そうだん?じゅんび!
昼食の喧騒が、何だか嘘のようだと思うほど、静かであった。
いや、正確には、時折外から、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえているが。
それさえ、響き渡るほど、静寂。
「……。」
こう、レオおじさんと二人になった時に、何を話そうか思い付かないで。
「!」
「ふぁ~あ!」
そんな静寂故に、退屈からか、レオおじさんは思いっきり欠伸を出して。
その大きなこと、やたらと響き渡る。
その音に、つい驚いてしまう。
一方のレオおじさんは、大欠伸の後。
マフィンの家だというのに、気にせず床に仰向けになった。
お腹が膨れたことも相まって、眠気が来たみたいだ。
「……。」
それから、また、静かになってしまう。
眠ってしまったかと思うものの。
「……リオンキングダム、ねぇ……。」
「!」
違っていた。
レオおじさんは、眠る前の呟きかどうか分からないが。
リオンキングダムのことを呟く。
俺は、つい反応してしまう。
「……リオンキングダムねぇ~……。」
「……レオおじさんは、そこをどれぐらい知っているんですか?」
まだ続く。
何だか引っ掛かっているような風のレオおじさんの呟きに、俺は話題を合わせるように、言葉重ねて。
「!……そう言われるとなぁ。俺も詳しくはない。さっき言ったみたいによ、先祖がいたことぐらいか?」
「……そう、ですか。」
レオおじさんが知っていることは、どうも先祖がいたぐらいということだ。
その返答に、曖昧な返事で。
「!ん?その様子だと、大和、何か知ってそうだな?」
「!」
流石に分かってしまうか、レオおじさんは指摘してくる。
「……。」
指摘されて俺は、言っていいものかどうか迷ってしまう。
場合によっては、軽くショックを受けるものかもしれないから。
「……!」
けれども躊躇い。このままでいいはずもない。
俺は、迷いはあれど、シンや、マフィンから聞き知ったことを口にする。
「……マフィンや、シンから聞いた話ですけども……。」
「!おう、続けてくれ。」
俺が言うなり、レオおじさんは体を起こして、俺を向いてくれる。
「ええと……。」
ならば、話を進めて。
今現在、リオンキングダムの状況を。
マフィンから聞いた話で、かつて帝国に飲み込まれて。
シンから聞いた話だと、自治区だったのが、帝国の残党によって突然占拠されて。
そのため、王の安否は不明だが、半ば失脚のような形。
シンは、命かながら、ここまで流れ着いた。
流れ着いた上で、そう、ウィザードたる俺に、救いを求めてきた。
……最後。
村長さんに喝を入れられてしまって。
話は今、リオンキングダムを救うために、動き出したところだと。
「……これで、以上です。」
「……。」
話し終えたなら、俺は一息つく。
レオおじさんは、真剣に聞き入り、顎に手を当てて、何か悩んでいるかのようだ。
悩みに唸り。
「……助けを求めて、か……。しかも、ばっちゃんが言ったなら、俺だって逆らえないし……。ぬぅぅ~……。俺にも、シンと同じ年頃の子供がいる以上、息子が頼みに来たみたいで……ぬぅぅ~……。」
「……。」
呟くも、やはりそれら悩ましい。
レオおじさんにも、同世代の子どもがいる以上。
子どもが頼み込んだと思うとレオおじさんも断り切れやしない。
村長さんに言われたこともあって、なおさら。
「……分かった。そうと決まれば、他にも当たってみるぜ。」
「!」
悩み抜き、心決めたレオおじさんは、はっきりと顔を上げ、言ってきた。
「分かりました。俺も俺で、誰か、手伝いに来てくれるか、あるいは、道具とか揃えられたら、揃えるようにします。」
レオおじさんは決めたなら、俺も俺で、動こうとする。
「だな。そういう、国を救うとなれば、人手が多いことに越したことはないからな!んじゃま、子供たちが帰ってきたら、母ちゃんにも、他、俺の知り合いにも相談してみるぜ。」
「はい。ありがとうございます。」
レオおじさんが付け加えることには。
頼って来たんだ、国を救うなら、大人数がいいと。
俺は、頭を下げて、お礼を述べる。
「……がははは。お前さん、律儀なもんだぜ。他の人のために、そうやって、頭を下げられるなんてな。」
「!」
「……ほんと、猫耳勇者、大和らしいな!」
「……。」
そんな俺に、レオおじさんはそういう、褒める言葉を掛けて。
言われた俺は、照れ臭くなり、顔が赤くなった。
「大和!レオおじさま!」
「!」
「お?」
そんな俺とレオおじさん二人だけの空間に、マフィンが顔を出し。
俺たちを呼んでくる。
声の方を向けば。
「私、これから町へ行こうと思うの。……その様子だと、多分大和から聞いたのでしょうけどね、シンのこと。」
「!あ、ああ。」
「うん。一応、話しておいた。」
マフィンが言い始めることには、町へ行くとのことだ。
シンの言ったことに関わることだと思う。
「その、私は私で、軍関係者に会ってみようと思ったのよ。エルザおばさまには、もう話してあるから。」
「!分かった。」
その通りのようだ。レオおじさんたちが来る前に、話していたことで。
彼女自身のつてで、軍関係者に会うということだ。
俺もレオおじさんも、分かったと頷いて。
「それと、明日まで帰らないと思うから、私はこれで、ね?家のことは、お婆さまがいらっしゃるから、何とかなると思う。それじゃ、行ってきます。」
「あ、うん。行ってらっしゃい。」
「おう。行ってらっしゃい。」
マフィンは続けて。
自分のコネクションを頼るあまり、明日まで帰ってこれないということで、ここで今日はお別れだ。
送り出す言葉告げたなら、マフィンは頷き。
パタパタと足音を立てて、玄関から外へ出ていった。
「……。」
「……。」
音が聞こえなくなるまで、マフィンがいた方を向き続けて。
「……騒がしくなりそうだぜ。」
「……いつものことじゃ?」
レオおじさんが、そういう静寂に、言葉を投げ掛けて。
いつものことじゃないかな、俺はぽつりと呟くと。
「まあ、そっか!」
レオおじさんは、にんまりと笑った。
子どもたちとの喧騒が日常な、レオおじさんらしい。笑いながら、頭を掻き。
夕刻が迫る時、レオおじさんの子どもたちは、シンを連れて戻って来た。
すっかり仲良しな様子。
そんな様子に、レオおじさんもエルザおばさん、奥さんたちも笑顔になっていて。
なお、途中マフィンの姿がないことを聞きに来たが。
レオおじさんが説明してくれた。
夕暮れ、荷物持ち、それぞれが帰路に就こうとする、その折に。
「そうだ!シンを俺の家に連れて行こう。」
「?!」
レオおじさんは、突然提案してくる。
そんな突然と、俺は思ってしまうものの。
言った側から、特にエルザおばさんは、少し難解な様子を示す。
「……いやさ、母ちゃん。今マフィンの家、ばっちゃんしかいねぇぜ?信頼していないわけじゃないが、子供の世話、大変だろうよ?」
「……ん!そうだねぇ~……。」
色々あると思うが、村長さんに迷惑掛けるのも、という感じで諭す。
耳にしたエルザおばさんは、分かってくれたようだ。
「……そうねぇ。このままってのも、ばっちゃんに悪いわ。なぁ!シンちゃんさ、うちに来る?」
「?!え、ええと……。」
分かった上で、視線を、子どもたちの輪の中に紛れる、シンに向けてくる。
よく分かっていない様子のシンは、またまた戸惑い。
「来なよー!」
「大丈夫大丈夫!!」
「……。」
そんなシンに、子どもたちは笑顔でエールを送ってくる。
心動いたか、シンは軽く体を弾ませて。
「……うん!分かりました!一緒に、……お願いします!」
その誘いの嬉しさに、頬を緩ませては、シンは丁寧に頭を下げた。
「よぅし!あたしも頑張るかねぇ!」
聞き届けたエルザおばさんもまた、笑顔を返して。
腕をまくり、レオおじさんみたいに力こぶを見せてくる。
主婦の勤めたる、家事への気合の証明。エルザおばさんらしい。
「それじゃ、帰るか!」
そうと決まれば。
時間も時間だと、エルザおばさんは、率先して帰路に就こうとする。
その場一同も、頷いて一緒に。
決まったなら、家の奥を向いては。
「じゃあ!ばっちゃん!さようなら!」
「んじゃな!!ばっちゃん!」
「さようならー!!!」
今日の日に、村長さんに別れの挨拶を告げていく。
エルザおばさんを筆頭に、レオおじさん、最後にシン含む子どもたちが続く。
最後、合唱のように響いた。
……返事はないけれど、俺は、何だか、村長さんが頷いた気がしてならない。
挨拶が終わったなら、子どもたちは笑顔になり。
また、俺とアビーにも、手を振って挨拶をしてくれた。
見送りがてら、手を振って。
シンを含む、レオおじさん一家が、ぞろぞろと下っていき。
俺とアビーは、姿見えなくなるまで手を振った。
「それじゃ、あたしたちも帰ろっか!」
「うん。まあ、途中準備とかあるから、どこかそう、色々揃えられる場所に行かないとね。」
「!そうだね!」
俺とアビーだけとなったなら、俺たちも俺たちで向き合い、帰路に就こうとする。
その際、俺は思い付いた予定を、口にする。
このまま帰ってもいいが。
早速、リオンキングダムへ向かうことをするんだ。
準備もそれなりにしておきたいと。
その提案に、アビーは嫌な顔一つせず、頷いてくれた。
決まったなら、玄関に向かい。
靴を履いたなら、二人して家の奥へと向き直り口を開く。
「村長さん!さようなら!それと、……早いかもしれないですが、行ってきます!」
「さようならー!行ってくるねー!」
別れの口上を述べて。なお、返事はない。
そうであっても、そこは村長さんらしいや。
ならばと、踵を返し、レオおじさんたちの後をつける形になるが、マフィンの家を後にした。
「色々揃えたり、何だりするなら、カワマツリさんのお店だね!」
「!ああ、そうだな。」
帰路の道中にて、アビーが口にすることはそれで。俺は、確かにと頷く。
カワマツリさん。
カワウソの人が経営している、雑貨屋の店主のこと。
町から入荷した物もあるが、自分で作ったり、直した物も売っていたりする人だ。
特に、マキナの残骸から作った物や、他、流れ着いた軍事的な物品も、修理できたりすることから、軍事的なことも詳しい。
単に色々な準備するだけでなく。
もしかしたら、コネクションもあって、色々と話もできるかもしれない。
期待に、俺とアビーの歩く速度は、上がっていく。
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