第103話新堂航という男
新堂航という男。
様々な格闘技に精通しているが、元々は鉄塁空手出身。
立場的には現館長 岡山の兄弟子という立場になる。
分裂する前の鉄審空手を知り、空手の神 岡山鉄造から直接手ほどきを受けた最後の世代。
だからだろうか? 漫画などで書かれる岡山鉄造像に強く影響を受けている。
そのため、1年の多くを山に籠り修行して、山を下りたかと思うと、海外に武者修行へ行く。
そんな男だった。 ふらり、ふらりと海外で格闘技ノウハウを学び……
ふらり、ふらりとたどり着いたの地下格闘技。
地下プロレス、裏格闘技、闇格闘……呼び名はいろいろある。
だが、これを聞いて「嘘くせぇ!」なんて声が飛ぶかもしれないが、これは実際にある。
例えば、2000年代。 世はPRIDEやK-1の格闘技ブーム。
それに目を付けたヤクザが喧嘩自慢や格闘技経験者を集めて地下格闘技の運営を行っていた。
ノールール。 目を突こうが、噛みつこうが、金玉を蹴り上げようが、反則はなし。
おまけに賭け試合だ。 負けたらタダじゃすまない命がけの試合。
そうなったらアレだ……選手たちも危険やえげつない技を使わざる得ない。
当時の地下格闘技の関係者は、こう言った。
「ノゲイラやヒョードルだって、うちのルールじゃ簡単にゃ勝てないよ」
とは言うものの、漫画で出てくる地下格闘技のように表格闘技よりもハイレベル……何てことはなく、実際は低レベルな戦いだったそうだ。
当たり前だ。まともな選手が出てくるような場所でもルールでもない。
実際にノゲイラやヒョードルと戦えば、初弾のジャブで戦意喪失する者が相次ぐだろう。
では、なぜ?
新堂航は、そんな低レベルな地下格闘技にいたのか?
レベルが低くても、格闘技としてモラルが低い場所ではないと許されない戦い方というものがあったからだ。
ハンディキャップマッチ
武器を持った相手、あるいは2対1マッチ。
戦う場所も狭いマンションの一室や深夜のデパートなんてあった。
武人と実戦を想定した戦い……というよりも異常な戦いを好む男だった。
ある種、異常な癖と言える物がなければ、表舞台でベルトやトロフィーの1つ2つ……
だが、彼は表舞台に現れた。 なぜ? 名誉よりも異常な戦いを好む彼が?
それは、そそられたからだ。
郡司飛鳥という男の生き方。 それに――――
佐々間零という男から同種の匂いに――――
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