第121話
部屋に残されていた三人は、首っ引きで設計図を眺めていた。あーでもない、こうでもないと言いあっている。
ジョシュアはクスクス笑って、他の艦船を作り始めた。たまに三人に指示を与える。ミオもジョシュアから習って、一隻を組み立て始める。
やがて、マデリーンがどもりながらも、自分から話をするようになった。西班牙の無敵艦隊の話は驚くほど面白い。
母艦は三人の協力で、徐々に出来上がっていく。ジョシュアはあっという間に三隻を作り上げた。ミオも、なんとか一隻作り終える。そして、まだ時間がかかりそうな母艦を、二人で手伝い始めた。
「嫁ぎ先で、こんなに楽しい思いができるとは思いませんでした。王族の女性は、結婚相手を選べませんし、相手には大勢のお相手がいるので、愛など望むなと言い聞かされて育ってきました。だから今、有り余るぐらい幸せです」
「これでか?」と、アシュラフが呆れ声を上げる。
「あと離宮の一つ、二つ送ろうと思っていたのに」
「いりません。もう結構です」
とマデリーンが大げさに首を振る。
「つまり、俺は真逆のことをしていたってわけか」
とアシュラフも派手に肩を落とす。
「そういえば、マデリーン。さっきの本は何だったんだ?俺にも見せてくれよ。硬い扉を開けて飛び出してきたってことは、よっぽどのものなんだろう?」
「い、嫌です。それだけは」
マデリーンが傍らに置いてあった本を胸に抱え、奥の部屋に向かって駆けていった。
「ずるいぞ。俺だけのけものだ」
調子に乗ったアシュラフが、マデリーンを追いかけていく。開けられた奥の部屋は寝室だった。
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