私も処分されるだったが、タイミングのおかげか偶然にも命を拾えた結果になったという事ですかね?」

「うーん、先ほどの意見はあくまで私の予想なので、政府の真意は分かりかねます。でも、まぁそういう風にも考えられるかもしれないですね。ここであなたに会ったのも何かの縁かもしれないので、一つだけ助言を。もしかしたら、あなたなら想像しているかもしれませんが、心療内科医を診察しているつもりが実は政府の人間が潜入していて、心療内科医を相手に我々が変な事を画策していないか抜き打ちチェックされる事があります。もしも、この抜き打ちチェックをされた時に、変な事をしてしまった場合は、あなただけでなく、あなたの家族や恋人なども犠牲として処分されるという噂を耳にしたことがあります。正直、心療内科医か政府の人間かを見抜く事はできません。カルテも経歴も全てがしっかりと偽装されていますし、医学の知識も持っている人間が心療内科医役をやっているみたいなので。先輩として、あなたに助言できることは、これくらいかと思います。」

「なるほど。最後にもう一つだけ質問してもいいですか?」

「私に答えられるか分かりませんが、質問するだけならどうぞ。」

「メンタルチェックの抜き打ちチェックはありますか?私は3年に1度の期間で実施される予定なんですが、この期間中に不意打ちチェックされる事はありますか?」

「いえ、それは恐らく無いと思いますよ。私は1年に1度のチェックなので3年に1度の場合は分からないですが、同僚と話している限りでは、我々のメンタルチェックに対する抜き打ちは聞いた事はありません。」

「そうなんですね。色々とありがとうございました。」

私はサトウ先生に感謝を伝え、帰路についた。

(今日は非常に大きな収穫があったな。心療内科医に扮した政府の人間が紛れてくる可能性がある。これをどうやったら見分けられるか、まずはこの観点を分析することから始めるしかない。ただ、時間はそこまで残されている訳ではない。恐らく、3年後のメンタルチェックで俺は不穏分子判定される事は間違いない。革命にリスクはつきものだと腹を括るしかないか。)

 タイムリミットは残り3年。

 人生を賭けた大勝負の賽は投げられた。

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