第七章 黄金の悪魔の禁術 編
第201話 忙しい祭りの前
第七章 黄金の悪魔の禁術 編 がスタートです!
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甘ったるい香水やお香の匂いと、酒のアルコール臭と、汗のにおい、そして、激しく混じり合った独特なにおいが充満している部屋の中。髪を乱した裸の女は、限界を迎えた男の身体の上から降りた。
ベッドやソファの上には、汗だくで息を荒げた男が数人横たわっている。
部屋の中にいる女性はたった一人。まだまだ余裕そうに笑みを浮かべながら、今まで交わっていた男の隣に横たわった。白いシーツを身体に纏う。
紅い口紅を引かれた唇を嗜虐的に吊り上げながら、ほっそりとした指を男の胸の上をスゥーッと這わせる。
「あらあら。これでもう終わりなのかしら?」
「も、もう無理だ。動けない」
「満足したかしら?」
「ああ満足だ。お前は今までであった中で一番最高の女だ!」
「ふふっ。それはどうも」
唇をチロリと舐めた女は満足げに微笑んだ。
しばらくすると、部屋の中にいた男たちが復活し始めた。顔をしかめて起き上がる。
「また私のお店に来てちょうだい。たっぷりとサービスするわ」
「その分金を払えと?」
「当たり前じゃない。美味しい料理が食べられて、私を指名してさらにお金を払えばこの通り。私ほどの女を抱けるのよ。安いものだわ」
「確かにな。そうかもしれん」
ベッドに寝転んだ男は、隣に寝る裸の女を抱きしめる。
「そう言えばお前は祭りのコンテストに出るんだってな」
「そうよ。店のオーナーがどうしてもって言うから仕方なく。あぁー怠いわぁ。でも、私の美しさを持ってすれば余裕よ。私に票を入れてくれたら、次回サービスしてあげる」
「するさ当然。なあ、お前ら!」
他の男にも賛同を求めると、弱々しいが下賤な笑みを浮かべながら男たちが頷いた。
あいつらをまとめている自分は偉いんだぜ、と言わんばかりに女性を抱きしめる男が自慢げに笑い、女の唇を指で撫でる。
女は男を楽しませるようにチュパチュパと音を立てながら指をしゃぶった。
「そう言えば、他にも良い女が出るそうだな
「何か言ったかしら?」
「
「当然の報いよ」
「正直に言っただけだろうが。聞いてるぜ。お前、コンテストの予想だと二位なんだってな! 一位はソノラって女が、ぐぅっ!?」
ボクッと女性の強烈な肘撃ちが男の鳩尾にめり込む音がした。ゲホゲホと男は咳き込み、痛みに悶え苦しむ。
「興が冷めたわ。帰る」
冷たく言い放った女はシーツを放り出し、下着をつけ始め帰る準備を始める。
真顔。瞳には怒りが宿っている。
「ま、待ちやがれ!」
「何? 私じゃなくてあの薄汚い女と寝ればいいじゃない」
「俺はお前がいいんだ!」
「ふぅ~ん。そうね、私の言うことを何でも叶えてくれるのなら考えてあげる」
「一個だけなら何でも叶えてやるぞ。だからまだ帰るな!」
女は下着を着る手を止めた。あざとく人差し指を頬に当て、何かを考え始めた。
そして、ニヤリと唇を吊り上げて笑った。
「なら、ソノラっていうダッサいクソ女を消して」
「……そしたら、また俺たちの相手をしてくれるのか?」
「ええ。約束してくれるなら、今からまた相手してあげるし、成功したら無料で私を抱かせてあげる。どう?」
女が挑発的に男たちを見下ろすと、ニヤニヤと下賤な笑みを浮かべた男たちは頷き合う。そして、リーダーと思しきベッドの上の男に視線を向けた。部下たちの視線を受け止めた男は女を手招きする。
「来い。前報酬だ。丁度生贄の女が一人欲しかったところだ。ソノラって女は生贄にちょうどいい」
「ふふっ。しくじったら承知しないから」
「しくじらねぇよ。早く来い。三回戦目か四回戦目かわからねぇが、今度こそお前にヒィヒィ言わせてやる」
「あら。やれるものならやってみなさいな。でも私、ヒィヒィ鳴いて懇願する男が大好きなの」
好戦的な女はベッドに上がり、男と絡み合い始める。
複数の男たちもベッドに上がり、参加し始めた。激しく混じり合う男女の音が部屋に響き渡る。
女が一人で相手をする男たちの右の鎖骨の辺りには、全員共通したコウモリのような黒い翼の紋様が刻まれていた。
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音もなく俺はある建物に侵入した。住宅街にある賃貸アパートの一室だ。
部屋のドアや窓は閉め切られ、部屋の中には異様な臭いが染みついていた。空気中を漂うカラフルな煙が臭いの正体だ。幻覚・興奮作用のある薬物の煙。麻薬の一種。
俺は空気を吸い込まないように身体を風で覆い、中にいた奴等を無言で眺める。
瞳孔が開き切って、陶酔した表情の男女たち。へらへらと笑ったり、壁に向かって意味が分からない言葉を呟いたり、立ち上がってクルクル回ったり、奇怪な行動を繰り返している。
無造作に落ちているのは剣や槍などの鋭利な武器の類。
彼らの前に姿を現すことなく、事務的に塵一つなく葬り去った。彼らの荷物も全て。
痛みすら感じる前に死んだだろう。
「こちら白龍。目標の殲滅を完了」
『はーい。お疲れ様』
「次のターゲットは?」
『今のところないわ。待機しておいて』
ファナに、了解、と答えて、俺は部屋を後にする。
背中に龍の意匠の黒いフードを被り、顔には白いお面。暗部スタイルだ。
たった今、俺はテロを企てていた犯罪者の一派のアジトを壊滅させた。
親龍祭が数日後に迫り、王都には沢山の観光客が集まっている。
今年はヴァルヴォッセ帝国の皇帝も来ることが公になっており、多くの人の関心の的だ。
祭りを楽しみたい人が多い中で、極々僅かな奴等は、こういう機会に自分たちの力をアピールしようと考える。早い話が犯罪やテロだ。
裏世界では、貴族を狙ったテロから、大量無差別殺人まで、いろいろな計画が流れ聞こえてくる。それを俺たち暗部はこそっと静かに潰しまわっているのだ。
祭りの期間中は世界各国の要人が集まる。テロが起きてしまったら、国のメンツが丸潰れだ。そして、万が一要人が怪我をしたり亡くなったりしたら、最悪の場合戦争になる。
それは何が何でも防がねばならない。
「というか、多くないか」
俺は念話でファナに愚痴る。
『仕方がないでしょ。こういう時は馬鹿が多くなるんだから』
「昨年に比べても多いと思うけど」
『それは帝国の皇帝に言って! 帝国を怨む王国民はとっても多いんだから。皇帝を殺したい人なんかいくらでもいるわよ』
そうなんだよなぁ。長年帝国とは戦争を続けており、王国民の中に負の感情が根強く残っている。
帝国民を皆殺しにしようとする過激派がいることも事実だ。
そして、その逆もしかり。
『王国民を殺して、皇帝の目に留まりたい帝国民の馬鹿もいるのよね』
「そうだな。大規模な組織だったらわかりやすいのだが」
『ごく少数だったら私たちでも気づけないわね』
そこが問題だ。一人とか二、三人で行われたら、俺たちには防ぐことはできない。実際、何件か事件が起きているみたいだし。
「小さな事件は騎士とか警備隊に任せるしかないか」
『そうね。一つでも数を減らすことが私たちの仕事よ。あと、王族や要人の護衛』
「嫌だなぁ……」
『ふふっ。頑張りなさい』
ファナの楽しげな声を聞きながら、俺は闇夜に包まれた王都を飛び回る。
それから俺は、犯罪者が潜伏していた五か所のアジトを壊滅させた。
<雰囲気がぶっ壊れます。雰囲気に浸りたい方は、しばらく以下を読むのはお控えください>
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作「ぜぇ……ぜぇ……頑張りました。ちょっと息を整えさせて……」
虹「ちょっとエリカ~! 目も耳も塞がないでよぉ~! 話の内容が全くわからないじゃん!」
メイド「姫様にはまだ早いです」
虹「エリカのケチ! 簡単に話をまとめて教えて~!」
メ「そうですね、ソノラ様が狙われているということと……」
虹「そして?」
メ「旦那様が格好いい! ということでした。流石私たちの旦那様」
虹「ズルい! まあ、ちゃんと『私たち』って言ったから許すけど。いいもんいいもん! この章で私は登場するもん! 待っててね、シラン様!」
メ「早くお会いしたいですね。ヒース、早く向かいましょう」
虹「うん、エリカお姉ちゃん!」
作「では、本日のゲストは……って、あれ? 誰もいない!? 呼吸を整えている間に終わった? えーっと……次回もお楽しみに!」
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