第74話 オーガ・・強ぇぇ。


<由美たち>


由美たち3人は、その場で動けずにいた。

オーガ、オークの乱戦。

動けば見つかるかもしれないし、流れ弾に当たるかもしれない。

そんな中、妙な動きを見つけていた。

「ねぇ、あの大きな魔物って、あの場所から動かないわね」

由美が言う。

「そう言われれば、動いていないわね」

「おそらく、リーダーか、この中で強いのは間違いなさそうね」

「久美・・あなたの索敵でも、やっぱ逃げ道は見つけられそうにない?」

茜が聞いていた。

「うん・・さっきから何度か試しているんだけど・・無理っぽいかな・・それよりも妙な反応あるのよ」

「「妙な?」」

茜と久美子が同時につぶやく。

「うん・・いい? えっと・・あそこ!」

久美子が指をさす。


今や眼下は土煙と、魔物たちで溢れていた。

由美たちはガーゴイルに発見されないように瓦礫の影で潜んでいる。

久美子の指先のところの土煙が妙な動きをする。

誰かがパッと横切った後をほこりが追っている。

注意して見ないと、すぐに他の動きでかき消されてしまうが。

テツが魔物たちを狩っているところを見られていたのだ。


「ほら? 今・・わかった?」

久美子が言う。

「う~ん・・ただ土埃が舞っているとしか・・」

由美たちはよくわからないようだ。

「索敵にも引っかからないのだけれど、妙な感じがするのよね・・なんだろ?」

久美子は不思議に思いながらも、観察を続けていた。

どのみち動けないのだが。


<テツ>


あれ?

俺って、どれくらいレベル上がったっけ?

確認してみたいが、見る余裕はない。

視線を外すとやられる気がする。


テツのその考えは正しい。

オーガは、オークや空の目障りなガーゴイルを放り投げていた。

オークはともかくガーゴイルなどを投げるのは気持ちよかった。

初めは気づかなかったが、投げていると何か違和感を感じ始める。

ガーゴイルたちが地面に叩きつけられる音がする。

オーガはニヤッとしながら続けていた。

中には起き上がるものもいるが、死ぬものもいる。

そして、死体が消えるのはわかる。

だが、死にそうにないものまで消えている。

よく見えないが、何か動いている。

・・・

おかしい。

オーガはある程度暴れ、土埃を舞い上げて観察していた。

土埃の動き方が違う。

オークやガーゴイルが落ちたときに舞い上がる土埃を、スパッと切るような動きが見える。

それを観察していた。


そして、ついに見つけた。


<由美たち>


「由美! あそこ・・人がいるわ」

久美子が言う。

違和感の正体はあの人間だったわけだ。

「「ど、どこ、どこ?」」

由美と茜が一斉に久美子の指先を見つめる。

「うわ、ほんとだ・・1人?」

茜がつぶやく。

「そうね・・でも、よくこんなところで生き残っていたわね」

由美が驚きながら言葉を出す。

「うん、私もそう思う。 あ、魔物が近寄って行く」

久美子の言葉に3人が静かに見守る。

無論、自分たちが助けれるとは思ってもいない。


<テツ>


オーガが棍棒を両手で持ち、俺の方へ近づいてくる。

クッ・・逃げれない。

ちくしょう!!

いや、もう考えても仕方ない。

やるしかない!

切り替えろ!!

ふぅ・・。

俺は呼吸を整え、刀を抜く。


シッ!!

俺は全力でダッシュした。

オーガは反応できていない。

俺の動きがかなり速いようだ。


俺は刀をオーガに当てつつ、斬り抜けてみる。

!!

どうやら傷はつけれるようだ。

これはいける!

そのまま速度を緩めることなく、今度は棍棒をめがけて斬りつけてみる。

スパッ!

斬れる!

これもいける!


オーガはやや驚いたようだ。

オーガは二つに割れた棍棒を捨てる。

テツの動きを追うが、なかなか追えそうにない。

速いのもあるが、見えにくい。

忍術スキルの恩恵だろう。

オーガは、近くにあった戦車の砲台を持ち、戦車ごとぶん回して放り投げてきた。

!!

俺は何とか回避。

あんなものが直撃したら、かなりヤバいだろう。

だが、避けるのは何とかなりそうだ。

俺はそう思いながら動いていた。


オーガは何でもかんでも投げてくる。

投げてくるものが大きいだけに、大きく動かなければいけない。

避けれることは避けれるのだが、動ける範囲が限られてくる。

それらを避けていると、俺のバランスが少し崩れる。

その動きがオーガにわかるようだ。

オーガは喜んでそこら辺りの戦車や車などの残骸を投げつけてくる。


テツも、もっと逃げながら対処すればいいのに、と思うのだが同じような場所で動いている。

テツの周りに、結構な数の車や戦車が集まってきた。

オーガは投げるものを積み重ねて、テツの動ける範囲を狭くしているようだった。

テツの動きが制限される。

だが、テツもそれはわかっていた。

投げてくるものを避けているときにふらつくとオーガが喜んでいた。

それに、逃げたとしても追いつかれるかもしれない。


ならば、今できることをしようと考えた。

戦車や車などの車両はたくさんある。

それにまだガソリンなどは残っているはずだ。

戦車にしても砲弾もあるだろう。

それらを集められるだけ集めて利用しようと思っていた。

そして、車両が集まってくる場所で少しよろける仕草を多くした。

作戦は成功だった。

オーガは喜んで投げてくる。

・・・

そして、その時は来た。

戦車などの瓦礫にテツの背中が当たり、少し動きが止まったようだ。


!!

その瞬間をオーガは見逃さなかった。

一気にテツに向かっていく。

オーガはこのタイミングを計っていたようだようだ。

だが、このタイミングはテツにしても同じだった。

テツはバックステップしながらオーガに手のひらを向ける。

「ファイア!」

やや大きな火の塊がオーガと戦車や車の瓦礫のところへ向かっていく。

直後に大きな火の柱が上がると、大爆発が起こった。


ドッゴォォーーーーーーーーーン!!!!


テツは瓦礫の影に隠れたが、一緒に吹き飛ばされる。

50メートルくらは吹き飛ばされただろうか。

しかし、大きな怪我はしていない。

瓦礫が破片とかを防いでくれたようだ。


結構、俺も頑丈になったな。

だが、かなり疲れた。

そんなことを思いながら、オーガのいた場所にゆっくりと近づいて行く。

もしこれでダメージを与えれてなきゃ、逃げれるだけ逃げよう。

そんなことを考えながらそっとのぞいてみる。

かなり大きな爆発だったと思うが・・どうだ?

煙が薄らいでくる。

・・・

影が見えてきた。

!!

オーガが立っていた。


クッ!

ダメか。

俺はそう思いすぐに逃げようとしたが、オーガの左腕がないのが見えた!

逃げようとしていた身体を一瞬でオーガへの突進に向ける。

そのままオーガに刀を向け、突っ込んでいく!

オーガはブスブスとした黒い煙をまといつつ、よく見えていないようだ。

そのままオーガの左わき腹を斬った。

!!

よし、刀は普通に通るな。

そう思うと、その場で足を固定して思いっきり突きを放つ!


オーガは左わき腹の違和感を感じた。

左わき腹を見ようとしたところへ、テツの突きが襲ってきた。

ドドドドド・・・・!!!

すべての突きがオーガの身体に当たる。

さすがのオーガもよろめいていた。


こ、これでもまだダメなのか!!

俺は右腕を狙って刀を一閃!

オーガの右腕が飛ぶ!

直後、オーガが叫んだ。

「ウオォオオオオオオオオ!!!」

俺の身体にビリビリと振動が伝わってくる。

ワーウルフの咆哮と同じか。

腕を斬られた直後、オーガが口を大きく開けていた。

叫びそうな感じがあったので、俺は耳を塞いでいた。

俺的には断末魔の叫びかと思っていたが、結果としてはベストと言えるだろう。


動ける!

オーガの後ろに回り太腿に向かって突きを繰り出す。

ドドド・・!!


オーガはたまらず膝をついた。

そこへ俺はオーガの首をめがけて刀を振るう。

「こっのぉ!」

ヒュン!

ザク・・。

1度では切り落とせなかったようだ。

引き抜き、もう1度振るう。

ズバン!

オーガの首が落ちた。


はぁ、はぁ、はぁ・・はぁ・・。

『経験値を獲得しました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

しばらくして、オーガのいたところに紫色の魔石が残っていた。

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