第80話 郡司飛鳥対岡山達也③
空手家 岡本達也が繰り出す怒涛の関節技。
それは豪快、強烈、雄々しさ。 逆に言ってしまえば力任せの荒々しさ。
雑味がある寝技展開。
対する飛鳥は、寝技の基本従順と言える。
だが、どちらが優れていると言えないのが寝技……いや、格闘技だ。
どんなに洗礼された寝技技術の持ち主でも、腕力や勢いよく仕掛けてきた関節技に対処できず、あっけなく負けるという事も十分にありえる。
しかし達也も徐々に気付き始める。飛鳥がただ関節技をしのいでいるだけではない。という事を……
(コイツ、俺がどれほど仕掛けて行っても寝技で上の位置になるようにポジショニングをキープしていやがる)
柔道では、こういう言葉がある。
『寝技は上の者よりも下の者の方が3倍体力を消耗する』
単純な話だ。 成人男性の平均体重は60キロ後半くらい。 それが常に体に乗っているのだ。
60キロの重りを乗せて、動き続けるか?
もちろん、60キロと言っても鉄の塊ではなく人体。その重さは分散しやすい。
分散……10キロの鉄アレイと10キロの綿のどちらが頭に落ちてきたら? と想像すればわかりやすいか?
……話を戻そう。
岡山達也は自身が気づかないうちにスタミナを大きくロスしている。
要するにメチャクチャ疲れた状態だ。
疲労に気付き始めた岡山達也。 頭部のダメージが抜けてきている郡司飛鳥。
どちらが有利と言えば岡山達也だが、それもいずれは逆転するだろう。
「だったらよ!」と岡山が叫んだ。 ――――この直後、異変が起きる。
体勢はガードポジションで達也の方が下、飛鳥が上だった。
そのガードポジションが開かれる。達也が自分の意思でガードしている足を開いたように見える。
――――その直後だ。
一瞬、観客たちには、飛鳥の背中が膨らんで見えた。
その直後、なぜか飛鳥が立ち上がった。 それから1歩、2歩と下がっていく
そのまま両膝から地面に崩れ落ちた。
何があったのか? ――――いや、何をしたのか? 岡山 達也?
わからない。 だが、わかる事もある。
岡山達也は郡司飛鳥に打撃を入れたのだ。
ガードポジションの体勢で? 相手からダウンを奪うような強烈な打撃?
あり得ない! だが、事実、それが起きたのだ。
飛鳥は意識があるのか? それともないのか? 反応がない。
それに対して、ダウンを奪った岡山達也はゆっくりと近づいた。
「世の中にVTやNHBて何でもありのルールが浸透し始めて30年近く……ずっと考えてたのさ。寝技で相手をKOできちまうようなスゲェ打撃をな」
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