第101話
着る物を全て没収されてしまったので、ブランケットを身体に巻き付けて忍び足で寝台から降りる。
扉の隙間から覗くと、廊下を先ほどの召使いたちがウロウロしていて出て行ける状況ではない。窓から脱出できるだろうかと、窓辺に行ってみたが、ここは塔の先端だった。
絶望が襲ってきた。
今まさに、ジョシュアがサミイを愛している最中かもしれないと思うと、死に吸い込まれそうになって、ずるずると窓の下の壁にしゃがみ込む。
「……俺は、馬鹿だ。ジョシュア様が、あれだけ求めてくれたのだから、その期待に応えればよかった。怖がって不安がって拒絶して。相手はジョジュア様なんだから、絶対いい思い出になった···」
ミオは力なく歩いて、旅の荷物が詰まれている壁際に行った。中身を開けると、一番上にはジョシュアに届けるはずだったロマンス小説が入っている。
もうジョシュアとの繋がりは、この本一冊しかない。
胸元に抱きしめさめざめと泣いていると、いつの間にか部屋に入ってきた誰かがミオを抱き上げた。力強い腕の力に、涙で霞む目を拭う。
「ジョシュ……。……アシュラフ様」
思い人とよく似た顔の男が、髪から水を滴らせミオを見ていた。腰にはタオル。上半身は裸だ。
「お前、夜着は?」
「お付きの方が……」
すると、アシュラフは眉を潜め、ランプが置いてある小机の香油を見た。
「あいつら、気を回しすぎだ。……まあ、いい。寝ろ」
寝台の上に下ろされる。
アシュラフは、腰に巻いていたタオルを剥ぎ取った。
身体は、硬そうな筋肉で覆われている。首からは、鍵付きのネックレスを下げていた。
ミオは、ブランケットに潜り込んで、巣穴の中にいる砂漠キツネのように丸まった。
「ア、アシュラフ様。俺、したことがありません。なのに、旅行社の店主に自慰を見せろと言われ何回も披露しています。そんな、俺を抱いたって……」
必死になって弁明するミオの隣りに、アシュラフが身体を滑り込ませてきた。
「勘違いするな。俺は、いつも寝るとき、裸なんだよ。にしても、勤め先でそんなことを強制されていたのか?」
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