まふぃんちゃん!めをさまして!!
「……分かった。」
だからこそ、アビーは代わりに先頭に立つつもりで。
俺は、アビーを信じて、前を任せた。
アビーは、俺より前に出て、マフィンに近寄る。
普通なら、怯えて手を出したいとは思わない状態だが。
自信満々なアビーは、気にも留めず。
こういう時、アビーの行動力は頼りになるな。
さて、アビーは、じりっと、マフィンと対峙する形となる。
飛び掛かってでも止めるつもりなのか。
いいや違う。
アビーは、笑ったなら。
「?!」
がしっと、マフィンを力強く抱く。
「?!あ、アビー?!」
突然抱かれたため、マフィンは顔を赤くし、目を白黒させて。
その行動からか、精神が乱れたが故、怒りの振動が、やや収まってくる。
流石は、アビーだ、マフィンを見事止めたと、俺はこの時思ってしまう。
一安心に、ほっとしようとした。これならば、怒りも収まるだろうと。
冷や汗ものの事態も、これで回避できたと。
が、それは甘い。
あの、アビーだ、何をするかと思えば。
「ぺろぺろ。」
「?!」
残念ながら、そこで終わりじゃない。アビーはまだ、続きを行う。
今度は、マフィンの首筋を舐めて。
「ぬきゅぁぁあああああああああ?!」
舐められたマフィンは、体をぞくりとさせ。
こそばゆさにか、聞いたことのない、変な悲鳴を上げてしまう。
顔は、沸騰しそうなほど真っ赤になり。
最初弱っている彼女だ、このままだと、マフィンは倒れてしまうんじゃ?
やめさせた方がいいと思いもするものの、遅く。
アビーはまた、何か彼女に仕掛けるつもりで。
「はぐはぐ!」
「?!あび……んぅ~~~~~~!!!!!」
「!!」
今度は、マフィンを顔を、自分の胸に寄せて、埋める。
されたマフィンは、途中アビーの名前を口にしようとしたが。
埋められてしまい、くぐもった声になる。
その光景に、見ていた俺まで、顔を赤くする。
マフィンは、埋められていながらも、体をじたばたさせていた。
……その乱れっぷりから、力の奔流が見られなくなる。
アビーがどうやら、これは本当にマフィンを止めてみせたのだ。
「……。」
安心するところであるが、アビーがやっただけに、何だか頭が痛くなる。
止めれはしたが、マフィンに迷惑が掛かったと思い、何だか悪く感じる。
「……。」
マフィンの怒りが収まったところで、やっと家の中に案内されるが。
例の子どもがいる、広間まで一切無言であり。
怒ってはいないが、恥ずかしさのあまりにってやつか。
案内され、広間の机に、座らされたら、マフィンは、小さく何か用意すると、口にして出ていってしまう。
「……。」
ここまで、何だか態度がそわそわしいのが、気に掛かり。
また、だからで、耳を澄まして、気配を追う。
どこかウロウロした足音が、やがて台所に行って、お湯を沸かし。
沸騰を告げる、やかんの笛の音色が聞こえたなら、何か淹れている音を立てた。
足音が、こちらに戻ってきたら、その両手に盆が載せてあり、その上には、俺たちのために出すであろう、飲み物があった。
香りからして、お茶ではない。
独特な、香ばしさを感じるものは、コーヒーであるらしい。
へぇとつい関心を覚える。
この家には、お茶だけなく、訪ねる者によっては、出すものを変えることができるよう、用意されているのかもしれない。
「!!」
それよりも、驚くのは、マフィンの姿。
いつの間にか、髪を整えて、かつ、顔もどこか、生気を取り戻したような。
ただ、気恥ずかしさは感じ取れて。
どうも、先の取り乱した様子といい、アビーに慰められたことといい、感じる色々な感情が混じった、何とも言えない様子。
らしいけれど、まだ、らしくはない。
マフィンは、何だか手がおぼつかない感じで、机にコーヒーを置き、薦める。
「……。」
気になるからと、マフィンをじっと見ていたら、余計に顔を赤くして。
「な、何よっ……って、そうじゃないわ。ごめんなさいね。」
「!」
「……さっきのことよ。ごめんなさい。私もどうかしていたわ。あなたたちに迷惑を掛けるなんて……。あんなに、取り乱してしまって……。」
普通なら、マフィンは軽く叱るだろう。
だが、さっきのこともあってか、マフィンは急にしおらしくなり。
深々と頭を下げてきた。
よっぽど、恥ずかしくなってたまらなかったらしい。
「いや、いいよ。俺も気にしていない。」
俺は首を横に振り、それほど気を使わなくていいと言い。
「いいよいいよ!だって、マフィンちゃん、あたしたちを傷つける様な真似、しないもん!誰だって、機嫌が悪い時あるし!えへへっ!」
アビーもらしいフォローを入れてくれた。
「……むかっ。……むぅううぅう……。」
なお、アビーの言葉を聞いたなら、一瞬マフィンは苛立ちに、ピクリと体を跳ねさせたが、押し黙ってしまう。
「……。」
その様子を、沈黙して見守るっている。
……それは、多分、アビーには言われたくないという、態度の裏返しなのかもしれない。
いつも、マイペースに色々あれこれ、そう、例えば、昨日みたく、折角用意した服を、たった一日で泥まみれにされたりと、続いたなら、確かに。
だが、苛立ち以上に、今回は流石に取り乱して恥ずかしく。
理もあって、怒るに怒れないのだ。
「……はぁ……。アビーに言われるなんて……。ショック。」
溜息と共に、マフィンは脱力する。
もうどうしようもない、マフィンもまた、自分に用意したコーヒーを啜るため近くに座った。
マフィンは、座ったなら、目覚めのためにか、気分転換にか、思いっきり、用意された物を飲み干した。
「う~~~~~!!!」
涙目見せながら、唸る。
ブラックコーヒーだ。物によるが、苦そうに。
そのおかげか、マフィンはようやく頭をすっきりさせて、話ができるようになる。
「……うぅ。やっぱり苦い。……は置いといて。……で、今日は何しに?」
苦み残るままだが、それ以上に、何の用事かと俺たちに問うてきた。
「!」
ようやくと、俺も気づき。
話に移るかと、俺は一呼吸置いた。
「……ええとさ。マフィンが言った通りの、例の子どもが気になってさ。」
本題として、自分の言葉で皮切り。
「……そうね……。」
その話から、マフィンは眉をピクリとさせる。言いにくさも、感じられる。
「……ふぅ。私が寝不足の、原因にもなっているのだけどね。あの子、昨夜、突然起きたら、レオおじさまのように吠えていたのよ。スフィアだって、吠えるみたいに輝いて。……大騒ぎだったわ。」
言うことを躊躇っても、どうにもならないとマフィンは、一息ついて。
その子どもについて話し出した。
「……。」
聞いていて、俺はデジャヴを感じてしまう。
というか、実際見ていたという気がしてならない。
やっぱり、本当に見えていたのかな、俺。
だが、どうであれ、証明することもできない。
このことは黙って、マフィンの話に聞き入るしかなく。
「……ねぇ。じゃあ、今その子は?」
代わりとして、同じく気にしているアビーが口を開く。
「……よく眠っているわ。私の気も知らないで、て言いたくなるぐらいに。」
マフィンは答え、そっと、向こうに眠っている子どもを見る。
少し、憎らしいそうにしているのは、やはり寝不足からで。
さておいて、俺もアビーも見て。
また、静かな寝息を立てている様子から、昨日とは違って、安堵して眠っているようにも見受けられる。
「!」
アビーは、そんな様子に、何か思い立つ。
思い付いたなら、マフィンに向き直り、何だか、慈しむように微笑んでは。
「ねぇ!マフィンちゃん!頭撫でてもいい?もっと安心すると思うの!」
突拍子もない感じに、言った。
「……意地悪するんじゃないんだし、別にいいと思うわ。きっと、寂しいのかもしれないし。それに、アビーが言って、聞く人じゃないし。」
「わーい!やったー!……でも、マフィンちゃん。最後のはひどいよー!」
「気にしないで。独り言。気にしたなら、ごめんなさい。」
「むー……。」
そんなアビーに、諦め気味に紡ぐと、アビーは喜ぶが。
最後の、マフィンの愚痴に頬を膨らませる。
マフィンは、あしらい、宥めてしまう。
アビーは、そうして、不満残るものの、謝られると怒るに怒れず。
まあ、だからといって、気にし続けるアビーでもない。
すぐに切り替わり、先の不満どこへ行ったやら、そっと、その子どもに寄って。
頭を優しく撫でてやる。
見ると、より安らかな顔になっていた。
見ていて、アビーはより、慈しむかのようだ。
その表情のまま、今度は、俺を向いてきて。
「ねぇ。大和ちゃんも一緒に!」
「!」
俺を誘ってきた。
意図は分からないが、俺は頷き、アビーの近くまで寄る。
「撫でてみてよ!可愛いよ!」
「……ん。分かった。」
何だか、一緒に愛でよう、そんな風がしてくる。アビーは言って、示す。
俺は、言われるがまま、そっと、手をやった。
「?!」
と、別の反応がある。
スフィアだ。
子どもの胸元にある、スフィアが輝きだす。そう、夢と同じような反応。
その反応に、俺はつい、目を丸くしてしまい。
「うぉー!!すっごーい!!」
「ちょっと!!な、何?!」
一同をも、驚愕させる結果になった。
強力な振動が放たれ、家中を揺らす。
何が起きたのか、俺も理解はできないが、どうも、俺と呼応して?
その輝きの中、持ち主の子供は目を開いていき。
口もまた、動く。
「……ウィザード……?」
「!」
ある言葉が紡がれ、俺は、はっとなった。
……ウィザード……。
その言葉紡ぎ、かつ、はっきりと視界が開けたなら。
子どもはまた、俺と同じように、はっとし。
「ウィザード?!ウィザード!!!!!あ、あああああ!!!」
「?!」
見開いたなら、子どもはその、誉れ高き名前を口にし、興奮。
そのあまりに、いきなり俺に抱き着いてきた。
いきなり抱き着かれ、俺はどう反応すればよいか分からずにいる。
「ウィザード!!!お、お願い!!!父さんたちを!!!皆を!!」
「?!」
そのまま揺り動かされ、視界はがくがく揺れ、混乱。
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