第404話 一進一退



武装ロイドを覆っていた黒い霧が消えていた。

!!

真っ黒の機体が見える。


もしかしてダメージを与えれたのか?

アニム王や騎士団員たちが少し前のめりになり見つめる。

その武装ロイドに向かって龍が落下していく。

・・・・

金色の龍がすべて地面に消え、土埃が舞っている。

しばらくすると、その土埃から黒い龍が出現。

そのままフローラに向かって高速で飛んでいく。


フローラも防御魔法を即座に展開。

その反応は十分間に合うものだった。

だが、その防御壁を突きぬいて、龍がフローラを食べていく。

!!

即座にレアがその黒い龍の中へ飛び込み、フローラを救出。

黒い塊から出てきたレアを見てアニム王は驚いていた。


レアの左腕が無くなっている。

フローラも右足と左腕が無なっており、2人とも身体が火傷の後のようにただれていた。

レアはフローラを抱え、フラフラと歩いて来る。

セレネーが急いで駆け寄り、回復魔法をかけていた。

「レ、レア様・・」

セレネーが泣きそうな顔でつぶやく。

・・・

・・

アウラ、メリッサ、エリス、フローラ、レアもなんとか無事に回復できたようだ。

だが、セレネーが立てないほど疲労。

セレネーはすぐに魔力回復薬を飲む。

「・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

!!

まさか、回復できていない?

セレネーは不安そうな目線をレアに送る。


フローラたちも同じように魔力回復薬を飲んでいたが変な感じがする。

自分の身体を動かして不思議そうな顔を見つめ合う。

「フローラ・・気づいたか?」

アウラが言う。

「えぇ、身体はどこも不具合ないのですが、魔力が回復していません」

「あぁ、私もそうだ。 魔力がなければ技が使えない」

メリッサもつぶやく。


遠くで見ていた若い騎士団員がつぶやく。

「レア姫様といい、ロイヤルガードの人たちといい、すぐに完全回復できるからって無茶してるのかな? もしかして痛みも感じないように出来ているとか・・」

ゴン!

全力の拳が飛んで来た。

「バカか、貴様は!」

「・・・」

若い騎士団員は殴られた痛みで声が出ない。

「あのお方は、イメージでは怖いお方だが、仲間のために自らが傷つくことは当たり前と考えておられるお方だ。 痛みは普通にあるとおっしゃられておられた。 ただな・・コントロールするのだそうだ」

若い騎士団員が不思議そうな顔を向ける。

「今、見えている笑顔が次の瞬間に無くなってしまう、それに比べたら痛みなど気にならないそうだ・・ワシも試してみたことがあるが・・無理だったな。 とにかく、ワシなどの見えている世界とは違うお人だ」

若い騎士団員は遠くを見る目線で、レアたちの方を見つめていた。


アサシンの乗る武装ロイドがレアたちのところに近づいて来る。

「フフフフ・・アハハハハ!! この暗黒霧あんこくむによるダメージは、薬では回復できませんよ。 人を喰らえば回復できますが・・アハハハ・・」

アサシンは高笑いをする。

「ほんっとに耳障りですわね。 でも、これで打つ手なしですわ」

レアが悔しそうに言う。

レアは高位回復系以外すべての系統の魔法を使える。

だが、フローラのラグナロックグラムでダメージを与えれないとなると、自分の魔法、雷霆らいていケラウノスでも難しいだろうと判断した。

無駄に魔力を消費するわけにはいかない。


レアたちを見ながらルナがつぶやいていた。

「敵の魔素・・少しだが小さくなっているな。 ダメージは与えれるということか・・」

アニム王がレアたちのところに来て微笑む。

「無事でなにより。 レア姫、それにロイヤルガードの皆さん、ありがとう。 少し休むことができましたよ。 後は私に任せておいてください」

レアはアニム王に挨拶して後方へ下がる。

もはやレアたちにできることはない。

もし、アニム王が傷ついたら即座に回復するくらいしかできないだろう。

そのためにも無駄な魔力は消費できない。

そう思い、レアたちは素直に後方に下がっていった。

・・・・

アニム王はその後、アサシンに対しレイソードによる攻撃を繰り返していた。

アサシンから繰り出される攻撃を防ぐと、周りに被害が及ぶことがある。

すると倒れた兵士はすぐに飛行船に運ばれ、神聖術の魔法を施して事なきを得るといった具合だ。

そういったことを繰り返して、時間が過ぎていく。


アサシンもアニム王も、どちらも踏み込めないでいた。

少し離れたところでの体力の削り合い。

踏み込めば一気に決められるかもしれないが、おそらくアニム王以外にダメージを与えられるものはいない。

アサシンの攻撃を防ぐことは、皆どうにか出来ているようだが、ダメージを与えるというところまでは程遠い。

時間ばかりが過ぎていく。


アニム王は少し焦り始めていた。

早く邪神王のところへ行かなければいけないというのに・・。 

こうなったら私があの武装ロイドに接近して致命傷を与えないとダメなのか? 

だが、もしそれほどのダメージを与えられなければ、私ともどもこの世界が滅ぶ。

それに邪神王との対峙のために魔力はあまり使えない。 

ミランがいてくれたら・・。 

アニム王はそんなことを思いつつ戦っていた。

アニム王はバックステップして、呼吸を整える。

そんな時、フト上空を見上げた。

意識してのことではない。


◇◇

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