第37話 広いと意外な施設もある 2
「そういえば、明日はアレもくるな……」
ふと思い出したようにアルフォンス様がそう言った。
「えっ、なんですかアレって?」
何かしら重要そうなものであれば、それにこじ付けてダンスの話はなかったことにしたいなー!! ……なんてね?
「この城には週に一度、街から物資が運び込まれてくる日があるのだが……それが明日なんだ」
「そうなんですねー」
うーん、まぁそれもある意味重要なことではあるけど……。
多いのだか少ないのだか分からない
「もしリアの興味があるのであれば、その
「街ですか……」
それって私が最初に行こうとしていた、この辺で一番大きな街だよね。元々この辺りの土地勘はないので、詳しくどういう街かは知らないけどねー。……でもその割に、森へ行く前に地形や河川の情報はわざわざ暗記したので、無駄に詳しいという謎の状況というね……まぁ、そういうこともあるよねー!!
「彼らと一緒にいけば迷う心配もないし、何より安全だろう?」
うーん、別に安全面については全く心配ないし、地形も把握してるから迷う心配だって……あれ?
「……もしかして私一人だと迷うと思われてます?」
「事実、君は迷ってこの城に辿りついたんだろう?」
アルフォンス様から当然のようにサラッとそう言われてしまった ……。
えっ、いやでもアレは…………。
…………。
「…………ソウデスネ」
本当は物凄く反論したいけど、どうにか言葉を飲み込んで我慢することにした。
だって迷ったことは事実だし……。
だけど言い訳させて貰うと、嵐にさえ
あっ、でもよく考えると街にいって時間が無くなればダンスはなしですよね!?
やったー!!
「それじゃあ明日街に行ってみようかと思いますー」
気分が上向いたため軽やかな口調で私は言った。
「そうか、彼らが来るのは早朝だから行って帰ってきても昼過ぎ、遅くとも
そんな私をグッサリ突き刺すようなアルフォンス様の言葉。私の
「…………はい」
そうですよね、そうですよね……。
どっちも言い出したのアルフォンス様ですし、そんなことで流れるわけがありませんよね……。
「出来れば私も一緒に行きたいが……」
私が心中で悲しみに暮れていると、アルフォンス様が言いづらそうというか苦しそうな口調で、そんなことを口にした。
「別に来ればいいじゃないですかー」
若干落ち込み気味のため、私は深く考えずにかなりテキトーな返事をしてしまった。
「……君はあまり気にしてないかも知れないが、この容姿で出歩くと
「……なら隠せばいいじゃないですか」
「隠すと言っても布やマントでも限度があるだろ!? それにどうにか隠せたとしても、うっかり見られてしまえばどうなるか……」
ここまでいじけて雑な回答をしてしまっていたが、アルフォンス様のあまりに
あっ、これはちょっとまずいし悪かったかも……。
勝手に機嫌を悪くして雑なことを言ってたけど、アルフォンス様は今までに色々あったみたいだし、一つ一つ考えて接してあげないとダメだよね……。
これは私が悪かった、まず人としてよろしくなかったね。
うん、それじゃあ一旦反省したうえで説明説明っと……。
「えーと、根本的に違います。そうではなくて……私が言ってるのは魔術で隠せばいいという話ですよー」
はーい、反省した私は笑顔も割増で説明をお届けしますよ!!
うん、素晴らしい心遣いっ!! この切り替えの速さ、自分で正直凄いと思うね!!
「魔術で……?」
「はい、魔術ならうっかり弾みで外れる心配もなくて安心ですからねー」
とは言いつつ同格の相手以上なら状況次第で無理矢理ひっぺがされる可能性もあるけどねー。しかしこの辺に私と互角以上の相手なんているわけないし安心安全と言えるのです!! もちろん大精霊様は除いての話しだけど……。
「本当にそんなことが出来るのか……」
アルフォンス様は疑ってるというわけじゃないけど、やや
まぁ魔術のことも、私の実力も知らないのであれば仕方のないことです……。
ふふふ、私の魔術はちょうど先程大精霊様にすら、そこそこ通用すると証明された所なのですよ……!? しかもこの手の魔術なら大得意っ!!
「はい、できますよ。例えばこんな風に……」
私がある扉を示した後でパチンと指を鳴らした。するとさっきまで在ったはずの扉が消えて壁になってしまった。ようにアルフォンス様には見えたはずだ、残念ながら術者である私には術を掛けても見えたままなんだよね……。もちろん術がちゃんと掛かってること自体は、魔力の流れや感覚で把握できているんだけど。
「どういうことだ……!?」
案の定、アルフォンス様は驚いている。
ふふっ、その反応が見たかったのです!!
「魔術で隠したんですよー。扉自体はそのまま元の位置にありますけど、アルフォンス様の目には見えなくなったんです」
「なんと指を鳴らすだけで、そんなことが……」
「いえ、指を鳴らしたのはただの雰囲気出しで実質的には全く関係ありません」
「は……?」
「以前、いきなりポンポン魔術を使うと驚くからどうにかしろって言われて、考えた結果指鳴らしを練習したんですよね。それ以降人前で魔術を使う時は指を鳴らすなり他の動作をつけるなりするようにしていましてねー」
いやー、あの時は本気で怒られたなー。
小規模とはいえ、いきなり爆発を起こした私が悪いんだけどね? しかもちょっぴり驚かそうというイタズラ心もあったし……うん、なんか本当に悪かったね。
「…………」
もう一度指を鳴らす。魔術を解いたため彼には再び扉が見えるようになったはずだ。
「と、とにかく確かにそれがあれば安心なんだな?」
「はい、私が保証するので安心して下さいませ」
自分で言っておいてなんだけど私の保証って安心していいものなのかな……。いや、いいはずだ!! 私は凄い、私は天才、そんな私の言葉には圧倒的安心感があるはず……!!
「そうか……街へ行けるのか……」
そう呟いたアルフォンス様は、どこか信じられないような幸せを
まぁ嬉しそうなのは確かなので、そこは良かったなー。
「なんだか久しぶりに明日という日が楽しみだと思えるな……」
一つ一つの物言いが
あっ、でもこれは外出の方に気を取られてダンスのことは忘れてえる流れでは……? では!?
「何十年振りかに街へ行ける上に、ダンスにまで付き合って貰えるなんて……」
アルフォンス様の
仕方ない……こうなったら全力でダンスレッスンの記憶を思い出しつつ、出来れば街の書店でこっそりダンスの教本でも買おう。
表面上ではダンスを
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