第18話

 朝比奈 彩


 私たちの高校ではテストを返却する際、高得点の生徒が読み上げられるのですが、

「国語で満点が出ました。夏川雫さんです。皆さん拍手!」

「数学の平均点は四十五点。ただし満点を取った者もいる。名前を呼ぶぞ。夏川だ。おめでとう」

「英語の試験ミス夏川はパーフェクト。エクセレント!」

「日本史のテスト返す。トップは夏川だ。前に来るように」

「生物のテストを返すわね。今回は考察問題が難しくて平均点が下がっちゃったんだけど、すごい高得点の人もいたの。それじゃ発表するわね。トップは夏川さん。テストを受け取りに来てください」


 ……バケモノですか。

 いくらなんでも天才過ぎません?

 しかし一番怖いのはテストを受け取った夏川さんの言動です。


 彼女はテストを受け取り自席に戻る際、必ず高嶺さんの隣を通ります。

 この時点で山田くんが失神するためAEDが手放せないのですが、

「運動神経だけでなく学力も必要だと思わないかしら。ねぇ高嶺さん」

 出ました。夏川さんの逆襲です。


 某銀行マンを想起させる倍返しに、

「……っ。うっ、ぐぅぅぅぅっ!」

 高嶺さんは唇を噛み締め、目に涙を浮かべます。

 顔を真っ赤に染めて、おでこには血管マークが。綺麗な顔が台無しです。


「頭が良くてもそれを見せびらかすのはどうなのかな?」

「あら。負け惜しみかしら。そう言えば高嶺さんは一度も呼ばれなかったけれど得意分野がないのかしら」

「なっ……!」


 お二人の勝敗は一勝一敗。

 夏川さんも高嶺さんも放課後を迎えるや否や「ふんっ……!」とそっぽを向いて教室を後にします。

 以上、学級委員長による学校生活の報告を終えたいと思います。


 ――まさかこの翌日に小森くんと高嶺さんが恋人になっているなんて誰か予想できたでしょうか。

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