第122話

 寝台の中に隠そうとするマデリーンを、アシュラフが追い詰めていく。




「アシュラフ様。私だって本の内容は知りませんから。せっかく仲良くなれたのに、そんなご無体なことをしては……」




 サミイがおたおたしながら追いかけて行って、アシュラフを阻もうとする。




「お願いいたします。サミイ様。助けてくださいませ」




とサミイの背中に、マデリーンが隠れる。




「あれでは、色気もなにもあったもんじゃない。子供同士が、オアシスで遊んでいるようなものだね」




と、あと少しの母艦を作りながら、ジョシュアが居間でため息をつく。




 寝室では、子供のようないさかいが続く。




「ずるいぞ、サミイ。お前、もうマデリーンに乗り換えたのか」




「乗り換えたって、そんな」




「マデリーン。いいから見せろって」




「サミイ様。助けて」




「アシュラフ様。こんなに嫌がっておいでですから」




「うるさい」




 ひとしきり寝台の上で争って、とうとうアシュラフは本をマデリーンの胸の中から取りあげた。そして数ページをめくって過激な挿絵を見つけたのか、「……うおっ」という声を上げる。




「ひ、ひどい。止めてって言ったのに」




 サミイの後ろで、マデリーンが泣き始めた。




「泣かした」




 居間で母艦を作り続けるジョシュアが、またため息をついた。

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