第26話 ライン上のアリア


『スルーするなよ』


『しませんよ。別に、元より嫌いになったわけでもありませんし。それともそれはふりですか?』


 早速神威からコメントが来た…………ですけど、これはあまりに性急すぎるのではと思ってしまう今日この頃。


 たしかに誤解はとけたけど、だからって……ねえ?


 むしろだからこそなのか。


『ぶっちゃけどうなん』


『主語を明確に』


『アンデルスのこと……とか?』


『よいお友達ですよ? なかなか愛らしいでしょう? 私の自慢のお友達です。なんとも心地よい御言葉で』


 欺瞞を文字列に並べる。


 ま、このくらいの腹芸は。


 しばらく雑談に付き合う。


「惚れられてるんでしょうか?」


 この場合はクエスチョンマークが肝。


 断定をしないという意味で。


 そこまで自惚れもできないのも事実ですけど、なんかアプローチ過多な気がしませんでしょうか……?


 とはいえ、


「惚れてるの?」


 とも聞き難い。


「仮にそうだったとして……」


 こちらに返す言葉が何某か?


 それもまだ定まっていなかった。


 別に嫌いじゃない。


 けどラブリーかと問われると…………、


「それもまた無し……か」


 そう相成る。


「さて」


 宿題を進行。


 ラインと並行して。


『いつもあんな感じなのか?』


『だから主語を明確に』


『変装というか』


『陰キャで行くって言ったでしょ』


『そう聞いたがな』


 納得とは別問題と。


『面倒事は嫌いなのよ』


『わかる』


『神威はモテるもんね』


『てれる』


 さいでっか。


『浮ついた話とかないの?』


『告られたりはしたがな』


『さすがの一言』


 いや、本当に。


『そっちはお兄さんとか一緒なのか?』


『ま~ね~』


 アレはアレで何だかな。


 凜ちゃんと今いるし。


『うーむ』


『何よ?』


『いや、お兄さんもイケメンだしな』


『生まれの業でね』


 アレで色々苦労人だ。


 私は何も出来なかった。


『ブラコン?』


『ぶっとばすよ?』


 いや。


 本当に。


『失礼』


『分かれば良し』


 そこは妥協の余地も在り。


『ていうか私とラインして楽しい?』


『それなりに』


 それなりかい。


 ツッコミも野暮だろう。


 物理の問題を解く私。


「む……」


 ちょっと詰まった。


『今何してるんだ?』


『自慰行為』


 返信が帰ってこなかった。


 既読は付いたけど。


 とりあえず黙らせる事には成功したわけだ。


 しばらくして、コメント。


『ガチ?』


『嘘に決まってるでしょ』


 文面を信じたんかい。


『本当にやってたら誤魔化すって』


『だよな』


 然もありなん。


『今度の日曜、会えないか?』


『都合による』


『そこをなんとか』


『善処する、で勘弁』


『むぅ』


『それ。私じゃなきゃダメな系?』


『ダメな系』


 恐悦至極。


「南無八幡大菩薩」


 ボソリと呟いてしまった。


 これくらいの愚痴は……まぁ許容範囲ということで。

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