第51話 田原さんも順調なようだ


「やっぱり優、凄いな。 きれいな戦い方だ!」

優は魔石を拾いながら俺の方へやってきた。

「おやじさん、この石・・使えるんだよな?」

「魔物を管理というか、コントロールできるようになるみたいだぞ」

俺はそう言って受け取った。

ステータス画面に、自分よりもレベルの低い魔石を入れても意味がないことがわかったので、魔石は必要ない。


さて、帰るか。

ん?

優がマップを見てくれというので、見ると苦笑いしている。

なるほど・・そういうことか。

まだ、嫁たちの集団は戦っている。

ゴブリンやロンリーウルフなどと混戦状態のようだ。

無理もないか。

ご近所さんなどと一緒に戦っているんだものな。

巻き込まれなくて良かったよ。

俺は本気でそう思った。

俺たちは帰路の途中で田原さんと遭遇。

ちょうど、ロンリーウルフを仕留めた後だったようだ。


確か田原さんはレベル5になったと言ってたな。

田原さんの横には風吹君がいた。

あゆむ君は颯と同級生だが、家で待機らしい。

「田原さん、安定感ありますね」

俺は微笑みながら田原さんにそう言ってみる。

別に上から目線じゃないぞ。

「あ、町田さん、どうも・・」

田原さんが軽く会釈。

「もう、これくらいじゃ平気ですね」

「ええ、まぁ何とか・・後は風吹にも一緒に来てもらってるんですよ」


「こんにちは」

風吹君に挨拶された。

きちんとしてるな。

「あ、こんにちは。 大変だけど、頑張ってね」

俺もそれくらいしか言葉が浮かばない。

「風吹、頑張ってるな」

優が声をかけていた。


風吹君が優に近づいて行って何やら話している。

俺は田原さんにさりげなくレベルのことを聞いてみた。

「田原さん、確かレベル5になったと言ってましたね。 かなり少し楽になったんじゃありませんか?」

「ええ、お蔭様で・・それに私、戦士を選んだのです」

田原さんはさりげなく言う。

おお、戦士か。

定番のタンク役だな。

「そうですか」

俺もうなずく。

「家族に経験値を分けながら、盾役ですからね」

田原さんは笑いながら話してくれる。

いい家族だな。


俺の心が少し痛む気がする。

俺なんて自分中心でレベルアップを考えているからな。

まぁ、誰かが先導して引っ張っていくと死亡率が下がると俺は思っている。

強い敵が出てきたときに誰でもいい、レベルが高い人がいると有利だと思ったからだが、違ったか?

田原さんは家族で一緒にレベルを上げて行こうとしている。

どちらがいいのだろう?


「田原さん、くれぐれも無理しないでくださいね」

「ありがとうございます」

お互いに会釈をして別れた。

優も話は終わったようだ。

・・・

・・

さて、嫁たちの方の戦闘もようやく終わったようだし、俺達も帰ろう。


家のところまで来ると、近所の若い人たちが集まっていて、ワイワイとにぎわっていた。

初めての戦闘でみんな興奮しているみたいだな。

それに怪我人もでなかったようだ。

今回の戦闘で、参加した人はレベル3~4くらいになったようだ。

これなら、みんな次には職を選べるだろう。

嫁がかなり役立ったらしい。

レベルの恩恵だな。


ご近所さんに軽く会釈をして、優と俺は家の中に入って行った。

嫁もしばらくすれば入ってくるだろう。

「「ただいま~」」

まずは手洗いうがいをする。

ばあちゃんのところへ行ってみた。

「おかえり~。 外は結構大変な感じだね」

ばあちゃんがそう言ってお茶を出してくれる。

やっぱ落ち着くな。

「大変というか、ご近所さんもレベルが上がったりして興奮しているんだよ」

「そうかい。 ま、何でもいいさね、死ななければね。 それに、あんたたちもくれぐれも無理はしないようにね」

「うん」

そうなんだよな。

今の所、俺と優がワーウルフを倒しておけば、後はみんなで仲良く討伐できるだろう。

ただ・・それもどこまで仲良くできるかわからない。

レベルが上がってくれば、誰でも自分が強くなりたいだろう。

それも自分だけが・・。

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