第728話 「惨劇」
一応は歓迎するべき状況なのだが――多いな。
専用の法衣を身に着けた枢機卿らしき奴が追加で三人現れた。
ヘリベルトとヘオドラを合わせて全部で五人。 追加で来た一人はヘオドラと同年代の子供。
全員、天使の憑依を済ませているのか光輪と羽が付いている。
「『信じられん。 その禍々しき気配、間違いなく魔剣』」
「『見た所、拘束されていない? 信じがたいが、聖剣と同様に選定された担い手と言う事なのか』」
「『馬鹿な! 魔剣は汚らわしい憎悪の結晶、人の身で扱える物ではない!』」
何か口々にそんな事を言っているがいちいち聞いてやる程、俺は暇じゃない。
一人いれば充分だし、死にかけのヘリベルトを確保すれば後は要らんな。
余裕があったらもう一人ぐらい残せばいいだろう。
――それに――
いい加減、魔剣を宥めるのも面倒になって来たんだ。
それにしてもお前等は一体何をやったんだ? 枢機卿の法衣を見た瞬間に魔剣が怒り狂い出したぞ?
グノーシスの連中が視界に入った時点で結構な怒り具合だったが、特に枢機卿が気に入らないのか元気よく殺せ殺せと喚き散らす。
第二形態に変形させて発射。 敵は即座に散開。
包囲して襲いかかって来る。
「『気を付けてください! 敵は権能に干渉して無効化してきますのよ!』」
『
ヘオドラの警告と同時に権能を更に展開。 効果範囲を広げる。
同時にもう一人の子供が表情を大きく歪める。 影響を受けたのは二人の子供だけ?――あぁ、なるほどと理解が広がる。
まともに権能を扱えるのは子供だけか。 後は単純に憑依――というよりは適性不足で権能を使えないレベルの天使しか扱えないと言った所だろう。
後は金魚の糞のように一緒にぞろぞろ入ってきた聖堂騎士共か。 全部で四人いる。
雑魚の掃討は済んだのでこいつ等を仕留めればこの砦の主要戦力は全部と判断して良さそうだ。
真っ先に突っ込んで来るのは四人の聖堂騎士で、枢機卿連中は後衛を務めるつもりなのか魔法を展開し始めた。
――何人か適当に相手をしろ。
俺がそう命令すると、サベージが割り込んで斬り込んで来た聖堂騎士を迎撃。
「くっ!? 何だこの魔物は!?」
ちなみにサベージは出番がないと思ったのか、魔法で姿を消してさっきまでホールの隅で死体を喰っていた。
流石に敵が多いので今回は戦って貰うとしよう。
サベージは二人程、聖堂騎士を吹っ飛ばしてそのまま追撃に入る。
残りは二人で枢機卿連中には雑魚の掃討を済ませた円盤を嗾けた。
仕留められるかは微妙だが、時間稼ぎぐらいにはなるだろう。
さて、減った所で向かってくる奴を仕留めるとしようか。
魔剣を第一形態に変えて、俺も踏み込む。
聖堂騎士は即座に左右に散開。 手近な敵へ魔剣を一閃。
大振りなので当然のように躱される。 後が閊えているのでさっさと片づける為にも、手っ取り早い手段を取らせて貰おうか。
大きな隙を晒したのでそれを見逃すような連中ではなく、首を取ろうと斬りかかって来る。
……よし、ここだな。
障壁を展開。 ただし、俺と聖堂騎士を閉じ込めるようにだ。
同時に魔剣の能力を解放。 柄から黒い炎が噴出する。 密閉された空間内なので躱しようがないだろう。
正直、大した威力じゃないので体勢を崩す為だけの物だが――おや?
凄まじい悲鳴が上がる。 二人の聖堂騎士は炎が余程効いたのか苦痛にのた打ち回り始めた。
そう言えば魔剣の付加効果があったか。 自分で今一つ、実感が湧かないのでない物として扱っていたのだが、これは思った以上に使えるのだろうか?
何とか痛みに耐えて起き上がろうとしていたが、相当効いているのかフラフラだ。
まぁ、楽になったからいいか。 二人を魔剣で挽き肉に変えてから障壁を解除。
よし、次だ。 どれにしようかと視線を向けると蠅が集るみたいに円盤に群がられている枢機卿が居たのでこいつにしようと狙いを定める。
どうも守勢に長けている代わりに攻撃にはあまり向いていなかったのか、光る盾のような物を出現させて円盤を防いでいたが破壊はできないので完全に釘付けとなっていた。
どうも防御中は動けないのかいい的だったので第二形態に変形させて発射。 展開した盾ごと蒸発させて楽にしてやる。 はい次。
次はヘリベルトを抱えていた奴だが、おや? 抱えていないな。
何処へ行ったのかと探すとその辺に転がっていた。 抱えながら防いでいる余裕がないと放り出されたらしい。 枢機卿と言うのは仲間思いだな。
エントランスホールを飛び回りながら、光る弓矢を連射して必死に円盤を撃墜しようとしているが、余り減っていない。
潰されたのは五、六個ぐらいか? 必死に逃げ回っている所を見ると、防ぐ手段はなさそうだな。
ならこれで良いかと、第四形態に変形させて円盤を増産。
追い回している量の三倍程を嗾けてやると即座に包囲された後、群がった円盤に斬り刻まれる。
円盤は執拗に枢機卿に群がり、落ちて来る頃にはもう原型を留めていなかった。
確認するまでもなく即死だな。 はい次。
「『この外道! 覚悟しなさい!』」
背に赤い光輪と羽を背負った子供が、同様に赤く輝く剣のような物を産み出して円盤を片端から叩き落し、俺に斬りかかって来る。 それを見ておや?と首を傾げた。
見た所、権能のようだが発現しているのか? ヘオドラは未だに気分が悪そうにしているが、こちらは見た所、自己に作用するタイプのようだが――扱えるのは影響範囲が自己かそうでないかで効果の出方が違うのだろうか?
それでも顔色はあまり良くないな。 一応は効いていると見るべきか。
ただ、速いだけで技量自体はお世辞にも高くないのだろう、強化しているだけで動き自体はそこまで良くないな。 適当に引き付けて障壁で防御。 光る剣は障壁に阻まれて止まる。
「『なっ!?』」
いや、何を驚いているんだ? さっき聖堂騎士を仕留める所を見ていなかったのか?
それとも攻撃に余程の自信があったのかは知らんが、障壁一枚で防げる時点で大した事がないな。 一応、三枚重ねていたのだが余計だったか。
取りあえず隙だらけだったので、第一形態に変形させて子供枢機卿の上半身をそのまま粉砕。 驚愕の表情を浮かべたままトマトか何かみたいに赤く弾け飛んだ。
「『カロリーネ!』」
ヘオドラが悲鳴を上げて強引に立ち上がる。
カロリーネ? あぁ、今弾け飛んだトマトの名前か。 心底どうでもいいなと思いつつ次を狙おうとしたがヘオドラが立ち上がった所を見ると動けるようにでもなったのか?
「『絶対に許しませんのよ!『
さっきから鬱陶しいな。 ヘリベルトが残っていればいいし、もう面倒だから死ね。
第二形態に変形させて即座に発射。
直撃してヘオドラの膝から上を消し飛ばす。 ふむと首を傾げる。
やはり自己に作用する物は阻害こそされるが発動は可能のようだな。 もう少し使えそうかと期待したが、思ったほどじゃなかったか。
やはり外界に影響を及ぼす方が集中力的な物が要求されるのだろうか?
もう少し検証したい所ではあるが、今回はその点が分かっただけで良しとしよう。
では、落ちているヘリベルトに色々と試すとするか。
邪魔になりそうな連中は皆くたばったので俺は手足を失ってゴミのように転がっているヘリベルトへと向かった。
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