あるばむっ!
レオおじさんは、注目されていると気付いたなら、逆に見渡して。
皆揃っていると確認したら、咳払い一つ。
何か、広間に集めてやるのだろう。
この家の、習慣の一つ、家族団欒で行う者なのかもな。
「……んとな。いつもなら、昔話の一つでも聞かせてやるのだが、今日は、その、何だ。アルバムでも見せようかなってな。」
「「!!」」
やろうとすることは、思い出詰まった、アルバムを見せるということで。
耳にしていた子供たちは、いつもと異なることに、目を輝かせて聞き入り。
俺もまた、すっかり忘れていたと、ここで思い出す。
夕方頃、レオおじさんが俺の写真を撮って、気になることを口にしていたんだ。
その証明に、俺を呼んで。
「アルバム?何々?」
「とーちゃん、何かあるの?」
俺が思考している間にも、子供たちもまた思考していて。
思ったこと、口々に言ってくる。
「がははは。ちょっとな。」
言われてレオおじさんは、笑いながら、広間の奥の方まで進んで。
壁に備え付けられた、収納の引き戸に手を掛けたなら、幾分の年月経た埃が舞い上がり。
思いっきり被ったレオおじさんは。
「ぶぁああくしょい!!」
遠くまで響きそうなほど、大きなくしゃみをしてしまう。
その大声に、子供たちは何だか面白そうに笑みを浮かべて。
レオおじさんは、その後、引き戸から収納の中に、入りこんでは。
何やら漁りだして。
その巨体が接するために、収納は生き物のようにガタガタ震える。
「!おっし!見つけた!!」
その蠢きからしばらくして、レオおじさんは何か見つけて。
ゆっくりと、収納から体を出しては、その手にしている物を皆に見せる。
古びた革張りの、大きな本のようだ。
いや、単なる本じゃない、アルバムだ。
レオおじさんは、それを持ってきて、皆が集まる中央にて広げていく。
何だかその時のレオおじさんは、懐かしむような感じで。
それを明らかにするか、アルバムをめくった時に目にする写真は、色褪せて、その古さを物語っている。
……そうであっても、思い出は色褪せてはいないのかもね。
「!どうだ!!この写真。強そうだろう!」
ページめくりを一旦止めて、レオおじさんは言って、ある写真を指さし、自慢げにする。
見るとそこには、子供たちと同じくらい小さな子供と、レオおじさんだろうか格好よく咆哮する姿が映っていた。
レオおじさんそっくり。
力強く構える様子は、歴戦の勇士を思い起こさせる。
「!!とーちゃん?!」
「おー!!!」
子供たちは見入って、目を輝かせては言う。
聞いていてレオおじさんは、鼻高々だ。
「……そんなわけないだろ!あんたは、こ・れ!」
「?!あ、母ちゃん?!や、やめて……。本当のことは……。」
「……あははは……。」
その高い鼻を、エルザおばさんが容赦なく折ってくる。
エルザおばさんが前のめりになり、レオおじさんが示した写真の、アップで映る、雄々しい男ではなくその傍の、泣いている子供を指さして。
言われてレオおじさんは、慌てふためく。
俺は、そんな様子も含めて、乾いた笑いを出して、見てしまう。
その写真は、レオおじさんの子供時代の物か。
「……そーだ。嘘ついてごめんな。……これ、俺の子供の時の写真。んで、ここにアップで映る、格好いい男は、お前たちの爺さん、そう、俺の親父だ。」
早々に観念して、レオおじさんは真実を告げ、項垂れて。
「えー!とーちゃん小さいー!」
「泣き虫ー?!」
「……うぐっ!そう言われると、俺ちょっと傷付くわ……。」
子供たちにからかわれ、レオおじさんは軽くショックを受ける。
だからと言って、誤魔化すことはしない。
レオおじさんは、それでも笑顔を浮かべては。
からかう子供たちの頭に手をやり、力強く撫でては。
「ああそうさ!俺も小さい頃、そうだな、お前たちぐらいの時は、とっても泣き虫だったのさ。力も上手く出せずに、な。兄弟でも、一番喧嘩が下手でな。いじられることも多かったよ。」
「へー。」
「ふーん。」
「そうとも!そんな男でも、大きくなって鍛えたら、こうにもなるさ!がははははは!」
自分が小さい頃を思い出しながら言い、最後はいつものように笑い飛ばしてみせる。
子供たちは、生返事ながら、聞いてくれていた。
アルバムをさらにめくっていくと、今度は活発なライオンの人の、女の子が写るものに止まる。
ページめくり止まり、視線も釘付け。
活発な女の子は、側にいる男の子にも負けないほどで、投げ飛ばしたり、上に乗っていたりする写真もある。
沢山の、同い年の子供たちに囲まれている写真もあって、その次には、続きか全員をじゃれ合って、倒して一番前に立ち、ブイサインを示して写っている。
見て、レオおじさんは少し意地悪そうに笑い。
「これ。誰だと思う?」
言ってくる。
「?誰だろー?」
「わっかんないや!誰、この女の子。」
子供たちは分からないでいる。
「何だい?自分の兄弟姉妹の写真かい?……って?!あ?!」
エルザおばさんが子供たちが分からないでいる中、顔を覗かせてまじまじと見ると。
最初、レオおじさんの姉弟だろうと思っていたが、見覚えあるか、言葉は一転して、戸惑いが混じる。
「……ぐぅぅ!あの、おやっさん……っ!!」
「?」
顔は赤くなり、何だか恥ずかしそうにしては、噛み締めながら、レオおじさんの父親に文句を言いたげにする。
不思議なことだと、俺は首を傾げると。
「……母ちゃん。エルザだよ!がはははは!どうだ?お前たちと同じぐらいの時、エルザはこんなにお転婆だったんだよ!」
答えを言っては、豪快に笑い。
「?!あわわわわ!!!み、見んといておくれよ!!ああ、恥ずかしい!」
答えを聞き、エルザおばさんは珍しく慌てふためき、顔を覆ってしまう。
「きゃははは!!母ちゃんかわいー!」
「俺っちと同じだい!!きゃははは!!」
「うぅ~……。」
「がははは。ちょっとした、お返し。」
顔を覆っているエルザおばさんに、子供たちはからかい、レオおじさんはしてやったりとにんまりとしている。
「……あはは。」
俺は圧倒されながらも、笑う。
「えへへっ!エルザおばさん、かわいー!」
アビーもまた、笑いながらも、純粋に可愛がってくれていた。
俺はそうして、子供たちに目線を移しながら思うに、特にエルザおばさんの子供がやんちゃなのは、多分エルザおばさんの遺伝なのかもしれないなと。
元気そうで、何よりだ。
そうして、一しきり笑みをこの場に満たしたなら、ページをレオおじさんは進めていく。
「!」
進めた先にあったのは、レオおじさんやエルザおばさんの時代よりもかなり古い写真のようで。
辛うじて色は残っているが、大分痛み切っている状態。
その中で一際目立つ写真があった。
構図としては、中央にまじない師風の人間、何だか、どこかの異民族に見られる奇抜な化粧をして、上半身を裸に、そこに何やら紋章を刻んでいる男がいて。
その側に、ライオンの人の子供二人。
それも、生まれも育ちもよさそうな子供、尊敬の眼差しを向けていて。
それだけなら、単なる奇術師のショーのようなものだが、極めつけは、そのまじない師か魔術師の周り、よく見れば、スフィアが発光してその存在を示しており。
不思議に思う。
スフィアを従えて、写るこの人物は一体?
「!」
その風貌相まって、ふと思う。
ウィザードだと。
「……この写真のこの人は……。」
「……ウィザード……。」
「!!お……。おう、そうだ。ウィザードだ。それも、古い、な。」
「……。す、すみません。遮ってしまって。」
「いやいいんだ。」
レオおじさんは、この人の説明をする時に、俺はぽつりと呟いてしまう。
言葉を遮る形となり、俺は謝るが、レオおじさんは気にせず、その通りだと、この人物を指して言い。
「ま、なんだ。これが、大和、お前に見せたかったものだ。ほら、写真、今日撮った。」
「!」
軽く咳払いしては、続けて、これが、見せたかったものだと示す。
「似ていると思ったんだ。この、ウィザードの写真にな。」
理由には、似ていると。
だが、俺にはいまいちピンとこない。せめて、比較してくれないと。
「……と、言われても、大和、ピンと来てなさそうだな。分かった。待ってろよ。現像してないから、写真じゃないが、我慢してくれよ。」
「!あ、はい。」
俺が、ピンと来てないと察して、レオおじさんは立ち上がり、カメラを取りにこの場から一旦去る。
レオおじさんは広間を出てすぐの所で、何やら漁りだし。
多分、そこに置いてある、レオおじさんのバックパックだろう。
「……へぇ。大和ちゃんに似てるって?ウィザードって?どれどれ。」
レオおじさんが抜けたのと入れ違いに、エルザおばさんがその写真を覗いてきて。
どうやら、先程の赤面も治り、いつものエルザおばさんのようだ。
「……。」
覗いてみるものの、分からなさそうだ。
「……まあ、らしいっちゃらしいが。わっかんないや。」
写真へのコメントは、分からないの一言で終わり、首を傾げた。
そのタイミングで、レオおじさんが例のカメラを持って戻ってくる。
どこか、嬉しそうにしていながら。
「さあさあ!皆待ちかねたろう。ほら、今日撮った写真、早速見せるぞ!」
そう言って、元の、アルバムを広げている広間の中央に進み出て、カメラの後ろにあるモニターを起動し、今日の写真を再生する。
色々なポーズで撮られた写真の中で、例の、そう、最後に撮ったポーズで止まり、全員に示し。
「……。」
俺もマジマジとその構図と、ウィザードと思われる人物を交互に見て。
俺が撮られたポーズも、スフィアを浮遊させ、並べたもの。
なお、腕には盾が装着されているという違いはある。
一方、ウィザードと呼ばれる人物の方は、腕には豪華な装飾の腕輪があり、顔には、独特なフェイスペイント、頭には草か何かで作られた冠があるという違いがあるが。
スフィアを浮遊させ、並べ写される様子は、俺と同じ。
偶然、同じポーズをとっていた。
「おー!!似てる!大和ちゃんに似てる!うぃざーどだぁ!」
よく観察したアビーは、見比べて代弁し。加えて、感嘆まじりに誉れ高き名称を口にする。
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