第96話 ゲテモノのあれこれ(3)
カエルが食べられると知ったのはいつのことだろうか。
おそらく、幼少期に見た「火垂るの墓」が一番最初と思われる。観賞中にカエルは食べられるのかと母に尋ねた記憶があるもの。
とはいえ、あの作品を見て「わー、カエルおいしそー。私も食べたーい」となるはずもなく(なった人がいたら素直に感心する)。実際に食材として向き合うのは、あれから何十年も経ってからのことになりましたとさ。
お待たせしました。食べてきました。カエル。
急遽、友人と休みが重なりまして。これはチャンスとばかりに、以前より目をつけていた、カエルを出してくれるという近所のお店に行ってまいりました。
店の種類的にはお寿司屋さん。
……お寿司屋さん?
お店の前で冷静に携帯で調べ直す私。ナビの位置は間違っていない。しかし、看板には寿司とでかでかと書かれてある。
「寿司屋でカエルなんて出すのか?」「ネットの情報、間違っているんじゃないのか?」と若干不安に思いながらも、もし間違っていたら寿司食べればいいや、と勇気を出して暖簾をくぐりました。
店主「いらっしゃい。お、新顔だねぇ。何見てきたの?」
私「カエル食べれるところをネットで探していたら、ここがヒットしまして」
店主「カエルぅ? うち寿司屋だよ?」
私「ですよねぇ」
店主「唐揚げでいい?」
私「あるんかい」
店主「あるよー。チャーハンとナポリタンもあるよー」
私「(看板を見返す私)」
すごくキャラの濃い店長の言動におっかなびっくりしながらも、カウンター席に座る私と友人。メニューを見ると、とりあえずカエルの唐揚げは書いてあったのでとりあえずは注文。チャーハンとかナポリタンはさすがに冗談だったか。
店主「裏メニューであるんだよ。100個くらい」
私「表メニューより多くない?」
店主「作りたいもの作って金取るのがうちだからねー」
雑談をしながら数分。出てきたのは俗にいうフロッグレッグ。
まあ、カエルは足しか食べるところがないんだけど。ぱっと見、まっすぐに伸ばした鳥の手羽先のように見えなくもない。
ふふん。ワニやラクダを食べたこともある私。この程度のビジュアルじゃビクともしないぜ。躊躇することなく一口。
味はやはり鶏。淡泊で脂が少ない。
食感はモモ肉。いや、ササミかも。とにかく歯ごたえがある。ざくざく切れる筋繊維が面白かった。
食用カエルはフランスではグルヌイユと呼ばれ、郷土料理では一般的に使用される食材なのだとか。ちなみに食べないカエルはクラポーというらしい。日本では定着しなかったものの、ワニやラクダと同じく食材としてはなんら問題なさそう。カエルの生息域を考えれば、生で食べればアメーバ赤痢とかになる危険があるので、十分に加熱しないといけないでしょうが。
あとは単純に量の問題。一匹当たりから採れる肉の量を考えれば、何十匹も捕らなければお腹いっぱいにはならない。捕獲や加工の手間を考えれば、あくまで食材の選択肢の一つであり、普遍的な食材として登場させるのは難しいかも。巨大カエルとかが登場する世界観ならありだとは思いますが、両生類が上位に立つ生態系ってどんな構成になるんだ?
カエルだけというのも申し訳なかったので、お寿司もいただきました。
「醤油はかけないで食ってね」という点種の言葉に従い、いっさい醤油を使いませんでしたが、めちゃくちゃ美味しかった。魚ってこんなに美味しいんだと再認。100円寿司ってやっぱり100円なんだよなぁ。これが目利きというやつか。
総合的にたいへん満足のいく一時でした。美味しい物を食べて知識を深める。これほど贅沢な休みがあるでしょうか。これで明日が仕事じゃなければなぁ……。
余談ですが、お会計する時に「下三桁0でいいよ」と端数を割り引いてくれた。
店主、なんて気のいい人なんだ。また行こう。
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