第314話 ココと一緒
「・・ギルドマスター、この部屋ですね」
そう言いながら女の子が入って来た。
ココだ。
俺は椅子から立ち上がりココを見た。
「おはよう、テツ。 よろしくね」
ココは俺に手を出して握手を求める。
俺もすぐに手を出し握手する。
「あ、あぁ、こちらこそよろしく」
俺が挨拶を返すと、ココがいきなり言う。
「ギルティ!」
「え? 」
「テツ、あなた私を邪魔者か何かと思っているでしょう」
ココが俺を見つめる。
「い、いや、そんなことを思ってないよ」
俺は慌てて答える。
ギルマスが入って来て微笑みながら言う。
「ココ、よく来てくれた。 早速、テツ君と仲良くできてるようだね」
いやいやギルマス。
これが仲良く見えるのなら、あなたの目がおかしいですよ!
俺は心の中でつぶやく。
ココがジッと俺を見ている。
・・・
なんか妙なプレッシャーを感じるな。
やっぱ、やめようかな。
そんなことを考えてみる。
「テツ、きちんと仕事はしてね」
ココに言われる。
やりにくいなぁ。
ギルマスが俺とココを見て、うなずいて言う。
「では改めて、ココ、テツ君。 よろしくお願いする。 ただ無用な争いは避けてくれ。 といっても、テツ君の世界の住人が相手になるわけだから問題ないと思うが・・」
そういうと、俺たちを送り出してくれる。
俺達も部屋から出た。
ロディーネの横を通るときにウインクされた。
俺は軽くうなずいて笑顔を返す。
ロディーネ、何考えてるんだろ?
ま、いっか。
「ギルティ!」
ココが後ろから言う。
「ココ、何がギルティだ? 俺、何もしてないぞ」
「このスケベ!」
ココが別に表情を変えるでもなく俺の後からついてくる。
これからこいつとずっと一緒か。
こりゃ、しんどいな・・俺はそう思いつつも飛行船の発着場へ向かっていった。
視界にこちらを見つめている連中が映る。
「ココ、少しだけ寄り道するよ」
俺はココにそういうと、ココが不思議そうな顔をして俺を見る。
俺達が昇降装置の方へ行こうとすると、先ほどギルマスに追い出された若い連中が、こちらに近づいて来た。
わかりやすい奴等だ。
俺は
俺達の近くに来ると、少し広がって言う。
「おっさん、さっきは世話になったな」
「恥かかせやがって・・」
定番の台詞だな。
こいつ等全員やる気満々だ。
こういった連中には何を言っても無駄だろうし、少し手合わせした方がいい。
俺はココに闘技場が借りられるのか聞きに行ってもらった。
「おっさん、ええ身分やの?」
若い男がニヤッとしながら言う。
「まぁ、ええけど、そんな刀をぶら下げてアホちゃうやろか?」
「まさか中二病ですか? ええおっさんが・・痛いわ!」
言いたい放題だな。
ココが帰って来て、問題ないという。
「お前ら、暇なんだろ? 少し話をしよう」
俺がそう言うと、
「はぁ? 何言っとんや?」
「おっさん、オレらをなめとる?」
若い奴等が殺気立つ。
「いやいや、軽く身体動かした方がいいだろ?」
「なめんなよ、おらぁ!!」
俺の返答を聞き、完全に頭にきたみたいだ。
声を大きくする。
「こんなロビーで大きな声出すなよ。 ちょうどいい場所があるからついて来い」
俺はそう言いつつ、俺も偉そうだよなぁって思ったりもした。
案外素直に若い連中はついてきて、闘技場に入って行った。
闘技場には誰もいない。
俺達だけの貸し切りみたいなものだ。
入って行くと、
「おっさん、ここで何を教えてくれるんだ?」
若い連中がニヤニヤしながら言う。
「どうせわかってるだろ」
俺はそういいつつ、飛燕を横に置く。
若い連中は意外そうな顔を向けた。
俺は身体を軽く振ってみてほぐす。
「さて、お前たちみたいな奴等は、言葉よりもこっちだな。 手加減してやるから死ぬことはないだろう」
俺は
案の定、見事にはまる。
「て、手加減って・・」
「おらぁ、なめんなよ、おっさん!」
「くそがぁ! 俺らの強さを見てビビれ!!」
「俺らもこんな世界になってありえねぇ強さになったんだ、死ね!」
・・・
若い連中は息まいている。
全員レベル16辺りだ。
俺は片手て、コイコイとやってみる。
すべての動作が笑いたくなる。
ゲームだな、こりゃ。
そう思いつつ、迫って来る若い連中をみた。
連携というのではないが、順番に迫って来る。
しかし、遅く感じる。
皆、剣を持っているが威圧感はない。
当然、レベル差がある。
俺は危なげなく余裕を持って
怪我はないだろう。
それぞれが起き上がろうとするので、一人ずつ軽く蹴り飛ばす。
ドン! ドン! ドン!
軽く吹き飛んで壁に激突。
沈黙・・。
死んでないよな?
ココが近寄って行き、両手で大きな
気絶しているようだ。
俺達はそのまま闘技場を出た。
受付へ行って、闘技場で倒れている奴等がいるからよろしく頼みます、と言って飛行船の発着場へ向かう。
受付はロディーネだ。
笑いながらもきちんと応対してくれた。
ありがとうロディーネ。
発着場に到着。
ドワーフ国行きの乗り場を探していると、俺の方に向かって小走りで近寄って来る人がいた。
手を振りながら近寄って来る。
「テツさ~ん!!」
・・誰?
あ!
少し迷ったが、思い出した。
澤田さんだ!
「おはようございます、澤田さん」
澤田さんが俺の前に来て、いきなり握手をしてきた。
「おはようございます、テツさん。 いや、まさかこんなところでお会いできるとは思ってもみませんでした」
澤田さんはニコニコしている。
「どうしたのですか?」
俺はとりあえず聞いてみた。
「はい、私の街もかなり落ち着いて来たので、帝都で少し勉強しようかと思いまして・・。 それに学校ができたと聞いたものですから、見学に来てみました」
澤田さんはハイテンションだな。
「そうですか。 学校には、私のところのチビたちも通っていますよ」
俺は普通に答える。
「そうなんですか。 私の街からでも通えそうなので、私も考えてみます」
澤田さんは、俺の言葉を聞いて少し考えていたようだ。
「あ、テツさんはどちらへ・・」
「私は、ドワーフの街へ行ってみようと思っています」
俺はそう答える。
「ドワーフの街ですか・・なるほど。 私も行ってみたいですね」
澤田さんはまたも少し考えていた。
の人、よく考える人だな。
「ではテツさん、気を付けて行ってきてください」
澤田さんはそういうとお辞儀をした。
すると、澤田さんの後ろからスッと女の人が現れて軽く会釈をする。
!
ん?
この人って・・。
俺がその女の人を見て、名前を思い出して言おうとすると、澤田さんがにっこりとして言葉を出す。
「あぁ、彼女ですか・・じ、実は私の妻です」
!!
「えぇー!!」
俺は思わず声を出していた。
妻って、森村佳奈だろ?
女優さんじゃないか!
確か、医学の勉強をして澤田さんの後輩だったとか言ってたけど・・。
俺の頭の中は少し混乱している。
澤田さんが照れくさそうに片手を頭に置きながら笑っている。
「彼女・・回復系の魔法が得意でして・・俺と一緒に仕事をしているうちに、その・・何となく・・」
澤田さんがモゴモゴと言葉を発していると森村佳奈が前に出て来てにっこりと微笑む。
「初めまして、森村佳奈です。 いえ、今は澤田佳奈ですね。 テツさん・・澤田からよく話を伺っております。 今後ともよろしくお願いします」
森村佳奈が丁寧な口調で話してくれた。
俺はどんな顔をして返答したのだろうか。
よく覚えていない。
澤田さんたちは俺たちに軽く挨拶を済ませると、昇降装置の方へ移動して行った。
俺もやや呆然としながらも飛行船の方へ向かう。
ココが不思議そうな顔で俺を見る。
ココに、地上の近くの街の人だと説明。
・・・
なんだこの喪失感は?
森村佳奈・・決して知り合いじゃない。
だが、何か妙に心にぽっかりと穴が開いたような気がする。
これが○○ロスというやつか。
はぁ・・何だこれ?
俺って地球人にモテたためしがない。
そりゃフレイアなんて超絶美女だ。
だがなぁ・・。
俺の中で何ともいえない感覚がある。
ココは何も言わずに俺の傍でいた。
女の子のこういう優しさは心に堪えるんだよなぁ。
俺は思わずココの頭を撫でた。
「ギルティ!」
ココがいきなり言う。
「テツ、あなた私をマスコットか何かと勘違いしてない?」
「い、いや、そんなつもりはないんだが・・」
「ふぅ・・さっきの女の人がそんなに好きだったの?」
ココがズバリという。
「い、いや、そうじゃないんだ。 彼女は、何て言うのかな・・アイドルって言って、みんなの注目していた人なんだ・・う~ん・・なんて言ったらいいのかなぁ・・」
俺がうまく言葉を出せないでいると、ココが言う。
「テツ、あなたは自分を信じて周りの目線など気にすることはないわよ。 誰がどう思おうとも、あなたはあなたにしかできないことがある。 それを突き進んでいけばいいのよ」
俺はココの言葉に目を見開いた。
「ココ・・君って・・」
まさかココに癒されるとは思ってもみなかった。
こんな子供なのに。
俺はまたココの頭を撫でてしまった。
「ちょ、ちょっとテツ、うっとうしいんですけど」
ココが手で俺の手をはらう。
「ココ、ありがとう」
「べ、別にいいわよ」
俺は改めて思った。
どこの街も安定してきているんだな。
さて、飛行時間は1時間ほどか。
それを確認しながら船の中へ入っていった。
時間は10時30分前だ。
飛行船入り口の一階フロアで居てもいいが、二階に上がってみよう。
そう思って上がってみると、あまり変わらない。
まぁ、ゼロのところへ行く飛行船のようなわけにはいかないか。
あれは、完全にVIPだったからな。
俺たちは窓際の席に向かう。
どの席も完全リクライニングみたいにベッドにもなる。
パーソナルスペースは、すべて確保されていて寝るときには
また、寝ているときには外から呼び鈴をタッチしなければ、中の人に触れられないようになっている。
半透明なフィルターが席を
ココは特に話しかけるでもなく後ろをついてくるだけだ。
「ココ、あまりしゃべらないんだな?」
俺は素直に思ったままを聞いてみた。
「別に気を使わなくていいわよ。 私は相手が嘘を言ってないかどうかを判断するだけだから」
ココは静かに答える。
「そうか。 ココ、よろしく頼むね」
俺はそういうと、席に座り自分のコートを取り出して膝にかけ椅子を倒す。
気持ちよくフラットになって、まるで水の上に寝ているようだ。
席の周りも勝手に半透明のフィルターが覆っていた。
なるほど、もの凄い静かだな。
そう思っているとアナウンスが流れてくる。
間もなく出発いたします。
ドアが閉まります、ご注意ください。
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