第108話 湖底の建物探索 2

 我々探検隊はついに……じゃなくて、カイくんと私は建物を探索したすえ、目当ての部屋を見つけ出したわけなのだけれど……。


「よく考えると元が責任者の部屋でも、使い終われば大切なものは普通持ち出してるよね……」


「まっ俺はあくまで、他の部屋と比較して、有益な情報がある可能性が高いと言っただけだからな」


「あっ、逃げたズルいっ!」


「ズルくない事実だ、事実」


「むぅ」


 私の気持ちはさておき、実際カイくんを責めるのは筋違いなので、追及もそこそこに私は部屋の中を改めて見てみる。


 えーっと、あるのは机と椅子と空の棚に、空っぽの棚……。

 まぁ一度は一通り見ちゃったから、今更なにということもないんだけどね?


「ほらー、見てみてカイくん千年前の棚だよ〜」


「ああ、限りなくただの棚だな」


「えぇー、ほら!ちゃんと形保ってる部分とか凄くない!?」


「凄さへのハードルが低すぎないか」


 酷い、せっかく私が少しでも空気を明るくしようと、気を使っているというのに……なら、これならどうだ!?


「ほらー、見てみてカイくん!! こっちは千年前の机の引き出しだよ〜 割とスムーズに出し入れできるよー」


「うん、でも限りなくただの引き出しだな」


「わぁー、これ引き出しだけ持って帰って、アルフォンス様へのお土産にしちゃおっかなぁ」


「別に好きにしろよ」


 カイくんの反応がひたすら素っ気ない……ちぇ。

 悲しくて仕方ない私は、とりあえず目の前にある引き出しをガラゴロ、ガラゴロとひたすらに出し入れする。

 ……………あれ?


「おいリア、そろそろ引き出しで遊ぶのは止めて真面目に……」


「ねぇカイくん、この引き出し外からの見た目と、中の高さがちょっと違う気がするんだけど」


「なに?」


「うん、指で叩いてみても何か軽い音がするし、やっぱり二重底になってると思う」


 いやー、まさかこんなことをきっかけに引き出しの仕掛けに気づくなんて……正直自分でもビックリだけど。

 うんうん、なんでも試して見るものだね……。


「ちょっと見せてみろ…………確かに音が軽いというか、こもって響いてる感じがするな」


「でしょ?」


 カイくんは引き出しの底板を少し眺めると、ある部分を指さして言った。


「ここに小さな穴が開いてるから、何か引っ掛けて開けるんじゃないのか」


「なるほど!! あ、実はさっき見た棚の奥の方に、先が直角に曲った謎の針金があったんだけど……これ使えないかな?」


 いやー、錆びて真っ黒だし、何も使い道はないと思って放って置いたんだけど、覚えててよかった〜!!


「確かに使えそうだな、やってみろよ」


 カイくんにもそう促されたため、私は実際に針金を穴に差して引っ掛けてみる……。


「おっ、うまくいったな」


「うん……!!」


 やったね!!そして、底板を外したそこにあったのは……本と何かの鍵?


 中にあったものは二つで、年季の入った革張りの本と、全体が黒く錆びついた鍵だった。特に特徴的なのが、鍵の方には色褪せた緑色の石が嵌っていることだけど……。


「うーん、どこの鍵だろう……」


 本は本だからいいとして、鍵の使い場所はまったく見当が付かないなぁ。

 しかもこの石、少しだけど魔力が込められてる感じがするし……つまり、どこかしら魔術的な仕掛けがあるような場所になるわけだけど……むむっ。


「この建物には、この部屋を含めて鍵の付いた部屋なんてなかったよね?」


「ああ、そもそも隠し部屋を作るにも、隠し所がなさそうな構造だからな……恐らく別の場所のものだろう」


「やっぱり、そうだよね……」


 カイくんも言う通り、この建物は見て回った感じからいって、余分な空間なんてなさそうな構造だ。そもそもの間取りが、大雑把な造りの大部屋ばかりで、隠し部屋なんて造ろうものならすぐに分かりそうな感じだったからなぁ……。


「そもそも、さっき探索するついでに、風の魔術で建物の構造もチェックしてみたんだけど、そちらでも隠し部屋があるなら、当然あるはずの不自然な空気の流れも見当たらなかったからねぇ」


「は? お前、いつの間にかそんなことまでしてたのかよ……」


「え、だってそっちの方が、探索の漏れもなくなっていいでしょ?」


「そりゃまぁ、そうだけど……お前も多少は負担だろうし、消耗とか考えると事前に言って欲しいというか……」


 うーん、負担という程でもないけど……。


「分かったよ、カイくんがそういうなら、今度から気を付けるね」


「おう…………あ、よく考えるとその鍵の使い場所のことって、一緒にあった本に手掛かりでも書いてあるんじゃないのか?」


「あっ、確かにそうだね」


 カイくんにそう言われた私は、すぐさま本を手にとって開いてみた……ら、その瞬間本のページがボロッっと崩れ出した。


「っっ……っ!?」

  

 声にならない悲鳴を上げた私は、ほぼ反射的にその本を閉じたのだった。

 え……本、中身崩れた……こわっ……。

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