コラム ―― ラブコメ一人称視点変更

 多くの作者が使う一人称視点について。


 一人称視点とはそもそも主人公視点とも言え、その目を通した世界しか描く事が出来ません。

 代わりに主人公なり、その視点で見たものだけに留まらず、内心を思う存分描く事が出来ます。

 いわゆる心情描写に重きを置きたい時には、この一人称視点は極めて有効な訳です。

 視点の主が何を考えどう行動して行くか、それらを詳細に語り尽せるのが、一人称視点の最大のメリットとなるでしょう。


 一人称視点にはデメリットも当然存在します。

 それは他人の視点で物語を描けない事。

 なぜかと言えば、自分の視点で見ているのに、なぜ他人の思考が分かるのか、そう考えれば理解が及ぶはずです。あなたには赤の他人が、それこそそこらを歩く人が何を考えながら歩いているか、それが分かるのですか? と。

 分かってしまうならばエスパーですね。

 一応のルールとして存在していますから、そんなの関係ねー、と言われてもルールなので、場合によっては公募で落とされます。


 では実際、多くの小説がそれを気にして書いているのか、と言えばその辺は無視して、書きたいように書いている作者が多いのが実情です。

 視点変更により主人公とヒロインの心情を表現する。

 恋愛やラブコメに多く見られ、時にファンタジーでも目にします。

 ファンタジーでは“side使い”などと言われ、ややもすると揶揄される事もあります。


 それでも上手に描けていて、それが必要な描写と認められれば、問題は無いのですが、ここでは私個人の見解として。


 ラブコメや恋愛で視点変更するな!


 です。


 なぜか。

 と言えば、例えば男の主人公がとあるヒロインに惚れました、とした場合に主人公は様々に葛藤したり、思っている事を地の文で語り尽す訳です。

 相手が何を考え、どう行動するか、自分に対してどう思っているか、少しでもお近付きになりたいとか、欲望のままに描かれる訳で。


 ですが、これをヒロインにまで語らせると、まるで手品の種を明かされた状態になります。

 何それ? 手の内見せて一体何がしたいの? としかなりません。

 ヒロインの内心は行動や台詞で示す事で、読む側としては、今、この子は何を思って主人公に接しているのかな、と楽しみがある訳ですが、なぜか割と多く目にする視点変更。

 ヒロインの内心を描いてしまい「彼の事が好きなの~。きゃー、どうしよう。でも彼はどう思ってるのしら、私の事好きかしら~」なんて書かれたりしたら、もうその時点でどっちらけです。


 この台詞、気持ち悪く無いですか?

 実際にあったパターンですよ。これ。


 途中まで良いなと思って読んでましたが、残念な事に、これを見た瞬間ブラバしました。

 ですが、それでも人気はあって、読む人が多く評価も高い。

 これ、悪いのですが、読み手が考える事を放棄し過ぎでしょう。

 例に挙げた台詞に何も感じないのであれば、いや、絶賛している状態って何なのでしょうね?


 結局、小説なのに行動や台詞で示さず、あっさり視点変更で表に出してしまう。

 これでは作者の技量は向上しません。

 相手の心情を表すのに労を伴わない作業をしているのですから。

 もう一度書きます。

 技量の向上は見込めません。

 相手の内心を表す行動なり台詞を書かずに済むのですから、楽な事この上ない訳です。


 一人称で視点変更したラブコメや恋愛ものが多くて、「読んで良かった作品」にラブコメが二作品しか入って来ない訳です。

 読みます第三弾でも幾つかラブコメがありましたが、視点変更をやられて、白け切ったのでフォローしていませんし追加もありません。


 恋愛とは相手の心情が分からないから、それに相対した時、様々に考え行動する事になる訳で。

 現実世界に当て嵌めたら、滑稽極まりないのが視点変更だと理解出来るはずです。

 幾らフィクションだから、と言われても手抜き感しか読み取れない、内心を描く行為は個人的にですが却下です。

 他の方は知りません。

 評価を得ている作品は多数あるので、読み手も楽なものを好む傾向が強いのでしょう。


 もし、どうしてもそれが必要だ、と言うのであれば、それを悟らせないレベルにまで昇華させてみてください。

 稀にとても巧みな描写をする方が居るのは存じてます。

 その様な巧みな描写が出来るのであれば、読んでみたくなりますから。


 以上、愚痴の如きコラムになってしまいましたが、本気で嫌なのでここで宣言しておきます。

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