第六夜・裏世界に巣食う老人
メッセージのやり取り
『千枝。ごめんね、心配掛けて』
『あ! 亜久斗君!?』
『こっちもようやく落ち着いてきたから、会いたいのだけれど……』
──メッセージが途切れた。
既読表示になってはいたが、千枝からの返信がこない。もしかしたら、返事に困っているのかもしれない。
間が空いたので、僕は不安に駆られてしまう。
もしかしたら、もう僕のことなど想ってくれていないのかもしれない──。
──などと思っていると、メッセージの通知音が鳴った。僕はすぐさま、携帯電話に手を伸ばした。
『やったー!』
どうやら、千枝は喜んでくれているようだ。
『今日、会えないかな?』
『えっ。今日? 会えるの?』と、千枝。
『うん。何時もの公園で待っているから』
何時もの公園──僕の頭に思い浮かんだのは、近所にある広場公園。遊具は公園の端っこにすべり台とブランコ、砂場があるだけで、大半は走れるスペースになっていた。
そんな公園に、僕らはよく学校帰りに立ち寄ってお喋りをしたものである。
『分かったわ。何時頃?』
千枝からの問いに僕はチラリと時計を見遣った。
まだ朝早い時刻であったが、移動時間等も考えて算出したいところである。
『お昼頃かなぁ〜。十一時頃は?』
『何時でも大丈夫。近いし』
『分かった。じゃあ、その時間に……』
──こうして僕は、最愛なる千枝と約束を取り付けることができた。
既に死人と化し、幽霊となった僕はいったいどの面を下げて千枝と会えば良いのだろうか。
悩みつつも、約束の地へと向かった。
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