第138話
ミオは首を振った。天幕を張れないのはただの疲れだ。
サライエにいた頃は、ラクダ使いの仕事があまりにも重労働だったため、二日に一回のペースで飲んでいたが、王都に入ってから今日までそんな機会もなく、最後に飲んだのは十日も前だ。
一粒飲めば一気に回復するはず、と口の中に放り込んだ。
オアシスで水を浴びるジョシュアを浜辺に座って見る。一緒に泳ごうと誘われたが、遠慮した。太陽の光がヤシの木の隙間から幾筋も差し込んできて湖面に反射しキラキラ光っていた。
逞しい裸体を晒して泳ぐジョシュアを見ているのが幸せだった。そのうち膨大な疲れに襲われて、ミオは目を瞑る。
気づけば天幕の中にいて、西日が差し込んでいた。隣でジョシュアが目を閉じている。
気絶する勢いで眠ってしまった自分に驚き、ミオは起き上がろうとした。だが、腕を突っ張らせても、身体は震えるばかりで起き上がれない。
「まだ、全然効いていない。飲んでからもう、半日もたつのに」
疲れをひしひしと感じる。
「俺、本当に身体が弱っている……」
休息も、滋養剤でのごまかしもこの身体には効かないと思うと血が冷えた。
幸せボケしていたのかもしれない。
痛んだ肉体を皮でなめすようにして滋養剤を使って延命してきたのだから、いつ終わりがきてもおかしくなかったのだ。それに、この数週間で大分無理をし身体を虐めた。
「どうして……」
ジョシュアの寝顔を見ながら、ミオは呻く。サライエで出会って、もう一度離れ離れになって、また結び着いた。
「……これからなのに……俺は死んでいくのか」
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