第132話 シルビア、やっぱお前は爆弾だな


アニム王は目を閉じて、俺とルナの言葉を聞いていた。

しばらく考えている。

・・・

この人、その姿だけで様になるんだよなぁ。

俺はそんなことを思ってしまう。

・・・

・・

全員が静かに見守っていた。


俺はルナ、ウルダ、そしてシルビアを見ていて思った。

なんと人として深みのある、信頼できる人達だろう。

・・いや、人じゃないな。

しかし、地球人ではこれほどの人たちに出会うことは、そうそうないと思う。


アニム王がゆっくりを目を開ける。

全員を見渡して、

「みんな、ありがとう。 本当に救われたよ」

俺の方を見て微笑みながら言う。

「テツ、君に出会えて本当によかったと思うよ。 それに、ルナ・・感謝の言葉もない」

アニム王はルナに軽く頭を下げていた。

ウルダとシルビアが向かい合ってうなずく。

「ルナ、それにテツ。 私の心は落ち着いたが、この星では私はまだまだ迷子だよ」

アニム王が両肩をすくめて笑う。

みんなもつられて笑ってしまった。

「あはは・・アニム王、それはそうですが、これからどうされるおつもりですか?」

俺は笑いながら聞いた。

「テツよ、君が前に言ってくれたじゃないか。 疲れたら君の所へ来いと・・そうさせてもらうよ」

!!

マジか?

笑いが吹き飛んだ。


そりゃ俺としては大歓迎だ。

だが、そうは言ってみたものの、実際来られるとなるとどうなのだろう?

この現代社会の人間たちはどう感じるか。

受け入れてくれるのだろうか?

とくにご近所たちなどは・・それを考えると何とも言えない。

・・・

そうだ!

ルナもいるし、ちょうどいい。

この星での人間の立ち位置を、俺なりの見解で伝えてみよう。


この星を人間が勝手に線引きして自分たちのものとしていること。

その時には策略や謀略、暴力を行使したりしていること。

自分たちの種族も含め、他種族への迷惑を考えないこと。

また、考えている人間もいるが、すべてが人間目線だということ。

そんなことを伝えていった。

・・・

・・

ルナの顔がだんだんと無表情になっていくのを感じる。

ウルダは身体が震えていた。

アニム王は無言のまま聞いている。


「なんと・・なんと傲慢ごうまんな種族か」

ウルダが声を震わせながらつぶやいている。

俺は慌てて、

「ウルダさん、あくまで私の見た目線ですよ。 後は自分たちの目で見て判断してもらうより仕方ないですね」

そう付け加えた。


ルナが少し笑う。

「ウルダよ。 転移してきたときに出会ったオスどもだが、テツの言葉を裏付けるものだな」

「はい、ルナ様」

ウルダが同意する。


ルナさん、だから一体何があったのですか?

(短編:ルナ転移編を参照してください→https://kakuyomu.jp/works/1177354054915775280

気になるが、俺には怖くて聞けない。

シルビアが俺に話しかけてくる。

「テツ・・しかし、それをそのままは信じられないぞ。 テツの父上や母上は、それは素晴らしい人たちだぞ」

「シルビア、ありがとう」

俺は素直に感謝した。


そのシルビアの言葉に皆が反応した。

そして、その一言で皆の表情が変わった。

「テツ! 貴様の父上と母上に会ってみたいものだな」

ルナは嬉しそうに言う。

「そうだな、テツ。 お前のその武器を作った人なのだろう。 是非とも会ってみたい」

ウルダも言う。


シルビア・・やっぱ、お前は爆弾だな。

乳がでかいだけの、あほダークエルフだ!

決して、悪人ではないのだが。

俺の心の声が叫ぶ。


「そ、そうですか・・では、私の家に行きますか。 そして、これからのことを考えてみても、いいかもしれませんね」

俺はそういうしかなかった。

大丈夫かな?


「アニムよ、今思い出したが、我々がこちらに来る前にドワーフの長老と出会ったぞ」

「そうですか! なるほど・・彼らも無事転移できたのですね」

ルナとアニム王の会話が聞こえてきた。

・・・

ドワーフって言ったよな?

俺の聞き間違いじゃなければだが。


「うむ。 長老が言うには、王に先に行けと言われたらしく、転移してきた場所で待っているそうだ」

「なるほど、そのうち彼らにも会いに行ってみたいものですね」

ルナとアニム王の会話が進んでいた。


ドワーフにエルフ、ヴァンパイアと・・異世界らしくなってきた。

いや、地球だけど、種族が人間だけではなくなってきたな。

俺は妙にワクワクしていた。


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