第74話 オーガ・・強ぇぇ。
◇
<由美たち>
由美たち3人は、その場で動けずにいた。
オーガ、オークの乱戦。
動けば見つかるかもしれないし、流れ弾に当たるかもしれない。
そんな中、妙な動きを見つけていた。
「ねぇ、あの大きな魔物って、あの場所から動かないわね」
由美が言う。
「そう言われれば、動いていないわね」
「おそらく、リーダーか、この中で強いのは間違いなさそうね」
「久美・・あなたの索敵でも、やっぱ逃げ道は見つけられそうにない?」
茜が聞いていた。
「うん・・さっきから何度か試しているんだけど・・無理っぽいかな・・それよりも妙な反応あるのよ」
「「妙な?」」
茜と久美子が同時につぶやく。
「うん・・いい? えっと・・あそこ!」
久美子が指をさす。
今や眼下は土煙と、魔物たちで溢れていた。
由美たちはガーゴイルに発見されないように瓦礫の影で潜んでいる。
久美子の指先のところの土煙が妙な動きをする。
誰かがパッと横切った後を
注意して見ないと、すぐに他の動きでかき消されてしまうが。
テツが魔物たちを狩っているところを見られていたのだ。
「ほら? 今・・わかった?」
久美子が言う。
「う~ん・・ただ土埃が舞っているとしか・・」
由美たちはよくわからないようだ。
「索敵にも引っかからないのだけれど、妙な感じがするのよね・・なんだろ?」
久美子は不思議に思いながらも、観察を続けていた。
どのみち動けないのだが。
◇
<テツ>
あれ?
俺って、どれくらいレベル上がったっけ?
確認してみたいが、見る余裕はない。
視線を外すとやられる気がする。
テツのその考えは正しい。
オーガは、オークや空の目障りなガーゴイルを放り投げていた。
オークはともかくガーゴイルなどを投げるのは気持ちよかった。
初めは気づかなかったが、投げていると何か違和感を感じ始める。
ガーゴイルたちが地面に叩きつけられる音がする。
オーガはニヤッとしながら続けていた。
中には起き上がるものもいるが、死ぬものもいる。
そして、死体が消えるのはわかる。
だが、死にそうにないものまで消えている。
よく見えないが、何か動いている。
・・・
おかしい。
オーガはある程度暴れ、土埃を舞い上げて観察していた。
土埃の動き方が違う。
オークやガーゴイルが落ちたときに舞い上がる土埃を、スパッと切るような動きが見える。
それを観察していた。
そして、ついに見つけた。
◇
<由美たち>
「由美! あそこ・・人がいるわ」
久美子が言う。
違和感の正体はあの人間だったわけだ。
「「ど、どこ、どこ?」」
由美と茜が一斉に久美子の指先を見つめる。
「うわ、ほんとだ・・1人?」
茜がつぶやく。
「そうね・・でも、よくこんなところで生き残っていたわね」
由美が驚きながら言葉を出す。
「うん、私もそう思う。 あ、魔物が近寄って行く」
久美子の言葉に3人が静かに見守る。
無論、自分たちが助けれるとは思ってもいない。
◇
<テツ>
オーガが棍棒を両手で持ち、俺の方へ近づいてくる。
クッ・・逃げれない。
ちくしょう!!
いや、もう考えても仕方ない。
やるしかない!
切り替えろ!!
ふぅ・・。
俺は呼吸を整え、刀を抜く。
シッ!!
俺は全力でダッシュした。
オーガは反応できていない。
俺の動きがかなり速いようだ。
俺は刀をオーガに当てつつ、斬り抜けてみる。
!!
どうやら傷はつけれるようだ。
これはいける!
そのまま速度を緩めることなく、今度は棍棒をめがけて斬りつけてみる。
スパッ!
斬れる!
これもいける!
オーガはやや驚いたようだ。
オーガは二つに割れた棍棒を捨てる。
テツの動きを追うが、なかなか追えそうにない。
速いのもあるが、見えにくい。
忍術スキルの恩恵だろう。
オーガは、近くにあった戦車の砲台を持ち、戦車ごとぶん回して放り投げてきた。
!!
俺は何とか回避。
あんなものが直撃したら、かなりヤバいだろう。
だが、避けるのは何とかなりそうだ。
俺はそう思いながら動いていた。
オーガは何でもかんでも投げてくる。
投げてくるものが大きいだけに、大きく動かなければいけない。
避けれることは避けれるのだが、動ける範囲が限られてくる。
それらを避けていると、俺のバランスが少し崩れる。
その動きがオーガにわかるようだ。
オーガは喜んでそこら辺りの戦車や車などの残骸を投げつけてくる。
テツも、もっと逃げながら対処すればいいのに、と思うのだが同じような場所で動いている。
テツの周りに、結構な数の車や戦車が集まってきた。
オーガは投げるものを積み重ねて、テツの動ける範囲を狭くしているようだった。
テツの動きが制限される。
だが、テツもそれはわかっていた。
投げてくるものを避けているときにふらつくとオーガが喜んでいた。
それに、逃げたとしても追いつかれるかもしれない。
ならば、今できることをしようと考えた。
戦車や車などの車両はたくさんある。
それにまだガソリンなどは残っているはずだ。
戦車にしても砲弾もあるだろう。
それらを集められるだけ集めて利用しようと思っていた。
そして、車両が集まってくる場所で少しよろける仕草を多くした。
作戦は成功だった。
オーガは喜んで投げてくる。
・・・
そして、その時は来た。
戦車などの瓦礫にテツの背中が当たり、少し動きが止まったようだ。
!!
その瞬間をオーガは見逃さなかった。
一気にテツに向かっていく。
オーガはこのタイミングを計っていたようだようだ。
だが、このタイミングはテツにしても同じだった。
テツはバックステップしながらオーガに手のひらを向ける。
「ファイア!」
やや大きな火の塊がオーガと戦車や車の瓦礫のところへ向かっていく。
直後に大きな火の柱が上がると、大爆発が起こった。
ドッゴォォーーーーーーーーーン!!!!
テツは瓦礫の影に隠れたが、一緒に吹き飛ばされる。
50メートルくらは吹き飛ばされただろうか。
しかし、大きな怪我はしていない。
瓦礫が破片とかを防いでくれたようだ。
結構、俺も頑丈になったな。
だが、かなり疲れた。
そんなことを思いながら、オーガのいた場所にゆっくりと近づいて行く。
もしこれでダメージを与えれてなきゃ、逃げれるだけ逃げよう。
そんなことを考えながらそっと
かなり大きな爆発だったと思うが・・どうだ?
煙が薄らいでくる。
・・・
影が見えてきた。
!!
オーガが立っていた。
クッ!
ダメか。
俺はそう思いすぐに逃げようとしたが、オーガの左腕がないのが見えた!
逃げようとしていた身体を一瞬でオーガへの突進に向ける。
そのままオーガに刀を向け、突っ込んでいく!
オーガはブスブスとした黒い煙を
そのままオーガの左わき腹を斬った。
!!
よし、刀は普通に通るな。
そう思うと、その場で足を固定して思いっきり突きを放つ!
オーガは左わき腹の違和感を感じた。
左わき腹を見ようとしたところへ、テツの突きが襲ってきた。
ドドドドド・・・・!!!
すべての突きがオーガの身体に当たる。
さすがのオーガもよろめいていた。
こ、これでもまだダメなのか!!
俺は右腕を狙って刀を一閃!
オーガの右腕が飛ぶ!
直後、オーガが叫んだ。
「ウオォオオオオオオオオ!!!」
俺の身体にビリビリと振動が伝わってくる。
ワーウルフの咆哮と同じか。
腕を斬られた直後、オーガが口を大きく開けていた。
叫びそうな感じがあったので、俺は耳を塞いでいた。
俺的には断末魔の叫びかと思っていたが、結果としてはベストと言えるだろう。
動ける!
オーガの後ろに回り太腿に向かって突きを繰り出す。
ドドド・・!!
オーガはたまらず膝をついた。
そこへ俺はオーガの首をめがけて刀を振るう。
「こっのぉ!」
ヒュン!
ザク・・。
1度では切り落とせなかったようだ。
引き抜き、もう1度振るう。
ズバン!
オーガの首が落ちた。
はぁ、はぁ、はぁ・・はぁ・・。
『経験値を獲得しました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
しばらくして、オーガのいたところに紫色の魔石が残っていた。
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