第70話 神威の突撃


 授業が終わり、放課後に。


 校門前に大和男児が立っていた……というのもワイワイガヤガヤと当校の女子生徒が噂するモノで、いやでも目立つ。


 日本人らしい美少年。


 神威だ。


「陽子」


 穏やかに私を呼ぶ。


「……………………」


 思わず半眼で睨みました。


「何か用で?」


「デートしろ」


 さいでっか。


「それじゃ、春人、五十鈴、今日はこの辺で」


「うん……」


「わお」


 互いの心情の違いが面白い。


 春人は怪訝。


 五十鈴は興味だった。


「迷惑だから止めてよね」


 とは喫茶店での事。


 市立図書館のソレだ。


 備え付けにしては清潔で静謐な雰囲気を醸し出しており、ついで日替わりメニューも食欲をそそる。


 だいたいデートと言えば、此処かモール。


 図書館の方が人目に付かないので、神威と一緒の時は自然こっちを選ぶのが、私のジャスティス。


「迷惑とわかっていても、止められないさ」


 恐悦至極。


「コーヒー奢ってくれるのは嬉しいけど……」


「じゃあ良いよな」


 ――厚かましい。


 他者には言えないけど。


 心中でそう語り申す。


「あの二人は取り巻きか? 女子にも好かれているじゃないか。もう一人の方はちょっと嫉妬してしまうが」


「お友達です」


「言い様だな」


「だから便利ですね」


 この場合は――日本語に関して、である。


「恋仲か?」


「そうなっても不都合は生じない仲でしょうね」


 実際どっちも私には過ぎたる男子だ。


 在る意味、過不足ない過不足。


 トートロジー。


「夏休みは何か予定あるか?」


「お盆は」


「ソレ以外は?」


「明日は明日の風が吹く」


 桶屋が儲かる。


「お前は本当に……」


「幻滅した?」


「ビターな奴だ」


「甘い女じゃござんせん」


「そういうところがな」


 嘆息されました。


 然程かね?


 確かに性格は悪いけども。


「とにかく」


「うさぎにつの」


「たまには俺の事も思いだしてくれ」


「テストが終わりましたならば」


「学年一位だろ」


「照れる」


 頬を掻きます。


「ぶっちゃけ完璧過ぎね」


「そういうのはもうちょっと大人に成ってからお願いします」


「勉強出来て、優しくて、可愛くて」


 誰の話です……それは……。


 神威が私を過剰に想っているのは理解しましたが。


 南無三。


 大変な事態ですね。


 ハッキリ言って、私は別に狙って生きているわけもなく、そのような考えを周囲に誘導するように振る舞ってるわかでもございません。


 なんだかなぁ。


「で、本を読む気には?」


「あまりならんな」


「そうですか」


「そういうお前はゲームとかしないのか?」


「あまり感心も持ちませなんだ」


 活字狂いかな?


 そんな自己分析。


「たまには構って欲しいんだが」


「神威はモテるでしょ?」


「そうでもない」


「ご謙遜」






「――――――――」






 ボソリ、と呟かれ申した。


 さいでっか。


 別に私の責任でもない。


 面の皮の厚い私でした。


 思い詰めるのも良くは無い。


 南無八幡大菩薩。


「たまにはこうやってお茶くらいはしましょ」


「マジで?」


「都合が合えば」


 そこが誠に問題で。


 どっちかてーと、クラスメイトに心を寄せている私でござんした。


 ――ビッチなのかな?


 少しそんなことを思ったり思わなかったり……ていうかまぁ思っているのですけども。


 けれども、確かに……私は神威を疎んじている。


 そうしなければ、中学時代を想起出来ない。


 心臓に刺さった形而上のトゲは、無形の出血を促す……精神的な外傷の証でもあるのですよ。


 ムホホホホ。

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