第359話 この兵器、どうにかならなかったのかな? もったいない



◇◇

<アニムside>


俺は飛燕をしまうとフレイアの方を見た。

フレイアがこちらに駆け寄って来る。

「テツ、お疲れ様」

「フレイアこそ、お疲れ。 でも、こいつらいったい何だったんだ?」

俺がそうつぶやくと、フレイアが前を見て言う。

「テツ、今は前の敵をどうにかしなきゃ」

俺もそう言われて前を見る。

まだ敵は残っているんだ。

後でフレイアが説明してくれた。

昔にも同じようなものを使っていた集団があったそうだ。

邪神教団や反アニム国家で使用されていたという。

人を媒介にして生きたまま利用したり、魔物の魔核を利用したりして武具として使う。

ドワーフの作る武具とは違う。

イメージを付与できるわけではない。

だからこそ、ドワーフの力を得ようとしていたようだが、それも叶わずこんな武具を開発していたらしい。

人を媒介にしたものは、少し上のレベルの効果はあるようだが、それだけだった。

魔核を埋め込まれたものも、そのレベルを維持できただけだったようだ。

つまり、単にそのレベルの魔物というわけだ。

俺が感じていた違和感。

複数の魔物がいるような感覚。 

どうやら魔核を埋め込んでいる武装ロイドに搭乗している人との反応が重なっていたようだ。

・・・・・

・・

俺は聞いていて気分が悪くなった。

また、武装ロイドは魔核を埋め込まれた、いわば疑似魔物みたいなものらしい。

魔核が停止すれば魔物の消滅と同じだ。

フレイアは魔力回復薬を飲むと、

「じゃ、行きましょ!」

そういって、弓を引き絞っていた。

張り詰めた弓を上空へと向け、バシュッと放つ。

白い軌跡を描いて、戦艦に向かって行く。

船底に命中する。

だが、それだけでは戦艦が揺らぐことはない。

すると、後ろから援軍がやってきていた。

傷つきながらもワイバーンに乗った騎士団が迫って来ている。

地上部隊もバジリスクを操ってゆっくりとだが、こちらの方へ近づいて来る。

どうやらアニム王国軍の方が優勢のようだ。

相手の地上部隊の攻撃は、バジリスクに致命的な被害を与えることができなかったみたいだ。

ただ、戦艦からの艦載砲などがきつそうな感じだ。

騎士団の魔法使いや戦士が、敵の戦車や装甲車などを動けなくしたりするとバジリスクが歩きながら踏みつぶす。


俺はチラッとその状況を見ながら、戦艦の艦載砲だけを先に破壊した方がよさそうだなと思った。

「フレイア、敵の戦艦の艦載砲を破壊した方がいい感じだな」

俺はそう提案。

「そうね、戦艦を落とすよりもいいわね」

は?

フレイアさん、まさか戦艦を落とすつもりだったのか?

俺は少し驚いたというか呆れた。

・・

ま、いっか。

さて、俺もフレイアもまだまだ体力はある。

フレイアと目を合わせてうなずくと、俺たちは左右に分かれて戦艦へと飛び乗って行く。


戦艦の甲板に上がると、艦砲射撃が遠慮なく行われていた。

速射砲のような感じだ。

威力は結構あるみたいだ。

ワイバーンに当たると、ワイバーンの動きが止まる。

魔法防御しているためか、被弾すると虹色の光がはじけて防御しているようだが、連続で当たるとワイバーンも傷つくようだ。

騎士団員も頑張って操っているが、やや艦砲射撃の方が優勢だな。

それに距離が近くなってくると、命中率も威力も格段に上昇しているみたいだった。


甲板上からワイバーン部隊の状況を見ながら、地上も見てみると戦艦からの砲撃が激しい。

だが、見てばかりもいられない。

フレイアが移動したであろう方向を見ると、遠くだが戦艦の甲板上で白い光に続き、爆発光が見えたりしていた。

俺も飛燕に魔法をまとわせ、蒼い長い光の剣で甲板上の艦載砲を斬り裂いていく。

戦艦には前方に3つと後ろに1つの艦載砲があった。

それらを潰せば、味方の被害が減るだろう。

そんなことだけを考えて移動した。


◇◇

<連合国side>


指揮艦隊の艦橋。

かなり混乱しているようだった。

「・・か、艦長! 撤退するのではなかったのか?」

行政官が叫んでいる。

「すでに、撤退の時期はいっしました。 今、敵に背を向ければ簡単にやられます。 前方を見つつ後退するしかありません」

艦長は落ちついて答える。

「行政官殿、そう慌てなくても武装ロイドの部隊が展開したではありませんか」

異世界人が言う。

その言葉にホッとしたのか、行政官は落ち着いたようだった。

「おぉ、そうでしたな。 あの武装ロイドは単機で戦艦も破壊しましたからな。 確か150機という規模で展開されたのでしたな」

行政官も心に余裕ができたのか、ニヤニヤしながら会話している。

だが、艦長の次の一言で沈黙に変わった。


「その武装ロイドの部隊ですが、全滅したようですな」

艦長は落ち着いた口調で話す。

「「・・・・・」」

行政官は口を開けたまま硬直している。

異世界人も動きが止まっていた。

この武装ロイドの展開とすぐに指示に従わなかった艦隊のおかげで撤退するタイミングを失ってしまった。

いや、今さらどうすることもできない。

私だって、もしやと思って躊躇ちゅうちょした。

この武装ロイドを展開した艦隊を切り捨てても、撤退をしていればよかったのだ。

だが、もう済んだことだ。

次を考えねばならない。

艦長は表情を変えるでもなく前を見つめ直していた。

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