第75話 少し寄り道し過ぎたかな?


ふぅ・・どうやらオーガを倒せたようだ。

俺は息を整えつつ、辺りを見渡してみる。

・・・

魔物はいないようだ。

本当に運が良かったと思う。

深呼吸をして気持ちを落ち着ける。


オーガの魔石をステータス画面に吸い込ませ、ステータス画面を確認。


テツ

レベル:19

種族 :人

HP : 90/260 +60

MP :80/190  +40

力  :223     +50

防御 :190     +45

敏捷 :302     +70

技能 :178     +40

運  :67      +1

職業 :忍者10


固有スキル 

気配察知10

罠解除1

自動回復10

軽歩行9

忍術5

鑑定4


レベル19か・・よく上がったよな。

それに、よく生き延びれたな、ほんとに。

しっかし、レベル21のオーガって、強いな。

あの戦車や車がなかったら・・そう思うと、ブルブルと震えがきた。

怖いな。

・・・

切り替えよう。


アニム王に会いに行くんだろ!!

俺は、両手で頬をパンとして気持ちを切り替えようとした。

・・・

あ、そういえば忍者レベルが10になってたな。

職業が選べるんじゃないか?

完全に気持ちが切り替わっていた。


職業のところをタッチ。

上位職への転職が可能とある。

「上忍」「隠密」「アサシン」

・・・

う~ん・・これって、絶対ヤバい方向へ行ってるよな。

まぁ、今すぐ転職しなくてもいいし、アニム王に聞いてからでも遅くないだろう。


念話で聞いてみるか?

いや、やっぱり直接会って聞きたい。

そう思うと、ゆっくりと歩きながら移動を開始した。

少し寄り道しすぎたな。

時間は10時前になっていた。


<由美たち>


テツがオーガと対峙している。

「久美・・久美が言ってたのって、あの人のこと?」

茜が聞く。

「うん・・そう思う」

「人間なの? 凄いわね・・ソロでしょ? 何者なの?」

由美が驚いている。

「そうね・・こんな世界になって魔法使いになれるって喜んでいた私たちよりも先に進んでいるわね」

「うん・・間違いないわ。 それよりもあの大きな魔物以外いなくなってるわ」

ドッゴォォォーーーーン!!

「「キャ!!」」

「な、何? 爆発?」

「あの魔物のところで爆発したわ・・あの魔物・・死んだのかしら?」

由美たちが爆炎の塊を見つめていた。

・・・

「わ! あの魔物・・まだ生きてるわ」

「あ、でも左腕がない」

「あ、あの人・・魔物に向かって・・」


「あの人・・凄いわね・・倒したわよ、あの大きな魔物を・・」

「うん・・あ! どこかへ行こうとしているようだけど、声をかけてみる?」

茜が言う。

「そ、そうね・・でも、犯罪者だったら・・私たち、勝てないわよ。 それに相手も私たちの存在に気づいていないようだし・・それでも接触してみる?」

由美が慎重に聞いていた。

「3人でも・・無理かな?」

「今の戦い見たでしょ? 無理よ。 でも、もしいい人なら力強いわね」

「う~ん・・こっそり後をつけてみるってのは、どう?」

由美の言葉にみんながうなずいた。


◇◇


テツが名古屋で戦闘を繰り広げているとき、優は同じ作業を繰り返していた。

文句も言わず、近所の人たちにうまく利用されながらだが。


「優、しんどいけど・・生き延びるためには仕方ないわね」

嫁(梓)が優しく言葉をかける。

「・・・・」

優にはわかっていた。

おやじさんが言ってたのはこのことだったのだと。

近所の大人たちは、レベルが上がるまでは低姿勢で遠慮しながら行動していた。

レベルが上がり8、9くらいになってくると態度が大きくなってきた。


優は別にそんなのは気にしない。

ただ、危ないときに優が助けても、お礼すら言わなくなってきた。

経験値を横取りしやがって・・という感じだ。

本当に危険な状態なのに、それがあまりわからないようだ。

また、優の性格では危険を見過ごすことができなかった。


風吹君とはパーティを組むことはなかったが、最近では一緒に行動することが多くなった。

中学生同士、気が合うみたいだ。

「風吹・・俺達子供には、あまりレベル上げをさせてくれないよな」

「そうだよなぁ、俺ももっとレベルアップしたいのにゴブリンばっかだよ」

優にはこんな会話がホッとする。

「だろ? 風吹は戦士を選んだよな」


テツのご近所で動ける人たちは、ほとんどがレベル5以上になっていた。

ワーウルフ以外の敵は、もう敵と呼ぶほどでもなくなっている。

ただ、油断すれば痛い目を見ることにもなるが。

職業も、みんなゲーム好きが多くバランスよく選択できたようだ。

回復職も1家に1人配置の感じで設定しているみたいだ。

攻撃職は戦士が多く、武闘家なんてのも稀にあったりもする。

魔法使いが女子たちに人気らしく、本当にゲームのような感じで盛り上がりつつあった。

ただ、鍛冶職はじいちゃんのみで、これは誰にもまだバレていないようだ。

テイマーも何人かはいたが、結構レアみたいだ。


風吹君の戦士職はお父さんに勧められたらしく、また案外適職のような感じもするという。

「そうなんだけど、初めは嫌だったんだ。 でも、結構耐久力も攻撃力もあるんだよ。 ただ、敏捷性が少ないのがなぁ・・」

「まぁ、仕方ないな。 俺なんて、速さだけだぞ」

「優は見えないものな・・」

二人は顔を見合わせて、笑いあった。


◇◇


テツは索敵をし、魔物の確認をしつつ移動速度を速めて行く。


尾行をしていた由美たちは、すぐに引き離されて、これ以上進むと危険と判断し、引き返して行った。

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