第33話
小森の反応が期待通りだった夏川は完全に味をしめた様子。
弟の横腹を突いて次の台詞を督促していた。
(おいっ、いい加減にしろよバカ姉! まさかあの台詞まで俺に言わせる気か⁉︎ ……まっ、幸いにも姉さんの思い通りになっているわけだしここで煽っておくのも悪くはねえんだろうが……だがいくら演技とはいえあの台詞を口にすんのは――)
葛藤する大橋健吾。
見かねる夏川雫は彼の肩に手を置きそっと耳打ちする。
その言動は誰がどう見ても恋人のそれだった。
「早く言わないと健吾の待ち受けを姉の半裸にするわよ」
「っ‼︎」
(このクソ
どうやら彼女の脅迫は彼を突き動かすほどのもので、
「勘違いするなよ小森」
「勘違い?」
「別に俺は自分がいい男だって自慢しに来たわけじゃねえんだ。もちろん容姿が整っていることは否定しねえけどよ」
(いや、否定しろよ)
とツッコむ高嶺繭香。
すっかり蚊帳の外である彼女は大橋健吾を観察することにしていた。
「勉強やスポーツだって全国レベルの天才だ。一流の男と言ってもいい」
(何言ってんだこいつ⁉︎ 高スペックのくせに口走ってることが残念過ぎねえか⁉︎ もしこれを素で言ってんならぜってえに恋人にしたくねえんだけど! 仮に、仮にだ。
事情を知るものからすれば間違いなく茶番である現状。
しかし何も知らない高嶺は大橋健吾のことを残念な男だと認定し始めていた。
そしてそれは何も一人だけに向かられたものではなく、
「ぐぬぬっ……!」
(おい小森。なんでお前も『反論のしようがない』みたいな反応してんだ。ぐぬぬっ、なんざ漫画以外で聞いたことねえよ。そりゃ男としてはこいつの方が上だろうが、人間としてならお前の方が上だぞ?)
高嶺繭香から呆れた目で見つめられている小森翔太は、
(くっ……大橋くんにいきなり呼び捨てにされたんだけど! 初対面にも拘らず、さらりとやってのけてくるあたり、やっぱり僕を見下しているってことだよね⁉︎)
「俺が本当に伝えてえことは一つ。
((もうやめてええええええええええええええええええええええええええええええっ‼︎))
内心で絶叫しているのはもちろん泉天使と小森翔太である。
一方、高嶺繭香はと言えば、
(こいつマジでさっきから何言ってんだ⁉︎ バカじゃねえの⁉︎)
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