第53話 学生ヤルタ会談


「僕と……五十鈴さんが……?」


「そう相成りますね」


「あう……」


 少し、学業が止まって、臨時の休日。


「小生が受けですか?」


「多分春人が受けだと思うけど」


「ていうかな」


 最後者はお兄ちゃん。


「内の妹に近付くな」


 ゴゴゴ。


 そんなオーラを振りまきます。


「私から友達を奪うので?」


「友達か?」


「春人も五十鈴も魅力的ですよ」


「あは……」


「わん!」


 可愛い!


 コーヒーを飲んで、そんな感想。


「そっかぁ……」


「噂ね」


 お兄ちゃんを引っ込ませて、ヤルタ会談と相成りました。


 まぁぶっちゃけた話、どうにか現状を適確に理解するための、一種防衛処置ともとれるのでしょけども。


「二人はどう思う?」


「エッチな目で……見られるのかな……?」


「小生は陽子氏に迷惑掛けても傍に居たいです」


「南無八幡大菩薩」


 どっちも重傷だ。


 ここまで派手に壊れた人材も……それはまぁ珍しく、なお修復不能な感じが全米に涙させるに能う処理能力の一端でもありまして。


「陽子は大丈夫?」


「傷なら無事息災ですよ」


「心の方は?」


「この程度ではとても」


 事実だ。


 別に斟酌することでも無い。


「強いんですね」


「無精なだけです」


 付き合う方が馬鹿らしい……っていうか、こんなことに真っ正面から受け……堪える人間なんて居るんですか?


 スルーが吉な気もしますけど。


 とまれ、


「まぁ敵になってくれるのなら願ったり叶ったりですけど」


「なんで……?」


 コクリ。


 春人が首を傾げた。


「小生が陽子を独り占めできるし」


「むぅ……」


 低く唸る春人。


 私としては、率直さが加点対象。


 今は学校ではないので、三つ編みおさげはしていない。


 ついでに伊達眼鏡も。


 春人は前髪をピンで留めて顔を出している。


 フリフリのゴスロリドレスが目に眩しい。


 五十鈴は簡素なシャツとデニム。


「で、イジメの対処案件なんだけど」


「報告はするべきでしょうね」


「セカンドレイプ……」


「主に春人ね」


 ――五十鈴に処女を奪われた。


 そんな内容だ。


 皮肉を通り越して侮辱の域に達している。


 当人に責任がないとは言えないけど。


 男子にエッチな目で見られるのが好きな春人さんでありますれば……それはそれはそれなりに、思うところもありまして……南無三宝。


「じゃ、凜ちゃんに」


「凜ちゃん……」


 とは春人。


「誰?」


 誰何する五十鈴。


「うちの副担任。日高凜先生」


「で、凜ちゃん?」


「さいです」


「距離感近くない?」


「知り合いだから」


「イケメンだったよね?」


「女子生徒に片っ端から告られてるらしいよ」


「あう……」


 何故そこで気後れするの……春人さん……?


「ラインのコメントを逆行させて、犯人を問い詰めてもらいましょ」


 その程度は大人に期待しても良いだろう。


「俺も参戦するぞ!」


「お兄ちゃんはいいです」


「いいよな!」


「関知しないで……って言ってるの」


「何故!?」


「話がややこしくなる」


「最愛の妹が虐められてるんだぞ!」


「元々大げさすぎるの」


「むぅ」


「あはは……」


「わんわん!」


 春人も五十鈴も思うところがあるらしい。


 いいんだけどさ。


「また明日からは通常営業だから」


「虐められたら訴えるんだぞ!」


「虐められたらね」


 ここまで突っ込んで火中の栗を拾う生徒がいるかは……甚だ怪しいけど。


「陽子さんは……それでいいの……?」


「今更だ~」


「ワゥン」


「可愛い可愛い」


 紅茶の髪を、優しく撫でる私でした。


 端的に言って『無敵艦隊』……そう呼べるはずで、何よりこんなにイケメンが揃うと、それだけで発言力増し増しな感があり申す。

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