第29話 禁断の果実

宴の翌日の朝、カズマはややお酒が残っていたがいつも通り6時に訓練所へ向かった。




『なんであんな事しちまったかな?』




昨日マリとの別れ際に額にキスをしてしまった事にカズマは戸惑っていた。


自分でも意外な行動だった。


戦での勝利に興奮してたからなのか酒に酔っていたからなのか・・・


一瞬マリの事をいとおしく感じた。




『なんかモヤモヤするな・・・


謝っておこう・・・』




色々考えながら訓練所に入るとマリが素振りをしていた。


カズマは頭をかきながらマリに挨拶をした。




カズマ:「おはよう」




マリは素振りを中断して振り返り無表情で挨拶を返す。




マリ:「おはよう」


カズマ:「マリちゃん昨日の事なんだけど・・・」


マリ:「早速仕合を頼む。」




カズマが謝ろうとするのを遮るようにマリは仕合の準備をする。




『あーあ・・・やっぱり怒ってるか・・・』




カズマは今謝っても逆効果だと判断し、木刀を構えてマリに対峙した。


マリは気合いと共にカズマに切りつける。


カズマはいつも通りそれを木刀で受け止める。




『いい動きだ・・・』




マリの動きがいつもより鋭い。


適度に力が抜けて素早い打ち込みを繰り出している。


たちまちカズマは壁に追い込まれた。


カズマは木刀を置いて両手を挙げた。




カズマ:「参った。降参だ。」




無防備なカズマにマリが木刀を突きつけ近寄る。


その表情は苦しそうだ。




カズマ:「どうした?大丈夫か?」




カズマが心配して声をかけるとマリが叫ぶ。




マリ:「カズマ!貴様なぜあんな事をした!」


カズマ:「あーすまなかった。いきなりキスされたら気分悪いよな。謝る・・・ゴメンな。」


マリ:「私の心を乱すな!貴様はいつもそうだ!人の心に土足でズカズカと踏み込んで来る!」




マリの取り乱した様子にカズマは驚く。




マリ:「私にはこの国を守る使命がある!貴様が何者であってもこの国は必ず守る!私には貴様など必要ない!貴様など・・・貴様など・・・」




なだめるようにカズマはマリに話しかける。




カズマ:「わかったマリちゃん。わかったから落ち着こうか。そうだ深呼吸だ!深呼吸しよう。」


マリ:「わかってない!貴様はなんにもわかってない!私の立場。私の気持ち。私の苦しみ!」


カズマ:「え?」


マリ:「オマエが好きだ、カズマ・・・」




そう言うとマリはその場に座り込んだ。


うつむき涙を流している。


カズマはしゃがみこみマリの顔を上げる。


二人は目を閉じ口づけを交わす。


堰を切ったように二人はお互いを求めあった。

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