第392話 進化
◇◇
テツが修行に行って1か月ほどが経過。
フレイアのカフェ。
時間は10時頃。
ルナがカウンターでアップルパイを食べながら座っている。
「フレイアよ、テツが心配か?」
「ルナ様、別にそういうわけではありませんが、どうして一言も私に言わないで行ったのかなって、ずっと思っているんです」
フレイアが作業をしながら答える。
「ミランがやられたのが余程堪えたんじゃないか? ウルダもやられたしな」
ルナは淡々と語る。
「・・でも、やっぱり私に一言あっても良かったんじゃないかって思うんです。 私が聞いたのはレイアからですよ。 なんでレイアたちのところに行って私のところに来なかったのかなって・・」
フレイアがそういうとルナが笑う。
「フレイア、それほどテツが気に入ったのか」
!!
フレイアは下を向いて、黙ってしまった。
ルナはそれ以上は言わずに飲み物を飲みながら次のスイーツを頼んでいた。
「フレイア、奴もバカではない。 お前だからこそ言えなかったのではないのか」
ルナはそう言うと口をもぐもぐと動かしている。
やはりこちらも捨てがたいな、などとルナはつぶやく。
フレイアはハッとしてルナを見つめ、寂しそうに笑って言う。
「ルナ様、テツですけど何の連絡もないし、まだパーティを解消してないので念話を送ってみても返事もない。 届いてるのかどうかもわからないのですよ」
「フレイア、クイーンバハムートの領域なのだ。 こちらからの干渉はできるはずもない。 それにパーティを解消していないのだろう? それはお前を認めている証拠じゃないのか」
ルナがチーズケーキを食べながら言い、最後の一口を食べ次のスイーツを物色していた。
フレイアはハッとして微笑む。
カラン、カラン。
カフェの入口が開く。
「いらっしゃいませ~・・あ、レイアじゃない。 どうしたの?」
フレイアがカウンターから声をかける。
レイアに続いて、颯が一緒に入って来た。
颯は下を向いたまま、手を前に出しバーンを乗っけている。
レイアに連れられて一緒にカウンターに歩いてきた。
フレイアがカウンターから出てきて、颯の前に来てしゃがむ。
「ハヤテ君、どうしたの?」
フレイアが微笑みながら聞く。
「うん・・」
颯はうなずくだけで言葉が出てこない。
「お姉ちゃん実はね、ハヤテ君のバーン・・ワイバーンなんだけど、動かなくなったみたいなの」
レイアが目線を颯のバーンに移す。
フレイアも颯の手の平を見る。
なるほど、ワイバーンが静かにうずくまっている。
「ハヤテ君、触ってもいい?」
フレイアがそういうと、颯はうなずく。
フレイアが優しくバーン触れる。
そっと撫でていく。
弱っているわけではなさそうだ。
・・・・
!!
「もしかして・・」
フレイアは目を大きく見開き、颯に言う。
「ハヤテ君、少しバーンを持たせてくれる?」
颯はバーンを手渡してくれた。
フレイアはバーンを手の平に乗せ、ジッと見つめいろいろ撫でてみる。
・・・・
少しして、フレイアは大きくうなずく。
「ハヤテ君、バーンと一緒にレベル上げとか、結構してた?」
フレイアがそう聞くと、颯が答える。
「うん。 兄ちゃんと一緒にダンジョンに行ったりしてレベルを上げたり、転職したりしたんだ」
「そうなんだ・・転職? ハヤテ君、何の職になったの?」
フレイアの言葉に颯がステータスボードを確認。
「えっと・・シェファードっていう職なんだけど・・」
颯の言葉にルナが声を出した。
「それは珍しいな・・なるほど」
ルナはまたスイーツを食べる。
フレイアもうなずき、颯に言う。
「ハヤテ君、バーンだけど進化するのよ」
!!
颯がパッと顔を上げてフレイア見る。
フレイアはにっこりとして言う。
「うん、バーンは弱っているわけじゃないの。 次の段階に向かって休んでいたのよ」
颯はうれしそうににっこりと顔が明るくなっていく。
「進化するんだ、バーン・・でも、進化って何になるの?」
颯が聞く。
フレイアが言葉を発しようとすると、ルナが先に言葉を出す。
フレイア:「もちろん・・・」
ルナ:「ドラゴンだ!」
フレイア:「・・・・」
フレイアは口をパクパクさせていた。
「ルナ様、私が言いたかったのに!」
フレイアは笑いながら言う。
レイアも一緒に笑っている。
「ドラゴン・・」
颯はそう口にしながら、何度かつぶやいていた。
フレイアは颯を見つめる。
「でもハヤテ君、凄いわね。 ワイバーンからの進化なんてなかなかお目にかかれないものなのよ。 ハヤテ君が愛情をいっぱいあげたからこそ、バーンも応えてくれたのね」
フレイアの言葉に颯はニコニコしていた。
◇◇
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