第183話 ここからは未踏地帯だな


俺がしばらく考えていると、

「テツ、どうしたの?」

フレイアが優しく声をかけてくれた。

「うん、転職が可能みたいなんだが、どうも・・な」

俺ははっきりと答えれない。

「そう・・」

フレイアも踏み込んで聞いてこない。


仙人・・俺にはどうもしっくりこない。

まだ、そんな年齢でもないぞ。

仙人と聞くと、世捨て人のような感じを受ける。

また、なんでもできる可能性もある

でも、なんだかなぁ。

・・・

とりあえずは保留にしておこうと俺は思った。


「フレイア、転職はまた後で考えてみるよ」

「そう」

微笑みながら、フレイアも同意してくれた。

転職のことは頭の隅にでも追いやって、移動だ。

フレイアと一緒に移動をし始める。

移動速度はかなり速いだろう。

すぐに富士山が見えて、そのまま通過する。

魔物も、こちらからちょっかいを出さないと、気づかれることはない。


アニム王と会った、厚木の場所を通過する。

ここからは未踏地域だ。

こんな世界になっていなければ、何度も来たことのある場所だ。

だが、魔物が現れてからは来ていない。

来れるはずもない。


246号線を通って行けば、渋谷に突き当たる。

だが、道と呼べるような感じではない。

大地震でも来たのかと思うような感じで、ビルも倒れているものばかりだ。

高いビルはほとんどないが、その瓦礫がれきが視界をさえぎる。

アニム王が転移してから、結構な日数が経過しただろう。

人の気配は全く感じない。

都市部の人たちはどうなったのだろう?

俺の住んでいる地方は、人の密集が少ない。

だからこそ高レベルの魔物の出現が無かった。

アニム王が言っていた。

人などの単一魔素が密集するところでは、高レベルの魔物が現れると。

都心部の人たちは魔物にやられてしまったのだろうか?

俺は辺りを見渡しながらそんなことを考えていた。

・・・

おっと、こんなところで索敵を怠ってはいけない。

レベル30以上を意識して索敵を行ってみる。

ピピピ・・・。


前に来たときにいた魔物が結構いる。

レベル31:バジリスク、レベル35:スフィンクス、レベル38:ミノタウロス。

とりあえず、近くにはこの3体くらいがレベル30超えだ。


以前には、あまりにも差があり過ぎて、対処しようなんて思いもしなかった。

今では、相手にするのが面倒だなと思っている。

できることなら放置しておきたい。

だが、気づかれたりすると、やはり対処することになるだろう。

そうなると、結構面倒なことになるかもしれない。

やはり、先に倒しておくべきだろうと思う。

リポップするにしても、時間があるはずだ。

俺は単純にそう思った。


「フレイア、レベル30超えが3体いるんだが、倒そうと思う」

「いいわよ」

フレイアも軽く返事をくれる。

まぁ、レベルが下だからな。

ミノタウロスだけはフレイアと同じだから、この個体を先に倒すといいだろう。


そうフレイアに伝え、俺が倒してみるから、その間に他の2体の牽制を頼むと伝える。

フレイアがうなずいてくれて、早速スタートだ。


近くまで接近しても気づかれないと思う。

だが、ミノタウロスは気づかない振りをする。

これが少し怖いが、遠慮なく近づいて行った。

俺の眼前にその巨体をおさめ、戦闘態勢に入る。

ミノタウロスは気づいていないようだ・・たぶん。


一気に後ろから近づいて、左足から横薙ぎに払ってみた。

それほどグッとくる手ごたえもなく、右側へ抜ける。

抜けたと同時に切り返して、袈裟切りに斬りつけてみた。

ミノタウロスの右わきから股の間に刀が通ったようだった。


「ブモォォォォーーーーー!!!」


ミノタウロスが叫びながら、左足方面に傾き倒れる。

その声を聞いた他の2体がこちらに気づき、向かって移動してくる。

俺はミノタウロスの倒れた背中から刀を突きたてて、止めをさした。


接近してくる2体は、スフィンクスが飛行タイプなので、早く到着しそうだ。

だが、フレイアが対処してくれていた。

地上から迎撃ミサイルのように、矢を放っている。

・・・・

いったいいくつくらい矢が飛んで行ったのか。

スフィンクスは身体に矢が刺さったまま落下していく。

ミノタウロスも蒸発して魔石が残った。

魔石を回収して、俺はバジリスクに向かう。

凝視さえ気を付ければ問題ないだろう。


バジリスクが身体を揺すりながら近づいてきた。


トシュ!

トシュ!

フレイアの矢がバジリスクの右目に刺さる。


「ギィエェェェェェェーーーーーー!!!」

バジリスクが歩みを止めた。

フレイア・・容赦ないな、怖ぇ。

バジリスクが吠えている間に、左目の方にも矢を放っていた。

的確な射撃だ。

俺は感心する。

これで石化するリスクは免れただろう。

フレイアがこちらを見る。

どや顔だな。


バジリスクの表面は、かなり堅いので攻撃が弾かれるかもしれない。

だが、今の刀はじいちゃんの改良版だ。

俺はバジリスクに近づいて、首の辺りに刀を振るった。

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