第3話【ブール国連学校No99エチオピア州分校】
エチオピア州タナ湖、ハバルタールから北北西へ20km、アフロ系イエス教の
広大な修道院跡にブール国連学校No99エチオピア州分校は新しく建設された。
『ブール国家連合』、通称[ブーレ]『ブール革命』以後、九カ国条約で、各国
GDPの数値を元に資金を拠出され運営されている、、表向きには。。
[ブーレ]本部は、革命以後、九カ国条約にて、「各国と平等に対峙する機関」と位
置付けされ、何処の国にも所属されない土地、、「南極大陸」に建設された。
人が生きてゆくには過酷な場所であることは、自ずとスパイ行為、情報の漏洩など
を防ぎやすい。
人間世界から隔絶された場所、それが「南極大陸」。
『ブール国家連合』基本原則は、以前の旧国連から引き継いだものである。
• 国際平和・安全の維持
• 諸国間の友好関係の発展
• 経済的・社会的・文化的・人道的な国際問題の解決のため、および人
権・基本的自由の助長のための国際協力
ブール歴2253年現在、法務部、政治部等の基本部局36、国際農務機関、」
国際金融調整機関等の各国間を調整する機関20が存在する巨大な組織である。
職員数2383人 世界各国に大小237個の分所を持つ、そして新しい
[ブーレ]に新設された、旧国連学校を進化させた、[ブール国連学校]制度は、
基礎教育から高度な研究機関までを網羅する、「幼、小、中、高、大、学院」
の一貫教育システムを敷く。
[ブール国連学校] 通称 [ブー学]は、世界各国に分校を設置し巨大施設化された、
研究開発機関として、特殊部隊 [国連隊] の駐屯地として、職員の宿舎として、
有事の際は、学舎を基地とし戦いもいとわぬ規模を維持そして拡大させている。
入学は、一般の入試試験、面接そして入念な遡行調査が行われる。
遡行 = 流れを遡る。という意味の通り、家系、取り巻く環境を調べ上げる、
これは、[ブーレ]の加盟国にも公表されてない数々の秘密機関の情報漏洩を防ぐ
為である。
入学者の授業料は、各家庭の経済事情を元に換算されるが、世界各国の国立の
教育機関よりも安い。が、しかし、、全生徒はブー学敷地内にて、寄宿制になって
いる、外出は土日、祝日(その国の祝日に沿うもの)
このハードルが高いせいもあり、一般の富裕層の子女の入学は稀である。
この寄宿制度を拡大解釈し、、保護者のいない、浮浪児等、親と生活できない」
子供を保護する、いわば、児童養護施設を補完する [星の家] を運営する。そしてこ
の施設及び人件費等の経費の大部分は、この星の秘密結社『ボバディ・メディスン』
が一手に引き受ける。
「ミクちゃんは、[星の家] 何期生?」
嫌に馴れ馴れしく話しかけるこのヤサ男、確か、自分より6期先輩の中等科歴史
教師、階級は同じ少尉の[真司・矢島]
[星の家]には高等部3年から入った、、まあ、学年、卒家(星の家を卒業する短語)
は先だが、[ミク・三ツ沢]は幼等部からなので、関係がいつも微妙である。
「44期です。」ぶっきら棒に返す。
「へぇ~~でも、、飛び級だからなぁ、、優秀なんだな、、確か入家は、幼等部だ
ったよねぇ」
[星の家] 入家の年齢が高い程、自尊心を高く持とうとする性質があるのか、
自分よりも早くに入家した者をライバル視する傾向がある。
親と一緒に暮らせた時間が長いか短いかの違いは、、この[星の家]での教育を
どのくらい”長く受けれたか”と反比例するのだ。
[星の家]の運営は、『ボバディ・メディスン』の一国の国家予算にも劣らない
莫大な寄付金からなっている。
幼少期から、個々の能力を精査・育成され、高い教養を養われる。[ブー学]
創成期こそ、教師、教授の人材に事欠いたが、約半世紀に近づく現在は、
優秀な卒業生により、世界中の一流の学校にも負けない実績を上げている
人材が集まる学び舎となっていた。
[真司・矢島]は、ジャポネ出身で、父を9歳の時亡くし、その後、精神を病んだ母
の死後、17歳でジャポネの [星の家]に迎えられた、貧しかったであろう、母子の
生活、学校にも行けない毎日、食べるための日々、彼はこの場所に来て、、報われな
かった日々を、どういう解釈にて肯定させ、今を迎えたろう。。ミクにも少なからず
共有できる感情が、あるにはあるが、、少々この男の競争心には辟易している。
「じゃあ、、俺の隊のディアルと同期か! あれ? 奴も確かジャポネ
出だよな」
[マリア・ディアル] この名前の響きを聞くと、少し苦い気持ちになるミク。
同じ44期ジャポネ国 No01 東京分校出身者である。
「さすがブー学No01東京 一番最初に創られた名門だな、飛び級が二人もいる
なんて、勤勉なジャポネ人の性質かね~~♫」
[マリア・ディアル] は生まれてすぐ、ブー学・東京分校の門の前に置き去りに
されていた。
春先で暖かい日だったらしい、包まれた毛布の中に「マリア」と書かれた紙が入っ
ていた。
苗字「ディアル」は、当時の寄宿舎の舎長のものだ。これは苗字の主の子供に
なるということではなく、ただ単に選びやすいという事で創成期からの慣習と
なっているものである。
ミクが幼等部に3歳の時入所した、マリアと同じ4人部屋で、二つ並んだ二段ベッ
トの右の上がミク、下がマリア。
当時、部屋ごとに生き物を飼っていた、ミクの部屋は、オスの猫だった。
4人部屋といっても、男の子が二人とマリアの3人の部屋にミクが入る。
初めての女の子のルームメイトになってマリアは心のそこから喜んだ。
一緒に猫を可愛がり、一緒に勉強したり、一緒に眠れぬ夜に夜空を見上げ涙を
流した。
早くから[ブー学]にいたせいもあり、マリアにとってミクは妹のような存在に
思えるようになった、ミクの飛び級での学士号修得も、優秀だったマリアのお陰
といっても過言ではない。。が、、しかし、、、。
「ヤァ~~~ン♫ ミク~~~♫ 」長い廊下の端から、大声で叫びながら走ってく
る、遠目にも体のくびれがわかる見事なボディーの持ち主。
[マリア・ディアル] が一目散のやって来た。
「ウザい、、奴が、、襲って来た」
黒髪を三つ編みにし、後ろで結ぶ髪型、、よくも毎朝器用にセットするもんだと
思ってた今だに変わらぬ精巧な作り、相変わらずの豊かな胸、ムンムン香る
オンナの色香、、、全ての男達を復活させる天然のボンキュッポンガール
だけど、、精力の強い『百合のひと』。
「ミク、会いたかった~~♫ もう一緒にアフロ入りしたかったのに先に行っ
ちゃうんだもん」
甘ったるい声を出しながら、抱きついてくる、、精力の強い『百合のひと』
「マリア、、ごめん、、近い」
マリアを好きな、男にどれだけのイジワルをされてきたろう、
『私カワイソウナ、、ミク』。
「何? 冷たいっv ミク、、変わった! マリアに冷たい・・・
わたし生きてゆけない」
「もう!! マリアーーあんたねえ、ガキじゃないんだから、もうあたし
たちは、今日から自分たちの生徒達を育てあげるべく任を受けた、聖職者よ!!
しゃっきりしてちょうだい」
「まだ就業前だし~~生徒もいないし、、少しぐらいいいじゃない」
この女に、どれだけ寝床を襲われた事か、お陰で、深い眠りにつきながらも危険を
察知できる「サムライ」の能力が身についた。
「私、始業式の前に、ドクのデスクで昨日の報告をしないと行けないので
行くわ、、じゃねマリア、矢島パイセンも、諸々よろシクです。」
「えぇーーーじゃあ今夜、、帰りご飯しようよ~~」
マリアの言葉が急激に遠のく程の長いリーチを生かした豪快な歩き走りで、
精力の強い『百合のひと』から逃れた。
ドクター[イアン・マッスル]は普段研究室にいる、見た目は、浮浪者と呼ばれても
仕方ない、実に汚い格好をしているのだが、理化学、工学はもちろんの事、哲学、
考古学などあらゆる専門機関の研究結果から導ける、”次代の進む方向”を模索する
役職についている。
このブー学 No99 分校の最高権力者といっても過言ではない最重要人物。
「ミク・三ツ沢、、入ります」
ドクの部屋は、ブー学敷地のど真ん中、地下4階にある200平米もある、、
も豪華な部屋なのだが見てくれが汚い格好のイメージの通り、部屋も色んな
発明途上のガラクタが散乱している。部屋の一角には”アジス・アベバ”で活躍した
[ペイジ]の小部屋もあった。
「おう、、待ってたぜ、、ミク 昨日はお疲れだったな」ドクは、テレビの
ニュースを見ながら迎え入れた。
「しかし、キリング家のあの変態親子、行方不明ってどういう事だ、報告書は
読んだが、映像に映ってないって事は、オフノイズ・キャンセラー(監視カメラ等の
映像に妨害電波を送る装置)を使えたって事だ、どっかの諜報機関て事になるが。。
お前の報告書に目を通すと、革ジャンを着たマッチョ軍団っ、恐らく、
ゲイ集団であろう」
「コホん・・・・」ミクが、一つ咳払い。
「まあ、ゲイではない俺にはとんとピンとこなくて悪いんだが、、、おい、、
ペイジ、、その後の足取りは取れたか」
「・・・・・」返事がない。
「足取りは取れないか・・・昨日の流れだと、ユーロのフィーツ・エルダスの手の
者となるなぁ」
「エルダス、、理解に苦しみます、[黒髪の少年]の神経ガスを浴びても、
ただ一人影響を受けず、そしてあの千里眼のような能力、、異能の者ですね」
「ああ、、こっちで奴の経歴をあらったんだが、ユーロ国[MI11]の中央アフロ方
面情報部主査長っていう通り一遍の情報しかあがったこない、情報後進国の
ザル・ユーロにしては珍しいこった。」
鼻の穴に人差し指を入れながら話すドクから目線を外しながら話す、、ミク。
「エチオピア州を牛耳る、キリング家の動きはどうですか?
身内を連れ去られて黙るような奴らではないでしょうが」
「俺たちが情報を掴めないんだ、あんな街の悪が掴めるわけは無いだろう、、
さてお前に伝える情報、一つ目は、昨日の[黒髪の少年]は息を取り戻した、
一時は血圧も下がってやばかったが、ウチの優秀なメディカルチームが助けた
とりあえずは、隔離ルームで体力の回復を待ち、それから事情聴取だな」
[ブーレ]がこの[黒髪の少年]を確保した事実はトップシークレットだ、
この人兵器を製造した組織は、今頃躍起になって、情報を漁っている。
「今回のケースだと、、怪しいのは、、、、ジャポネ以外だな」
「・・・ひろっ・・・ドク、それは広すぎますよ、、、
次代を読みきれてなさすぎる。」
核兵器のような大型の大量殺人兵器は、現在の世界情勢では意味がなさない事は
常識として通っている。
【大型の大量殺人兵器意味なーいの事柄】
1ーレーザー光線の射程の長距離化により、
ミサイルの機動性では目標までたどり着かない、どころか
自国領土からミサイルが大気圏を抜ける前に落とされ、
自国が多大なる被害を受ける。
2ー放射能探知機の性能向上
『1ーレーザー光線の射程の長距離化』が、求められる兵器のクオリティーを
変えてしまった、21世紀に影響力のあった、遠隔操作のドローンも、ハイスペック
になった”レーダー”と”レーザー”によって只の無力な標的となりはてた。
[ブール革命]以後、九カ国は、各々に武器を製造開始、以前のように、北米亜の
軍需産業が牛耳っている業界ではなくなっていた。景気がどうこうという事で、
戦争を始める時代ではなくなったのだ。
利益を生まない行為に、人も金も消失する蛮行を行う愚か者は、
ありがたい事に各々の国の中で排除された。
そして、今のトレンドは、間違いなく[人兵器]である。求められるものは、
『敵国の要人をどう排除できるか』
その国を動かす、『個人』を抹殺するだけで、政情はガラリと変わる。
[黒髪の少年]の存在は、噂でしかなかった [人兵器]の、初の成功例であると
言っても良いだろう。
「まあ、、確かな情報では無いのだが、中東国の『寄生虫』を使った
[ゾンビ・オン] そして、南米国の『合成麻薬』による洗脳[マースト]、、
この二つは、もう完成してるとも聞く、、」
中東国の[ゾンビ・オン]南米国の[マースト]共々、標的人に注入して自殺を
実行させる代物であった。
[黒髪の少年]の能力は、『個人』の殺戮には規模が大きく、一時代前の、
大量殺戮兵器である事は間違いない。
二人は、昨日の惨劇を思い出し、各国の思惑を憂う。
「まあ、、なんだ、、こんな兵器を作ってくれたお陰で、、ナノテクのスーツを
本格的に製作する事を決めたぜ俺たち[ブーレ] は、、この科学の力で、九カ国を
圧倒しなきゃいけないんだ、、人類を救うのは、愛情の先にある
科学力さ、、俺たちの科学の力は、愛の力なのさ。」
語りながら、自分に酔いだしたドクター[イアン・マッスル]をしばし放置、ちょっ
と間をとってミクは質問した。
「ええ、、なんか、他に伝達事項ありましたでしょうか?」
「・・・ああっ、、昨日の、キリング家で、ほら、、レイプされそうになった
少女、、身元がわかった、、名前は」
ミクは、急いで [エアータブレット] を出し、メモをとる。
[メロ・ガルシア] 女、5歳、出身はソマリア州ペンタゴ、親は、母だけだな
[クルワン・ガルシア]9人兄弟の8番目、、
「検査の結果、まだ、処女だった」
ミクは 少女の純潔が無事だった事に、グッ込み上げるものを、ガッと堪える。
「9人兄弟の8番目!?、、ドク、、他の子は大丈夫でしょうか?」
「心配するな、ソマリアのブーレ分所からエージェントが行く予定だ、
ソマリアには、まだ [ブー学 ] が無いので 収容するならば、ここエチオピア
だ、ミク先生よ、、お前の後輩であり、生徒である、子供達をよろしく頼むぜ。
波乱万丈の新学期になるぜ、、」とその時、ドアを叩く音がした。
『コンコン』
「おっきたな、、入れよ、、」
ドアを開けて、入ってきた男をみて、ミクはしばし呆然とした。
「おはようございます。」
「しばらくぶりだな、、ロン」
ブール国連学校、総長 [ロン・坂本] ブー学No99エチオピア州分校に突然現る。
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