番外編 図書室での後の夜-後編-
「分かりますっ!! リア様はとっても素敵ですよねっっ!!」
アルフォンス殿下が黙りこくってしまって以降、すっかり静かになっていた部屋に突如我慢できなくなったという感じそんな言葉が響いた。
「ええ、本当に可憐で可愛らしくて見てるだけで癒やされると言いますしょうか……!!」
「明るく人当たりのよい性格なのもいいですよね!!」
最初の一人に続いて口々にそう言ったのは、いつも仲良くまとまっている侍女3人組である。
ああ、確かに彼女たちは特にこの手の話題が好きそうだったな……。
「あっ、でも……」
しかし明るい雰囲気から打って変わって、そのうち一人が何故か急に声を潜めた。
「残念なことをあげるとすれば……服でしょうか」
「ふ、服……?」
突拍子もないことを言い出した彼女に、流石に戸惑った様子の殿下。
気持ちは分かりますよ……私も何がなんだか分かりませんので。
「確かに!!」
「分かりますわ!!」
全然なんのことだか分からなかった我々とは違い、すぐになんのことであるか察したらしい残りの侍女二人は物凄い勢い同意をしだした。
「そう!! 確かに今の服も悪いとは言いませんが、リア様はもっと着飾ればより素敵になると思うんです……!!」
ああ、なるほどそういう意味か…… 。
「ぜひともリア様にはもっと華やかな服を着て頂きたいですわっ」
「そうそう、例えばドレスとか……!!」
しかし侍女たちが全く関係ない方向性の話で物凄い盛り上がっている。
殿下もそろそろ困っておられるだろうし、ここは一つ流石に
「リアのドレス姿か……」
だがそんな言葉を漏らしたのは他の誰でもない、まんざらでもなさそうな様子のアルフォンス殿下だった。
で、殿下……!?
「やっぱり殿下も興味がございますか!?」
「ぜひ見たいですよね、分かりますよっ!!」
「絶対に素敵でしょうからね!!」
殿下の返事に更に興奮してしまった彼女たちは、ますます勢いづいてそう言う。
「確かにいいな…」
「「「ですよね!!」」」
そしてそれに対してしみじみと頷くアルフォンス殿下と、声を
…………あの殿下?
「そういえば、この城にも丁度ドレスがあったはず……!!」
「これはどうにか理由を作ってでも着ていただくしか……!!」
「そうなるとリア様の服のサイズも採寸させて頂きたいところですね……!!」
「うむ、理由か……」
あ……これはもう、本格的にそちらのことしか考えてない感じですね……。
「例えば、ほらダンスに誘うなんてどうでしょいか?」
「この状況でダンスか……?」
いや、ダンス以前にこの状況でよく知らない女性にドレス着せたい談義をしている方がおかしくありませんかね……。
「いえ、どんな状況でも女性はダンスに誘われるのは嬉しいものですっっ!!」
それは流石に暴論では……?
個人的な好き嫌いもあるだろうし、好きだったとしても状況によってはどうかと……。
「そ、そうか……」
だから『そうか』ではないですよ……!? ああ……殿下の判断力が激しく低下している……。
というか、そもそものこの集まりの主題から内容がズレすぎではありませんかね……いや、もはや軌道修正は諦めていますがね……。
しかし殿下も元々はここまでアレではなかったのに…………なかったよな……?
「では、どのようにお誘いするのが一番自然か考えましょう!!」
「ええ、そうですわねー!!」
「そうしましょう!!」
「うむ……!!」
「………………」
そうして、侍女三人組と殿下の話は夜更けまで延々と続いたのだった。
これは……。
もうなんと言えばよいのやら…………はぁ……。
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