第139話

 滋養剤が効かなくなった奴隷を、これまでたくさん見てきた。




 まず起き上がれなくなり、食事量が減っていく。




 最後には、もう水も飲めなくなって命の終わりを迎える。




 ミオは、両手で顔を覆った。自分は、起き上がれなくなる直前まできている。




 きっとジョシュアは、ミオの症状を知れば、どこまでも看病しようとする。優秀な医師やよく効く薬を惜しみなく与えてくれるはずだ。




 でも、助からなければ?




 ミオは、きっとジョシュアの腕の中で死んでいく。




 誰にも看取られずこの世を去る運命だったのに、好きな人の腕の中で最後を迎えられるのは、奴隷のミオにとってある意味、最高の命の終わらせ方だ。




 だが、残されたジョシュアはどうなる?




 愛し方を間違えてサミイを傷つけたと十年も苦しんできた人が、ミオの死をちゃんと乗り越えて、また新しい人と愛を育めるだろうか?




 愛を恐れながらも、切望しているこの人が。




 全てを諦めて、寂しい一生を送りそうで、想像するだけで悲しい。




「俺なんかと出会ったばっかりに、そんな人生を歩ませられない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る