第98話 内藤隆対武川盛三 ②
驚いているでしょうね? 空手家の自分が柔道のように組み付いてくるなんて
もちろん、柔道くらいの経験はあるさ。学校の体育で柔道の時間があったからな……
いやいや、流石にそれはジョークだ。
壊し屋だったからね。 空手ルールで空手家と空手で空手をするのは本業じゃないのさ。
相手が空手以外の他の格闘技を兼用している事は多いからね。
柔道や総合格闘技やキックみたいな技を路上で使う空手家と戦うのが日常。
変わり種は元力士とか、カポエラとか、いたよ。
意外とラグビーやアメフト経験者も強かったね。
……話を戻そう。 だから、こういう事もできるのさ。
内藤は組み合った状態で武川の頬を殴った。
掴んだ襟を強く引っ張り、僅かにできた空間で突きを放ったのだ。
寸勁とかワンインチパンチとかに比べたら十分な距離からの打撃さ。
こうしてやると、大抵の相手は驚く。 驚いて体が膠着する。
そうなった相手は自分くらいの技でも投げれるのさ。ほら、簡単だね。
内藤は、深くしゃがみ込むような動作。 武川を肩に背負うように投げた。
レスリングでいう飛行機投げ。 柔道なら肩車。
武川は地面に叩きつけられる。
ダメージは皆無だろう。キレイに投げ過ぎた。けど……
内藤は足を上げ、倒れた武川の顔面にめがけて踵を落とす。
決まれば一撃必殺もあり得る勢いで踏みつける。
へぇ~ 流石にガードして頭部を守るのか、武川。
もう一度、足を上げて踵を落とそうとする。けれども武川はそれを阻止してきた。
足にしがみついてくる。
それが、うまいと思わず唸る。 ただ、しがみついてきただけではない。
これが腕の手首なら、体全体を使って押し込んでも倒れる事はない。
腕は可動域が広いから。しかし、足はそうはいかない。
足首を掴まれ、強く押されると倒れる事に耐えれない方向をいうのが存在する。
まして、踏ん張りが効きにくい片足立ちでの状態だ。
そのまま倒れる。
寝技か、いいよ。
合気研究家のお前の寝技。
空手の壊し屋である俺の寝技。
誰も見た事ない寝技合戦を見せつけてやろうぜ?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
内藤は笑っていた。 しかし、それは本当に笑いなのだろうか?
まるで動物の威嚇のようで……だが、確かに笑っていたのだ。
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