第72話 一学期終了
学年一位。
またしても。
勉強というモノは過不足がない。
自身の実力以上も以下も出せない仕様だ。
ことさら勤勉というわけでもないけど、まぁ順当な勉強程度はしているし、暇潰しには最適解と言える。
で、何かというと、
「有栖川さんを特待生として迎えたく存じます」
校長室に呼び出されました。
緩衝材に凜ちゃんまで。
面白い見世物ではあったろう……祝福くらいはするだろうけども、どちらかと云えば愉快がっているのが実のところのはず。
「具体的には?」
「学費の免除。ならびに学内機構の優先権を」
「では有り難く」
そういうことに相成った。
別段学費が免除されるならそれ以上もないわけで、勉強が有益な結果をもたらすのは……はたして文明の所産か、出来心の皮肉か?
「生徒、有栖川陽子さん」
私は終業式の日に、登壇に立たされた。
特待生扱い。
その表彰のためだ。
殊更特別な事をした覚えもないのだけども。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
おお。
妬まれてる。
嫉まれてる。
ヒシヒシと零度の視線を感じ申す。
――こっちとしては、
「勉強出来て、だから何?」
って感じなんだけどなぁ。
言って通じないのも若さか。
アンタッチャブルではあるも、私が功績を挙げることで歪みが生じるのは、理性の埒外の問題だろう。
そしてこっちにはお行儀良く付き合う義理もない。
「それでは」
とロングホームルーム。
――当校の生徒としての自覚がどうの。
――休みだからとて気を抜くのはどうの。
――常に己を律しどうの。
そんな感じで一学期が終わった。
「さてどうしましょ?」
お兄ちゃんの手伝いだけどね。
そこは譲れない。
学校がなければお兄ちゃんの相手も増える。
アレのシスコンは病気だけど、それがカロリーとなって仕事に励めるのだから、私としても因果な渡世。
南無三。
「で、今日の処は……仕方ないか」
――何が? と問われればワンコの相手と慈しみ。
こればっかりは私の領域で、責任こそ発生しないも義理……というか友情に構築に於いて必要事項。
つまり、
「陽子さん……」
「陽子!」
「はいはい」
二人の頭を撫でる。
それでは行きましょうか。
――中略。
ショッピングモール。
百貨繚乱。
映画館でくつろいだ。
流行りの映画だ。
ハリウッド。
夏はアニメ映画が隆盛するけど、そっちはそっちで楽しみ。
「ですね」
と五十鈴。
「その時は……一緒に……」
と春人。
「でも特待生って凄いですよね」
別に必要ないんだけどね。
私は私。
過不足なく。
学費免除は素直に嬉しいけど、それで嫉妬を買うのはどうなんだ……と云う話でもあったりして。
スマホが鳴った。
夏も真っ盛り。
『今日の夕餉は素麺でいいですか?』
凜ちゃんからだ。
『楽しみにしています』
そんな返信。
凜ちゃんなら悪いようにはしないだろう。
「陽子さん……」
はいはい?
「あーん……」
アイスを差し出された。
「はむ」
一瞬の遠慮も憂慮も無く、私は春人の「あーん」を受け入れた。
こういうのは照れた方の負けだ。
「あは……」
笑む春人。
超可愛い。
その気になれば天下取れるんじゃなかろうか?
「てい」
ペシッと春人にデコピン。
「あう……」
「特別サービスね」
紅茶味のアイスをハムリ。
アイス屋さんで、アイスを食べている私たちでございました。
私が紅茶味。
春人が抹茶味。
五十鈴がミカンシャーベット。
それぞれに美味しい。
食べさせ合いっこ。
「夏休みも会える?」
「会おうと思えば」
普遍的事実。
「じゃあ会おうね!」
相も変わらず五十鈴はワンコの様だ。
愛嬌のあるイケメンさん。
春人もなぁ。
損してるよ。
私が言うなって話だけど(笑)。
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