第99話

 それに、アシュラフは自分をこんな離宮に閉じ込めて何をするつもりなのだろう。




 ジョシュアは自分を探してくれているだろうか。




 それとも、やはりサミイと……。




 次々と色んな思いが湧いてきて、どうしてもジョシュアに会いたくなった。部屋を飛び出そうとするが、アシュラフに簡単に捕まって食事をしていた位置に戻され、胡坐の中に抱えこまれる。




「食え」とナイフで刺した肉の塊をぬっと顔の前に突き出された。ジョシュアより数倍乱暴なやり方だ。




「サミイが、お前の身体が心配だと言っていた。このままの生活を続ければ、炎天下の労働どころか、普通の生活もままならないのではないかと。俺も、そう思う。だから食って、少しでも体力を回復させろ」




「ジョシュア様と似た顔で、優しくしないでください」




「しょうがないだろう。母違いとはいえ、兄弟なんだから」




 なだめすかしてアシュラフはミオに食事をさせ、その後、「出かけてくる」と言って立ち上がる。




「マデリーンのところに行ってくる。今夜くらいは、顔が見れるだろう」




 若干疲れた表情で、アシュラフが廊下に出て行く。




 ミオは、一人部屋に残された。また、窓辺に立つ。王宮の塔が月明かりに照らされていた。蹄の音がして真下を見るとラクダに乗ったアシュラフが離宮を出て行くところだった。




別の離宮に西班牙の第一王女がいるのだろう。だとすれば、アシュラフはしばらく戻ってこないはずだ。ジョシュアに会いたい気持ちが再燃する。




 ジョシュアがサミイと一緒でもいい。情事の最中だって我慢する。




 会いたい。




 会いたい。




 どうしても……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る