第401話 帝都の結界が破られた



<アニム王国帝都>


王国の重鎮や騎士団長などを集めて話し始める。

「今はまだ変な感じでしかないが、凄まじいエネルギーを伴った何物かがやってくる。 そして、それをこの帝都で受け止めたいと思う」

アニム王の言葉に皆驚く。

「王様、それは・・」

まずは騎士団長が口を開いた。


アニム王が言う。

「うむ。 なるべくこの星の住人たちに迷惑をかけたくない。 騎士団長、帝都周辺住民、地上も含めてだがすぐに避難させてもらいたい。 どうやらこの魔素の塊はまっすぐにここに向かって来ているようだ」

戸惑いながらも皆行動を開始していた。

アニム王は窓の方を見る。

まだルナが外を見ていた。

レアたちは壁際で休んでいる。


アニム王はゆっくりとルナに近寄って行く。

「ルナ、どうしたのです?」

ルナが空を見ながら言う。

「アニムよ・・この嫌な魔素の塊だが、ワシでは力になれそうにない。 似たような属性を持っているようだ。 相手にダメージを与えれる自信がない」

ルナが少し震えているようだった。

「ルナ、私たちも聖属性の武具をたくさん作らせています。 何とかなるでしょう」

アニム王は自分に言い聞かせるように話していた。

先程よりも強烈に感じる魔素の圧力。

暗い闇に吸い込まれそうな感じがする。

それがどんどん大きくなり近づいて来ていた。


◇◇


完成型武装ロイドに乗っているアサシン。

「フハハハハ・・・これは凄い。 人の命を喰らい、さらに強くなったようだ。 私でも手に余るエネルギーです。 後少しもすれば、帝都に到着できそうですな。 モレク猊下、私の働きを捧げます。 アハハハハ・・・・」

アサシンの搭乗する武装ロイドは急速に帝都に近づいていた。


◇◇


完成型武装ロイドの接近に気づいて10分ほど経過しただろうか。

帝都や王宮にはほとんど人が残っていない。

帝都住民と周辺地上にいた住民は避難していた。

ゲートを通じて他のギルドのある地域に移っている。


優とレイア、じいちゃんとばあちゃんは帝都に待機。

嫁はお義母さん、そして颯や凛と共に避難していた。

優がどうしても避難してくれと押し通した。

優も戦うわけではなく、騎士団と一緒に王様の援護に徹するという。

嫁が危ないからと注意すると、騎士団員の一人が「我々よりも強いですし、直接戦闘に参加にはなりません」と念を押すと、しぶしぶ避難してくれた。

凛と颯は大泣きだったようだが。


アニム王は、帝都周辺の森のところの開けた場所で立っていた。

アニム王自らを標的にするような感じで立っている。

その後方に騎士団と支援部隊が待機。

アニム王と後方支援部隊の間くらいだろうか、レアとロイヤルガードが待機している。

アニム王が上空を見つめる。

もう誰でも感じとれるだろう。

結界の外だと言うのに、その強烈・凶悪な魔素の圧迫感。


待機している部隊の中の誰がつぶやいたか、言葉が飛んだ。

「・・な、なんだこれ。 気持ち悪いが、何か変な安心感というか・・わからない」

優たちも感じていた。

優はレイアの方を見て、また上空を見る。

レイアが優を見て聞く。

「どうしたの、優」

「うん、何だろう・・レイアが横にいるのに、この変な塊にもレイアを感じるんだ」

そうつぶやいていると、結界に衝突する音が聞こえて来た。


時間は21時過ぎ。


ドーン!!

・・

ドーン!!

・・

パキ。

パキ、パキ、パキ・・。

ガシャーン!!

ドーーーーーーーン!!!


アニム王の前に黒い霧のような煙に包まれた、大きさでいえばタイタンかミノタウロスくらいだろうか、目のところが赤く光った物体が現れた。

!!

アニム王は見た瞬間にわかった。

武装ロイドだ。

だが、何か違う。

そう思い、注意深く見つめている。

黒い霧をまといつつ、武装ロイドがゆっくりとアニム王の前に着地していく。


黒い霧に覆われているが、悠然として武装ロイドは丁寧に挨拶をする。

「これはこれは、お出迎えご苦労様です。 初めまして、私は邪神教団に所属するアサシンです」

そう言って続ける。

「ここにおられる方々は、邪神王の生贄になられるものと理解してよろしいのでしょうか? 僭越せんえつながら、私がご案内させていただこうと思い、せ参じた次第です」

アニム王はその言葉を聞き、立ったまま武装ロイドに語りかけた。

「邪神王は復活したのではないのですね」

アサシンは少し驚く。

「これはこれは王様ではありませんか。 美しい・・そのたたずまい、感服いたします」

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