第53話
下着屋に集った五人の若者たち。
現状を整理しよう。
小森翔太→高嶺繭香と試着室から飛び出して来たところを夏川雫&大橋健吾ペアに目撃される。
しかも高嶺の上半身はブラジャーのみ。故に乳繰り合っていたと勘違いされてしまう。
さらに友人である泉天使の恋人、大橋健吾が夏川雫の下着を選んでいるところに遭遇してしまうという悲劇。この気まずさは到底言い表せない。
もはや意識を保てていることが奇跡である。
夏川雫→小森翔太と高嶺繭香が乳繰り合っているところに遭遇。この時点で彼女のHPはゼロ。まさに一撃必殺である。
さらに愛しい異性の口から別の女のために垢抜けたことを告白されてしまう。この時点で彼女のHPはマイナスに振り切れてしまう。
もはや意識を保てていることが奇跡である。
大橋健吾→好みの下着を
実姉の下着を選んでいたのにも拘らずこの誤解である。やるせないだろう。
しかも本命の彼女、泉天使に盗み見られているという地獄。それを彼自身が知らないという
高嶺繭香→この場において最も被害が薄い彼女だが、小森翔太による「垢抜けたのは繭姉のため」発言で彼を異性として意識してしまう存在に。典型的な身から出た錆びである。
泉天使→この場における最も被害を受けた人物である。恋人が別の女とデートしているところを下着屋で目撃してしまっただけでなく、その浮気相手に自分好みの下着を押し付けているという現実。まさに悪夢!
まさに痛み分け。誰一人勝者がいない状況である。
これ以上の長居は各方面に悪影響だと感じ取った小森は、
(とっ、とにかくこれ以上大橋健吾くんの口を開かせない方がいいような気がする。泉さんを置いていくのは気が引けるけれど一秒でも早くここを離れなきゃ!)
荒い手つきカーテンを開け放つ。
「ちょっ!」と驚く高嶺繭香の手を掴んだ彼は、
「それじゃあ僕たちはここで!」
逃げるように下着屋を後にする。
「おっ、おい。待てよ!」という大橋健吾の制止も聞かずに走り去っていく。
本命と偽装カップルの差を見せつけられた夏川雫は放心状態。
彼らを制止する余裕などあるはずがない。
しかし忘れてはならないのは夕方に小森翔太と夏川雫のデート(?)が待っていることである。
このときこの場にいる誰が予想できたというのだろうか。
彼女たちのデートが上手くいくよう大橋健吾と泉天使が遠隔からオペレートすることになることを。
そして――、
夏川雫を扱うプレイヤー大橋健吾VS小森翔太を扱う泉天使による恋愛頭脳戦が繰り広げられることを!
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