第1274話 「紹介-外伝Ⅰ」

 山埜和やまのわ 雅哉まさや


 高校生。 ある日突然天界に召喚され戦いに巻き込まれた憐れな被害者。

 本来なら拉致に該当する許されない行為で怒る所だが、ルクレツィアの美しさと手に入れた神聖騎のお陰ですっかりその気になった。 多感な時期だけあってフィクションでよく見るシチュエーションにちょっとした憧れを抱いており、美しい姫、選ばれし勇者、専用の凄い力と三つ揃ったこの状況にかなり気を良くしていた。


 本人は運命的なものを感じていたが、実際は拉致された上で目の前にいた女の顔と乳にやられただけで頭ではなく下半身で考えた結果。 そんな思考だからこそ天界が滅びそうだと聞いても危機感を抱きつつも何となると楽観していた。

 性格は可もなく不可もない、状況に流されるだけの歳相応の少年でしかない。

 

 契約に成功したケルビム級の神聖騎は総合で見ると割と強い方。

 その為、地界と本格的に戦う事になってもかなり善戦はできた。

 問題は実際に戦った相手が悪かったので、差があった戦力差を覆せずに当然のように死んだ。


 ケルビム=エイコサテトラ――ケルビム級の神聖騎の一騎。

 ケルビム級という括りだけで見ても優秀な部類。 流線形のフォルムに腕と羽が付いたデザイン。

 形状からも察せられる通り、とにかくスピードに特化している騎体。

 

 得意技はその加速を利用した突進攻撃。 全開にした速度を捉えられる存在はそう多くない。

 基本的に狙いさえ定められればそこまで技量を要求されないので立ち回りのパターンが少ない分、癖は強いが比較的、扱い易い部類に入る。



 ルクレツィア・マグダレーネ・ラーガスト


 ラーガスト王国の姫。 歳は雅哉よりちょっと上なので少女と呼ぶには少し厳しい。

 国王がセフィラ級の神聖騎と融合して国を文字通り支えているので、ラーガスト王国の実質的なトップ。

 異世界人を拉致しては戦力にして死ぬまで戦わせる外道。

 一応、罪悪感は感じているが、国が亡ぶから仕方ないので異世界人の拉致は止めない。


 雅哉が秒で惚れるだけあって顔良し、スタイル良しの見た目だけならかなりの優良物件。

 性格も悪くないので平時であればヒロインで通った。


 本編の開始時点で負けは悟っていたが、立場と国の為に折れる訳にはいかなかった。

 付け加えるなら権力を剥奪され、路頭に迷う恐怖もあったのでどちらにせよ降伏は選べないと思っている。


 結局、降伏しようがしまいが、圧倒的な力に叩き潰されて死ぬ事には変わりなかったので彼女の選択には間違いはなかったが意味もなかった。 死亡。


 ドミニオン=コネクトーム――ドミニオン級の神聖騎の一騎。

 総合力は現地人のみの括りで言うなら上の方。 全身鎧のような形状に光輪、光の羽と神聖騎の中では割とオーソドックスな見た目。 固有の能力として自身の思考を任意の対象に届けるテレパシーが使える。

 現地で総大将に選ばれた理由はこの能力によるところが大きい。



 手簀戸てすど 照喜名あきな


 日本人。 召喚される前はそこそこ大きな企業で事務仕事をしていた所謂、OL。

 異世界召喚に対して理解が深い方ではなかったので、自分を召喚した連中は誘拐を平気で行う倫理観の欠片もないクソだと思っている。 それでも帰る方法はありません、協力しないなら路頭に迷って貰いますと言われれば従わざるを得なかった。 地界で騎士として働きながら元の世界へと帰る方法を探していたが、何も見つからなかった。 異世界人は拉致を繰り返す犯罪集団と思っているので、その反動か同郷の人間には優しい。 雅哉を気にかけたのもその点が大きい。 実際は異世界に対する当てつけでもあったが、何も知らない異世界人を見れば投降を進める程度には同情していた。


 抗ってはいたが、結局流される事しかできず元の世界への帰還を果たせないまま異世界でその生涯を終えた。 死亡。


 デューク=メラノサイト――デューク級の深淵騎の一騎。

 上半身こそ人型だが下半身は円錐を逆さにしたような形状で、腕は存在せず代わりにリングのような物が浮遊している。 固有能力は認識阻害。 要はステルス。

  

 浮遊しているリングを中心に効果範囲内の存在を隠す事ができる。

 ラーガスト王国への奇襲に成功したのはこの能力によるもの。 戦闘能力だけで見るなら同ランクの騎体の中では弱い方。 支援面で優れているので、後方向けの能力だった。 

 

 パパバシリオ・リンゼ・インブルリア


 インブルリア王国の王子。 ルクレツィアと同様の理由で国のトップ。

 そろそろ中年に差し掛かるおっさん。 異世界人を拉致する事の危険性を理解しているので、裏切らないようにあの手この手で機嫌を取っている。

 

 そのお陰か召喚した異世界人の保有数は天界でもトップクラス。

 反面、裏切りには厳しく、そんな素振を少しでも見せたら即座に暗殺する割り切りの良さもあった。

 個人の戦闘能力はそこそこ高く、ドミニオン級の神聖騎と契約していた。


 一応、戦闘には参加しており、終盤まで生き残ったが相手が悪かった。 死亡。



 佐渡屋さどや 減磁げんじ


 元フリーター。 召喚直後は女と遊んでばかりの下半身に脳みそが入ったダメ人間。

 やってる内にうっかり妊娠させてしまったのでなし崩し的に責任を取る事になったのが切っ掛けだったが、妻にした女達の大きくなっていくお腹を見て頑張ろうといった気持ちになった。

 

 その為、態度とは裏腹に訓練などは積極的に受けていたので、性能に振り回されず神聖騎の性能をしっかりと発揮できている。 異世界人の中でもかなり強い方。

 真面目にやっているので国内での評価も高かった。 地界攻略戦でも期待はされていたが、別の化け物と戦う事になり、死中に活を求めて世界回廊へと突入したが触手に捻り潰された。 死亡。

 

 ケルビム=クルパノドン――ケルビム級の神聖騎の一騎。

 人型ではあるが全体的に太く、がっしりした印象を受ける。

 火力に限れば神聖騎、深淵騎の中でも最高峰の性能を誇っていた。 反面、機動性、旋回性能は大きく劣っているので前に出るのではなく遠くから支援に徹する立ち回りが要求される。

 


 ただ 籌子ひさこ


 元大学生。 手簀戸と同様に召喚された事は良く思っていないが、必死に助けを求められた事とパパバシリオの懐柔策のお陰で天界の戦力として戦う事になった。 異世界人水準では平均的なのでそこまで強くない。

 無謀な突撃を敢行し、当然のように死んだ。 死亡。


 スローネ=サルコメア――スローネ級の神聖騎の一騎。

 これと言って特徴のない騎体。 裏を返せば癖も少なく扱い易い。

 性能も平均的なので総合力で見るなら微妙だった。

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