第43話
小森 翔太
【ダブルブッキング】
先約と重なる別の約束をしてしまうこと。
あろうことか僕、小森翔太は夏川さん&繭姉と出かける約束をしてしまっただけでなく、
……いや、自分でも何を言っているのか分からない。
ことの原因は昨夜に受信したお三方のメールである。
夏川さんと出かける約束をしてすぐに繭姉からのお誘い。
もちろん先約があるわけだから、断ろうと思ったのだけれど――、
『それじゃ先日オープンした三菱アウトレットモールに十三時集合でいいかな? あっ、昼食はそこで取りたいからお腹は空かしておいてね』
繭姉は僕の返事を待たずに場所と日時を指定。
どれだけメールをしても既読が付かない状態になってしまった。
さすがの僕も「勝手が過ぎるよ」と思うものの、このまま無視するのも気が引けるわけで。
誘われていて、しかも断りきれていないのに行かないってのは罪悪感に苛まれるよね。
というわけでこの時点でダブルブッキング決定。
ここから怒涛の調整が始まった。
というのも泉さんから、
『翔太さん……もし良かったら明日一緒にお出かけしてもらえませんか? 家にいると塞ぎ込んでしまいそうで……』
なんてメールを受信してしまったからだ。
泉さんは
僕としては彼女の誘いを断る理由はなくて。外出と話し相手で気を紛らわせてあげたい気持ちでいっぱいだった。
だからこそ間髪入れずに、
『えっと……それじゃ先日オープンした三菱アウトレットモールにでも行きませんか』
なんて返信してしまったわけで。
『はい。よろしくお願いします。楽しみにしていますねデート』
後先考えずに行動することの愚かさをこの後思い知ることになる。
実は言えば泉さんのお誘いを承諾したのには僕の頭の中で計算が完了していたからだ。
それは夏川さんの誘いを断ればなんとかなるだろうというもの。
だって繭姉と泉さんだけなら時間調整をするだけでしょ?
そう考えていた時期が僕にもありました。
『ごめんなさい夏川さん。やっぱり明日は中止にしてもらえませんか?』
『別にいいけれど――』
『――泣くわよ? 私が』
はいアウト!
そんなわけで非モテの非リア充、小森翔太による三股トリプルブッキングとも言えるお出かけ(デート)が幕を開けることになるんだけど……ぶっちゃけこういうのが上手く行くのは
明日、僕が痛い目にあうことは目に見えていた。
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