第1275話 「紹介-外伝Ⅱ」

 オデッセイ


 この外伝の真の主人公。

 とある世界で要塞の管理を行っていた人工知能。

 当初は名称は存在せず製造ナンバーで呼ばれており、首途によって回収され彼の所有物となる。

 

 厳密には他に回収されたAIと統合されたのが現在のオデッセイと呼称される存在となっている。

 統合によって処理能力は大幅に向上しており、スペックで見るなら完全に別物。

 一応は配下扱い。 オラトリアムは今も昔もこれからも成果至上主義なので、何らかの形で貢献すれば見合った待遇が約束される。


 オデッセイの導入により、オラトリアムは文明的にも大幅に前進。

 それにより非常に重宝される事となった。

 彼らAIは奉仕する為に生まれた存在なので、その対象がいない事はその存在意義を見失わせる事に等しい。


 それによりオデッセイの同胞達は絶望の中、無期限の休眠という名の自殺に等しい行動を行っていた。

 世界も滅びに向かっており、朽ち果てるまで虚無の時間を過ごすはずだったが新たな主人を得て現在は幸せに暮らしている。 彼らは新たな主人と世界を支配する神に無限の感謝を捧げ、忙しくも充実した日々を過ごすだろう。


 歩行要塞エンド・オブ・デイズ――量産型インデペンデンス・デイ。

 オデッセイの導入により、最適化及び強化が施されているので全てにおいてタウミエル戦で投入されたオリジナルを大きく上回っている。

 開発、運用コストはオリジナルと同様、非常に重く、現在は数千機の生産に留まっているが、将来的には更に進化を続けその数を増やしていく事になる。


 アンホーリー――正式名称は『維管形成層ハッキングシステムツール』

 エンド・オブ・デイズに内蔵された兵器の一つで大地に打ち込む事で、龍脈へ強制介入して作り替える。 それにより他所の世界でも聖剣や魔剣などの龍脈からの供給がないと性能を発揮できない装備も完全な状態で使用する事ができる。 同時に龍脈を味方につける事にもなるので接続法を身に着けていない存在にも専用器具を介してだが、疑似的に接続する事が可能になる。


 その他、味方の転移機能や障壁展開機能などを備えており、打ち込むだけで前線拠点を築く事ができる非常に便利な代物。 今回で有用性が証明されたので次回から初手で飛んでくるようになる。


 UAVレギオン・キャリアーⅦ――オデッセイが天界相手に繰り出した量産兵器。

 オラトリアムで長年愛されていた人型機動兵器エグリゴリシリーズの傑作機であるレギオンの最終量産型。 頭のUAVは無人機である事を示し、キャリアーが付いているのは他の機体の予備パーツを兼ねている事を示す。 キャリアータイプは他のパーツを失った機体に自身のパーツを分け与えて継戦能力を上げる支援を主とした機体で、半身が撃破された時に何度も助けられた者も多いので前線の兵士達からは非常に感謝されているありがたい存在だった。

  

 だが、そんなエグリゴリシリーズも次世代機であるネフィリムシリーズの開発により、徐々に出番を失い惜しまれながらも引退となった。 その後、一部は重機に転用されたがその大半がデッドストックとして倉庫に眠る事となる。 そのまま眠り続けるかに思えたが、オデッセイにより無人兵器としてリサイクルされる事になった。 性能こそ現行機に劣るがパイロットが存在しないので、多少の無理が利くように改造を施されており主力にはなり得ないが予備戦力としての活躍が期待されている。 


 ネリア・テウデリク・ヒュダルネス


 オラトリアム教団混沌騎士。 部下からは団長と呼ばれて(呼ばせて)はいるが、正式な肩書は大隊長。

 これは所属の関係で作戦行動に従事する際には軍属として扱われる事が理由。

 教団と軍は組織が別だが、混沌騎士が指揮官に抜擢される際は軍属としての階級が与えられる。


 彼女の場合は佐官相当で最大で数千から一万の部下を率いる事が許可されている。

 今回は志願しての参戦で、こういった機会が訪れる度に真っ先に手を上げているが、競争率が高いので選ばれた事は幸運だった。


 父親は元グノーシス教団聖堂騎士、母親も引退していたが聖堂騎士だった。

 物心ついた頃からオラトリアム教団(旧ロートフェルト教団)の教義に染まっていたので、神は絶対と信じ神に逆らうもの、神に不要と判断されたものを消し去る事になんの躊躇もなく、消す事は寧ろ常識とさえ思っている。

 

 肉体改造も受けて居るので見た目通りの年齢ではない。 精神年齢は見た目より下だが。

 父親は講師として立派に結果を残し、優秀な人材を何人も送り出して来た事もあって尊敬されている。

 甘やかされて育った訳ではないが、かなり偏った性格をしておりどうにも情緒が安定しない。


 本人は自分の事をクールで格好いい混沌騎士と思い込んでいるが、周りから見れば珍妙な行動を取る生き物でしかなかった。

 これは元来備えていた純粋さの所為で人格形成を行う多感な時期に馬鹿な――いや、変な――でもない個性的な面子と付き合ったお陰でかなり残念な出来となってしまった。


 人格面ではあまり褒められたものではなく、指揮官としての能力も低いが個人での戦闘能力は高い。

 今回は『傲慢』しか使用しなかったが、美徳、大罪と複数の権能適性を持ち、轆轤チャクラに関しても高い水準で扱える為、まだ発展途上という事もあって将来性は有望視されている。


 ジ・アース――正式名称は『維管形成層接続端末』

 先述したアンホーリーの子機に当たる装置で、制御を乗っ取り流れを操った龍脈から魔力を引き出す事を可能とする装置で靴に仕込まれている。 一定以上の制御能力が必要なので誰にでも扱える訳ではないが、これにより龍脈へ接続する為のハードルをかなり落とす事ができる。


 九曜ナヴァグラハ虚空蔵菩薩ガガナガンジャ“偽”『迅雷じんらい』――九曜の名こそ冠しているが、後ろについている『偽』の文字からも分かる通り『ジ・アース』の補助によって発動した極伝擬き。 オリジナルに比べれば大した事はないが、ケルビムクラスの天使を両断するには充分だった。


 ジオグリス・リンドキスト・タイラス


 オラトリアム教団混沌騎士。 ネリア直属の部下。

 人間に見えるがマザーという生物の品種改良能力を持った改造種に生み出された存在。

 その為、母親はマザーで父親の知らない間にできていた子供。 ある日、唐突に「調査の結果、貴方の子供という事が分かりました。 おめでとうございます」と子供を引き渡された。 父親は突然の出来事に戸惑ってはいたが、何だかんだとジオグリスを可愛がり、一人前になるまでしっかりと育て上げた。


 色々あったが家族仲は良好。 ヒュダルネス教室の卒業生で、権能はそこで学んだ。

 その関係で幼い頃からネリアと一緒だった。 所謂、幼馴染。 ジオグリスはネリアの事はうざいと思っていたが、彼女の父親の事は心の底から尊敬していたので我慢して付き合っている。


 性格は基本的には真面目だが、面倒事は避ける傾向にあるのでネリアとの相性は悪い。

 もっとマシな人の部下になりたかったと思いながら今日も仕事を続ける。


 ディセントⅢ――正式名称はネフィリムType:ディセントⅢ。

 オラトリアムの次期主力機動兵器ネフィリムシリーズの最新鋭量産機。 ディセントはレギオンのコンセプトを受け継いだ機体で、癖が少なく使用する個々人に合わせて追加装備、武装で差別化を図れるので前線で愛されている。


 Ⅱからオデッセイによる調整が入り、最適化が施されたのがⅢ。

 その為、新鋭機として非常に高く評価されている。 レギオンとの相違点は分離合体機能が撤廃された事だが、その機能を発展させ、最大限生かした機体が別で存在するので特に問題視はされていない。


 基本的に混沌騎士はこの機体を支給される。

 天界の神聖騎や深淵騎と似た機能を備えているので、召喚してそのまま機体と融合する事が可能。

 それにより搭乗に手間をかける必要がない点も強みだった。

 ネリアが生身でも余裕だったのはこれが理由。 今回は携行武器であるハンドガンしか使っていなかったが、武装としてジオグリスの機体には背中に有線誘導式の多目的ランチャーが四基と腰に魔力充填によって刃を形成する専用ブレードが装備されていた。

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