第7話

 俺は猛勉強の末、第一志望であったA大の医学部へと進学した。医学部に進んだ理由は、幼稚園の頃からずっと一緒に過ごしてきた幼馴染のタケオが病気がちであったことが大きく影響している。世界で一番医療が進んでいる日本においても、タケオの身体を強くするための方法が未だに見つかっていなかったのだ。クローン人間を作っての投薬実験や臓器移植といった方法は、22世紀を迎えた世界であっても、倫理的な観点から認められていなかった。その為、医療は日々確実に進歩しているが、飛躍的な進歩を遂げるまでには進んでいなかった。俺が医学部に進んだからといって、タケオの病気を治すことが出来るかは分からなかったが、それでも一縷の望みに掛けたかった。一方のタケオは大学受験は無事に合格したのだが、大学1年生の夏に原因不明の発作を起こし、休学を余儀なくされていた。

 

 そして、俺たちは初めての選別を受ける20歳を迎えた。俺は大学生であることが無事に認められ、『第一の選別』は難なく通過した。ちゃんと勉強していて良かったと胸をなでおろした。その足でタケオの家に向かうと、家の前で泣いているタケオの母親の姿があった。

「おばさん、どうしたの?」

俺は、タケオの母親の元に駆け寄った。

「タケオが。タケオが『第一の選別』に通らなかったの。。。」

「なんで?休学しているとはいえ、タケオは大学生じゃないか。」

「休学している時点で、学びを放棄していると捉えるらしいの。。。」

母親はその言葉を最後に家に閉じこもってしまった。

『そんなバカな』

俺は、家に帰り『第一選別』の基準を改めて見直した。そこには、休学している場合の要項が注意書きという形で記載されていた。それによると、確かに休学の場合は、大学生と見なさないと書かれていた。その時、俺は初めて『日本』という国の影の側面を見た。生まれた瞬間に身体が弱っている場合も障害を持っている場合もある。それなのに、そんな事情も一切考慮せずに一律に、ただルール通りに人間を取捨選択していく。そんなことが許されて良いはずがない。ただ、この時の俺はまだその程度の怒りを感じているに過ぎなかった。大切な幼馴染が連れて行かれたこと、『ドレイ』になってしまった事は非常に悲しい事ではあるが、生きてさえいればまた会える。俺が早くあいつの特効薬を開発さえすれば、あいつを『ドレイ』から救い出せる可能性がある。そんな淡い期待を抱くことで、現実に起こった事実から目を逸らすしか、当時の俺には出来なかった。そこから俺は、取り憑かれたように医療の勉強に勤しんだ。

 しかし、現実というのは思っているより何倍も残酷で悲惨なものであることを、この4年後に知る事になった。

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